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2007年12月 1日 (土)

昔話・桃太郎と製鉄の関係~鉄の記念日にちなんで・・・

 

安政四年(1857年)12月1日、岩手県の釜石高炉(後の新日鉄釜石製鉄所)が創業を開始し、日本の近代製鉄の幕開けとなった事をを記念して、今日12月1日は『鉄の記念日』なのだそうです。

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・・・で、鉄の記念日という事で、今日は、昔話『桃太郎』のお話を・・・

「風が吹くと桶屋が儲かる」的な発想ですが、実は私、個人的には、この桃太郎のお話は、製鉄と深い関係があると思っております。

いくら最近の子供たちが昔話に興味を持たなくなったと言っても、さすがに桃太郎の昔話は、「知らない人はいなだろう」と思うくらい、昔話の中でもダントツに有名なお話です。

そして、皆さんも、うすうすは感じておられるでしょうが、このお話の・・・
「子供のいないおじいさんとおばあさんがいて、おばあさんが川で洗濯中に大きな桃が流れてきて、その桃を拾って帰って食べようとすると、中から男の子が登場・・・」
・・・という前半の部分と、

「犬・猿・雉(きじ)の3匹の家来を連れて、鬼ヶ島に鬼を退治に行く・・・」
という後半の部分は、あきらかに別の昔話だと思われます。

そんな中で、ところどころ違う話が混じりながらも、全国各地に桃太郎の昔話が伝わっていて、それぞれ「これが、桃太郎のモデル」と言われるような人物の伝説が残っているわけですが、その中でも最も有力なのが岡山県です。

ご存知のように、岡山駅前には桃太郎の銅像が立ち、そのルーツを主張し続けておられます。

その一番の根拠は、岡山市にある吉備津神社・・・吉備津神社は、第10代・崇神天皇の時代に、天皇から派遣され吉備平定を成し遂げた吉備津彦命(きびつひこのみこと)を祀る神社で、その吉備津彦命の伝説をもとにしたのが、桃太郎のお話だというわけです。

その吉備津彦の伝説とは・・・

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昔、崇神天皇の頃(250年~300年頃)、異国の鬼神が空を飛んで吉備の国(岡山県のあたり)にやってきます。

その鬼神は、百済の王の子供で、名前は温羅(うら)・・・背丈は一丈四尺(約4m)ほどあり、気性が荒く、力も強い。

しかも、口から火を吹き、水を油に変えるなどの神通力も持っていました。

そんな温羅は、吉備の国の新山鬼ヶ城という砦を造り、都へ向かう船をを襲っては略奪し、道行く人や猿を襲っては食べたりという悪行を繰り返していました。

見かねた天皇は、息子の五十狭斧彦命(伊佐勢理比古命・いさせりひこのみこと)を、温羅討伐に派遣します。

しかし、その戦いは激しく、五十狭斧彦命の放った矢は、ことごとく温羅の矢と空中でぶつかり、その度に地上に落ちてしまいます。

そこで五十狭斧彦命は、弓に2本の矢をつがえ、同時に放ちました。

すると、一本は温羅に落とされますが、もう一本は、狙い通り、温羅の左目に命中します。

手傷を負った温羅は、雉に変身して逃亡・・・追う五十狭斧彦命は鷹に変身します。

次に、温羅が鯉に変身して水中へと逃れると、今度は鵜に変身して追う五十狭斧彦命・・・。

ついに、追いついた五十狭斧彦命は見事!温羅の首を取ります

しかし、胴と離れたにも関わらず、その首は、大きなうなり声をあげて吠え続けます

犬に食われ、ドクロとなってもなお、うなり声をやめないのです。

勝利して名前を吉備津彦命と改め、そのドクロを吉備津宮釜殿の下に埋めた五十狭斧彦命は、ある夜、温羅の夢を見ます。

夢の中で温羅は、「俺の嫁さんを釜殿で奉仕させたなら、この国に災いが起こる時に、その釜を荒々しく鳴らして教えよう」と言ったのです。

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以上が吉備津彦の伝説で、今も吉備津神社では、毎年10月19日に、お釜の音で吉凶を占う『釜鳴り神事』というお祭りが行われています。

確かに、桃太郎の後半の鬼退治の部分のお話に似ています・・・いや、こっちがルーツでしょうけど・・・。

ただ、犬は首を喰ってるので良いとして、雉は敵だし、猿は被害者・・・

まぁ、細かい事を言ってもしょうがないですし、これには、吉備津彦に同行した三人の武者が、犬飼武命(いぬかいたけるのみこと・犬飼部)中山彦命(なかやまひこのみこと・猿飼部)楽々森彦命(ささもりひこのみこと・鳥飼部)であった事がら、動物に例えられたという話もあるようですし・・・。

そして、桃太郎に登場するきび団子・・・このきび団子の「きび」が「吉備」ではないか?というのも、この吉備津彦が桃太郎のモデルの最有力候補にあげられる理由でもあります。

しかし、この桃太郎のお話は、戦争中にはプロパガンダとして使用されたという悲しい歴史も持っています。

「神国・ニッポンの子である桃太郎が鬼畜米英を退治する」物語として、国民(特に子供)の戦意を高上させる道具となったのです。

桃太郎のお話が、そのような使い方をされる事を予測していた人もいました。

あの芥川龍之介は、「怠け者で乱暴な桃太郎が、鬼ヶ島で平和に暮らす鬼たちを侵略し、物を略奪する」という桃太郎のパロディを書いているそうです。

そのように、正義のヒーローは、紙一重で侵略者になる可能性も秘めているわけです。

この桃太郎のモデルではないか?とされる吉備津彦も、実は大和政権から派遣された侵略者であるかも知れない・・・いや、おそらく、吉備津彦の伝説は、たとえ崇神天皇の時代ではなかったとしても、古代にあった戦争をモチーフにした伝説である事は確かでしょう。

吉備の国・・・という名称でもわかる通り、この地方がもともと別の政権であった事は明らかです。

それも、出雲と並ぶくらいの大国であった事でしょう。

では、古代の政権は、何が目的で吉備の国を攻めたのでしょう?
それが鉄・・・製鉄技術です(やっと出てきた~)

岡山県総社市には、古代に大国であった事をうかがわせる数多くの遺跡が確認されていますが、なかでも、平成元年(1989年)、工業団地の造成中に見つかった「久代・板井砂奥製鉄遺跡」・・・現在は工業団地の一角に遺跡公園が整備され、一部の遺跡が復元されているそうです。

ここには、6世紀の後半から約100年に渡って、計60基の製鉄炉と16基の炭窯があったそうです。

もちろん、製鉄でできた鉄を加工するいわゆる『鍛冶屋』鍛冶炉も、総社市ではたくさん見つかっています。

原料となる鉄鉱石と製鉄技術は、武器や防具はもちろんの事、さまざまな道具に使用され、膨大な富を産み出したに違いないのです。

古代・大和にあった王権は、軍事転用もできる技術の支配と、その利益に目をつけたのでしょう。

大陸からやって来た温羅・・・口から火を吹き、水を油に変える・・・まさに製鉄の様子を思い描いてしまいます。

現代、世界のあちこちで争いを巻き起こしている石油利権・・・それと同じ事が、古代の日本でも行われていたのです。

製鉄・・・金鉱・・・油田・・・時代と物は変れど、人の心=欲はいっこうに変わらない・・・あいも変わらず利権を巡って国と国とがぶつかり合う。

少し考えさせられますね。
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コメント

いま、籔田紘一郎著「ヤマト王権の誕生」が密かなブームになっていますが、
それによると大和にヤマト王権が出来た当初は鉄器をもった出雲族により興
されたとの説になっています。
 そうすると、がぜんあの有名な山陰の青銅器時代がおわり日本海沿岸で四隅突出墳丘墓
が作られ鉄器の製造が行われたあたりに感心が行きます。当時は、西谷と
安来-妻木晩田の2大勢力が形成され、そのどちらかがヤマト王権となったと
考えられるのですがどちらなんだろうと思ったりもします。
 西谷は出雲大社に近く、安来は古事記に記されたイザナミの神陵があるので神話との関係にも興味がわいてきます。

投稿: ウメトクマ | 2008年11月26日 (水) 23時03分

ウメトクマさん、コメントありがとうございます。

出雲の神であるスサノヲやオオクニヌシ、そして、なぜかスサノヲとともに祀られる事の多いヤマトタケル・・・神話の中での彼らの活躍は、遠い昔に、出雲や吉備にあった国が、ヤマトに吸収されていく過程を教えてくれているような気がします。

興味はつきませんね。

投稿: 茶々 | 2008年11月27日 (木) 00時29分

古代やヤマトと聞くと宇宙戦艦ヤマトの古代進を思い出します。声優が富山敬(本名:富山邦親)だったと知っているぐらいの通でしたから。しかし勉強になりました。

投稿: 無敵鋼人 | 2009年12月18日 (金) 23時16分

無敵鋼人さん、こんばんは~

>勉強になりました。

と、言っていただけるとウレシイです。


>宇宙戦艦ヤマトの古代進・・・

今度、キクタクで実写になるそうですが、どうなんでしょう???
キムタクは嫌いではないですが、もう少し若いかたのほうが良いような気がしますが・・・

投稿: 茶々 | 2009年12月19日 (土) 02時16分

 キムタクが秋田の銘酒久保田が好きらしい。

投稿: 古事記ファン | 2011年2月13日 (日) 20時34分

古事記ファンさん、こんにちは~

キムタクが…ですか。
お酒は、まったく飲めないので、よくわかりません。
申し訳ないです。

投稿: 茶々 | 2011年2月14日 (月) 14時30分

いずれにしても農業機械だったらK氏の住んでいる東出雲の三菱農機でしょう。

投稿: トライボ | 2013年5月 5日 (日) 19時07分

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