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2008年4月19日 (土)

異形の怪物・両面宿儺の正体

 

両面宿儺の伝説をご存知でしょうか?

両面宿儺(りょうめんすくな)とは、『日本書紀』仁徳天皇(1月16日参照>>)の六十五年(383年?)の所に登場する人物です。

その記述は、わずか84文字・・・しかも、このお話は『古事記』にはまったく登場しません。

(仁徳天皇の)65年。
飛騨の国に一人の男がいた。
名前は宿儺。
 

その人物は、一つの身体に二つの顔を持ち、左右に剣をたずさえ、4本の手で弓矢をあつかい、力は強く、風のように速い・・・。 

天皇にそむき、人民から略奪をくりかえしていたので、朝廷は建振熊命(たけふるくまのみこと)を派遣して退治させた」

・・・と、日本書紀に書かれているのは、これだけ・・・。

これだけなら、昔話によくある怪物退治の単純なお話・・・となりますが、地元・飛騨に伝わる民話は、もう少しくわしく語られます。

身の丈六尺(180cm)、顔が表裏に二つ、手足が4本で、多くの手下を従えて、金銀を奪っては手向かう者を殺していた・・・ここまでは、同じ雰囲気です。

ところが、帝が宿儺を討伐するため、軍を差し向けようとすると、宿儺は・・・
「飛騨まで来ていただくのはお気の毒、美濃まで出向きましょう」
と言い、美濃・高沢山で官軍と衝突したのだとか・・・

山賊まがいの手下と、朝廷の官軍とでは差がありすぎたのか、さすがの宿儺も追い詰められてしまいます。

しかし、官軍の大将は、その勇猛ぶりを惜しいと思い・・・
「どうだ?天子さまの家来にならんか?」
と誘いますが、宿儺は、その誘いを拒否。

「いっそ、生まれ故郷で殺してくれ」
と言って反抗したので首を斬られたというのです。

こうなると、漠然とした昔話よりは、少し具体的になってきます。

なんせ、「飛騨では気の毒なので美濃で・・・」
という事は、すでに美濃の国は宿儺の領地となっていた事が伺えるからです。

単なる山賊では、飛騨から美濃までの広範囲を手中に治める事は出来ません。

これは、山賊・無頼のやからではなく、明らかに朝廷に対する反乱のお話という事になります。

さらに、「家来になれ」と誘うという事でも、宿儺が山賊ではなく、その地を治める由緒正しき者であった事が伺えます。

そして、ここに、もう一つ・・・

その戦場となった高沢山にも宿儺の伝説が残っています。

それは・・・
やはり、仁徳天皇の時代に、高沢山に大蛇が住みついて住民を悩ませていたのを聞きつけて、飛騨に住む宿儺という、頭が一つで顔は4面、手足が4本の異形の者がやってきて、退治してくれた・・・という物です。

これは、完全に宿儺英雄物語になっています。

先の伝説で、金銀を奪っていたとされている飛騨の千光寺の記録でも、宿儺は寺を創設した開祖で、観音の化身であるとされています。

考えてみれば、この時代、金銀財宝を持っているなんていうのは、朝廷の官人か、それに連なる豪族たちです。

たとえ宿儺が、金銀財宝を奪っていたとしても、その相手は朝廷側の人間であって、その地に暮らす一般庶民ではなかったでしょう。

彼が、弓を放つその先は、ただ一つ・・・東へ東へと侵略して来る大和朝廷?

江戸時代に、千光寺を訪れた、一刀彫で有名な円空(1月26日参照>>)は、ほほえみを浮かべたやさしい顔と、怒りに震える恐ろしい顔の、二つの顔を持つ両面宿儺像を彫り、この寺に残しています。

日本書紀には、化け物のように書かれている両面宿儺・・・

その両面宿儺の両面とは・・・

東国の先住民族を守るやさしいリーダーの姿と、権力に真っ向から立ち向かう勇敢な戦士の姿・・・この二つの顔を持つ、比類なき勇者の事であったかも知れないのです。
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神代・古墳時代」カテゴリの記事

コメント

記紀神話の中には、大和朝廷を正当化する為に、史実を歪曲・捏造したものが多数含まれてると聞きます。この話などもその一つなんでしょうね。あと、大蛇を退治云々てところに、八俣のオロチ退治の須佐男尊の神話との類似性を感じました。いやぁ…こうして見てくと、日本の歴史は奥が深いですね。

投稿: マー君 | 2008年4月19日 (土) 10時08分

マー君さん、こんばんは~

この両面宿儺には、2つの顔を持つというところから、双子のヤマトタケルノミコトの事ではないか?という説もあるそうです。

ヤマトタケルノミコトは、スサノヲノミコトやオオクニヌシノミコト同様、先住民族の神様を記紀神話に取り込んだ神様と言われていますので、やはり、先住民族との抗争劇と考えるのが妥当でしょうね。

投稿: 茶々 | 2008年4月19日 (土) 20時47分

まさにそのとおりなんですが、以前、顔が裏と面にあるハニワが出ましたよね。あれ・・ものすごく気になっていて、ローマの2面神みたいだなって思いますが、ああいう『超人的な神の姿」がイメージにあって、強い反逆者が顔が二つもある神→怪物になったのか・・なんて深読みしてしまいます。

投稿: 乱読おばさん | 2008年4月19日 (土) 21時43分

乱読おばさま・・・そうなんですよね~

明日香の橘寺にも二面石なんてのもありますし、性格的な二面性なら、大日如来と不動明王のような像でも良いわけで、ローマのヤヌスのように現実に二面を持った像というのは、何を表現しているんでしょうか?

とても気になります~

投稿: 茶々 | 2008年4月19日 (土) 23時16分

両面すくなについてイマイチ解らなかったんですが解りやすいお話でよく解りました。
ありがとうございます。

投稿: ぁゃ | 2010年7月 3日 (土) 09時19分

ぁゃさん、こんばんは~

両面宿儺への興味は尽きませんね。
また、遊びに来てくださいませ~

投稿: 茶々 | 2010年7月 4日 (日) 01時40分

こんにちわ 初めまして。
アテルイやシャクシャインの様な英雄だったのだという思いを、ますます確信しました。(笑)

姿はラーマヤーナに登場する双頭四腕の悪魔に似てますね。
きっとインドにも、似た様な英雄が居たのでしょうね。
今は悪魔扱いにされてますけど。

投稿: | 2011年2月17日 (木) 22時43分

周さん、こんばんは~

やはり、中央に刃向かう人たちは、怪物や鬼として記録にのこされるんでしょうね。

地元民によっては英雄だった可能性大ですね。

投稿: 茶々 | 2011年2月18日 (金) 01時47分

茶々様、はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいております。
両面宿儺については、若いころに読んだ豊田有恒さんの作品で知りました。

円空の作品も大好きですので、千光寺の両面宿儺はいつか実物を見たいと思っています。

乱読おばさまもローマ神話のヤヌスとの類似についてお書きになっていますが、私はウルトラセブンの最終話にでてきたパンドンを思い浮かべました。(パンドンは顔が前後でなく左右ですが)


投稿: とらぬ狸 | 2015年3月27日 (金) 18時44分

とらぬ狸さん、こんばんは~

ウルトラセブンは子供番組とは思えない、奥深いストーリーになってる回がいくつかありますね。
(実は密かに特撮好きでもあります(*゚ー゚*)セブンの方に喰いついちゃってスンマセン)

投稿: 茶々 | 2015年3月28日 (土) 03時35分

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