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2008年1月15日 (火)

ネズミを捕って天丼を食おう!明治のペスト流行の話

 

明治三十三年(1900年)1月15日、ペストの流行に困惑した東京市は、『ペスト菌を媒介する家ネズミ・ドブネズミを一匹五銭で買い上げる』という通達を出しました。

・・・・・・・・・・・

前年の明治三十二年(1899年)10月初めて広島でペスト患者が発生しました。

その後、輸入の貨物から病原菌が進入し、神戸大阪で相次いで患者が発生し、ペストは大流行の兆しを見せはじめます。

政府は慌てて、清国・インドなどからのボロや古綿等の輸入を禁止すると同時に、その対策に躍起になるのですが、当時は、対策と言えるような対策法はなく、患者が出るとその家の回りに囲いをして、立ち番の巡査を置いて家への出入りを禁止し、石灰で消毒するくらいの事しかありませんでした。

しかし、やっと文明国の仲間入りをしたばかりの日本国の首都・東京に蔓延しては一大事です。

東京にペストがやって来る前に、何とか予防しようと、東京市は、翌・明治三十三年(1900年)1月15日『ペスト菌を媒介する家ネズミ・ドブネズミを一匹五銭で買い上げる』という通達を出したのです。

これで、東京市民はエライ事になってしまいます。

なんせ、まだまだ一般庶民には、「ちょっと高いかな?」と思われるワンランク上の大エビ2匹入りの上天丼が、ちょうど五銭の時代だったのですから・・・

ちまたには、
「ネズミを捕って天丼を食おう!」
なる流行語が生まれます。

天丼だけではありません。

お酒も、当時は1升・三〇銭・・・て事は、一日一匹でもネズミを捕れば、その晩は、一合半の晩酌にありつけます。

そうなると、家族を総動員してネズミを追いかけまわし、中には、一家の大黒柱が仕事を休んでまで・・・まさに、猫も杓子もネズミ狩りへと走るのです。

確保したネズミは、各派出所などに持って行き、そこで金券と交換。

ネズミさんのほうは、石灰で消毒後、火葬場にて天国へ行ってもらい、金券を貰った市民は、指定の金融機関で現金に換えてもらうという仕組み。

Pesutoccそのため、派出所の巡査は、朝から晩まで、ネズミを持って来る市民の対応におおわらわ・・・とてもじゃないが、市内巡回なんてできやしない状態です。

でも、考えてみたら、危ない橋を渡って泥棒するより、ネズミを追っかけたほうが、効率よく稼げるかも知れませんから、意外に犯罪は少なかったかも・・・ですね。(勝手な想像ですが・・・)

なんせ、この時、完全に会社を辞めて、ネズミ捕りの没頭したある人物は、何と1ヶ月で2400匹のネズミを捕まえ120円を手にしたと言います。

今の上天丼が1000円前後と想定して簡単に計算すると、月・240万円ですからね。
かなりセレブな月収ですよ。

しかも、ご存知のようにネズミの繁殖力はハンパじゃありませんからね。

妊娠期間は約3週間で、一度に10匹強の赤ちゃんを産んで、その後6日経ったら次の妊娠が可能となります。

生まれた赤ちゃんは約1ヶ月で大人になって、またまた、3週間と6日おきに出産可能って事は、生まれる赤ちゃんの半分が女の子として単純な計算でいくと、オス・メスつがいの2匹のネズミのご家族は一年後には約3億匹って事に・・・

まさにネズミ算式に増えていきます。
こりゃ、捕っても捕っても追いつきやしません。

当然、東京市の財政の事を考えると、増え続けるネズミの買い取りを長く続けていけるはずもなく、港に臨時の検疫所を設けるなどの処置と入れ替えに、この制度は、ほどなく打ち切りに・・・。

しかし、翌・明治三十四年(1901年)になっても、ペストは、まだ衰えず、その年の5月には、今度は、またも東京市から『屋内を除くほか、はだしでの歩行を禁ずる』というお達しが・・・

しかも、これはちゃんとした通達で、違反者には罰金はもちろん、禁固刑もありという厳しい物。

これを聞いた庶民は、またまた大騒動です。

なんせ、当時は車夫や馬丁・職人などの技術系の職業の人は、「はだし」で仕事をするのが当たり前の時代でしたからね。

そして、結局、ペスト流行で、最後の最後に儲けたのは、下駄屋だったとか・・・。

「風が吹いたら、桶屋が儲かる」というのは聞いた事ありますが、
「ペストが流行れば、下駄屋が儲かる」とは・・・
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コメント

夏目漱石の『吾輩は猫である』にもこのネズミ買い上げの話が登場します。飼い主とその友人が「吾輩」がネズミを取らせて警察に買い上げさせよう、という話をします。とうとう「吾輩」がネズミの住みかとおぼしき穴の前で見張りながら、あやしくなってきたロシア情勢と絡めて兵法か何かを語る、という話でした。
『吾輩は猫である』は面白いネタの宝庫ではありますが、全部読み通すのは結構大変でした。もういちど挑戦する気はないですね。
庶民生活ネタは好きなので次のアップを楽しみにしています。

投稿: りくにす | 2013年1月15日 (火) 20時43分

りくにすさん、こんばんは~

『吾輩は猫である』は、結局全部は読んでないので、ネズミ買い上げの話があるのは知りませんでした。

漱石さんは時事ネタ好きですもんね~

投稿: 茶々 | 2013年1月16日 (水) 02時48分

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