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2008年11月14日 (金)

大阪の昔話~ちょっと色っぽい「鉢かづき姫」

 

今日は、大阪に伝わる昔話・・・『鉢かづき姫』「鉢かつぎ」とも)をご紹介します。

有名な昔話ですが、実は、このお話は、大阪の寝屋川市が舞台だったんですよ。

今回は、ちょっと色っぽい鉢かづき姫で・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昔、河内の国の交野(現在の交野市だけではなく、大阪府の枚方市と交野市と寝屋川市あたりがすべて交野と呼ばれていました)寝屋村藤原実高という貴族が住んでいました。

奥さんもたいへん美人で、仲むつまじく評判の夫婦でしたが、ふたりにはどうしても子供だけは授かりません。

そこで、夫婦は大和の国(現在の奈良県)長谷寺の観音様(5月9日参照>>)にお参りして「どうぞ、子供が授かりますように」と願かけをしました。

するとその夜に、奥さんの夢に観音様が出てきて・・・
「望みどおり、女の子を授けよう。そして、その子が13歳になったら、この鉢に宝物を入れて、頭にかぶせなさい。」
と言ったのです。

夢から覚めると、ほんとに枕元にがありました。

それからまもなく奥さんは、ご懐妊・・・そして無事、かわいい女の子を産みました。

「観音様のご利益だ!」と夫婦はおおいに喜んで女の子に初瀬(はつせ)という名前を付けてかわいがりました。

しかし、初瀬が13歳の頃、奥さんは重い病気にかかってしまいます。

自分がもう長く生きられない事をさとり
「かわいい娘に、こんな醜い鉢をかぶせるのはつらいけど、このままでは初瀬の将来が気になって死んでも死にきれない」
と思うようになりました。

しかし、観音様のお告げでもある事だから・・・と決意を固めて、初瀬に事情を話して鉢をかぶせ、悲しみのあまりそのまま息をひきとりました。

その死を知った実高はおおいに悲しみ泣き崩れましたが、同時にそばにいた鉢をかぶった初瀬を見て驚き、その鉢を外そうとしましたが、ビクともしません。

実高は、うろたえて部屋に引きこもってしまいました。

それからは、実高は人が変わったように暗くなり、初瀬も自分の姿を見ると顔色を変える父を見るのもつらく、部屋に引きこもって出てこなくなり、使用人たちも、初瀬の事をはれものにさわるようにあるいは、化け物を見るように接するようになり、家のなかの様子はすっかり変わってしまいました。

それから何年かして実高は、二度目の奥さんと結婚しました。

その継母は、鉢をかぶった初瀬を見るなりきみわるがって、ことごとくつらくあたり、継母が連れてきたふたりの娘も何かと、初瀬をいじめます。

初瀬は、毎日母親のお墓に行っては、「早く私もお母様のおそばに行きたい」と、泣いていました。

いつしかその事が継母の耳に入り、「そんなにここがイヤやねんやったら、出て行きなはれ~!」と、とうとう追い出されてしまうのです。

とぼとぼと、行くあてもなくさまよっていると、大きな川(淀川)にたどり着きました。

川に写る自分の姿を見て悲しくて・・・このまま死んでしまおう・・と川に身を投げました。

しかし、かぶっていた鉢が水に浮いて、何度飛び込んでも岸に戻ってきて、死ぬことすらできませんでした。

濡れた着物を干して乾かし、しかたなく、また、とぼとぼと歩いて行くと、道を通る人は化け物を見るように初瀬をさけ、子供は「や~い!鉢かづき~」と言って石を投げてきます。

ちょうど、そこへ山陰の三位の中将という身分の高い人が通って、その様子を見てあわれに思い、子供たちをいさめて、初瀬を下働きとして働かせようと屋敷につれて帰りました。

初瀬は鉢かづきという名前で呼ばれて、朝から晩まで台所仕事や風呂焚きをして、夜は屋敷の馬小屋のわらの上で眠り、1日中働きました。

そのお屋敷でも、気味悪がる者や、次から次へと自分の仕事を押し付けていじめる者もいましたが、もう自分の居場所はここしかないような気がして初瀬は一所懸命、働くのでした。

三位の中将には4人の息子がいました。

上の三人には、すでに奥さんがいましたが、一番下の息子は独身だったためか、何かと帰りが遅く、帰宅してお風呂に入るのが深夜になることもしばしばありました。

彼は、見た目もりりしい若者でしたが、その気だてもやさしく、いつも自分が遅くなることによって、ふろ番をしている初瀬の休む時間も遅くなる事を気にしていたのです。

ある日、自分が風呂に入ったあと「今は、夜もふけてみな寝静まっているから、今のうちに早く、湯を使いなさい」と、初瀬に風呂をすすめてくれました。

当然、初瀬は辞退しましたが、若者のあまりの薦めに風呂を使わせてもらい、あの家を出てから久ぶりに、ホッとしたひとときを過ごしました。

「ありがとうございました」と礼を言う初瀬と、若者は、この時、初めてまともに言葉をかわしましたが、その言葉、そのしぐさに、若者は、初瀬がただの娘ではない事を感じるとともに、チラリと見えた白くぬけるような肌の美しさが脳裏に焼きついてしまうのです。

それから若者は、初瀬のいる馬小屋に通いはじめます。

若者が笛を持っていけば、みごとに美しく奏で、歌を詠めば、みごとに返してくる初瀬を見て、やはりただの娘ではない、きっとどこかの、地位のある人の姫にちがいない・・・と確信するのです。

そうなると若者の気持ちは止まりません。

毎夜毎夜、馬小屋に通っては、逢瀬を重ねる二人・・・とうとう初瀬のほうも、
「最初は、すべての不幸の根源だと思ったこの醜い鉢・・・しかし、この鉢のおかげで、このかたとめぐり会えた・・・この鉢に感謝しなければ・・・」
とまで思うようになりました。

若者も、もはや、初瀬なしでは夜を過ごせないほど、彼女に夢中になります。

そうなると、まわりにもウワサが広まり、中将の耳にもふたりの事が入り、
「このままではたいへんな事になる」
と猛反対します。

何とか、息子をあきらめさせ、鉢かづきを屋敷から追い出そうと思案しますが、反対されるとさらに強くなるのが恋心・・・若者は「鉢かつぎを嫁にする~」と言いだします。

それならば・・・と、鉢かづきと上の息子の3人の嫁と嫁くらべをする事になりました。

上の息子の3人の嫁は、それぞれ良家の姫で、財産も学識もある美しい女性たちでしたから、「こんな人たちと競う事なんて、とてもできない・・・と鉢かづきは逃げるだろう」という考えでした。

嫁くらべを明日にひかえた前の晩・・・初瀬は涙をいっぱいためて、若者に言います。
「お別れはつらいですが、あなたならどんなりっぱな人でもお嫁に迎えられます。私はこのままここを出て行きます」

しかし、若者は・・・
「お前がいなければ生きてはいけない。どうしても、親が反対するのなら、私がこの家を出よう。さぁ!一緒に・・・」
と、初瀬の手を引いて駆け出そうとした時・・・

雷が落ちたような衝撃がはしり、一瞬、気が遠くなって、倒れてしましました。

ふと、我に返って、「鉢かづきはどうしただろう」と、あたりを見回すと、足元には、あの鉢がパッカリとふたつに割れ、その中からは金銀財宝や美しい着物が、ざくざくと出てきました。

そして、その割れた鉢の向こうにたたずむのは、この世のものとも思えない、みめうるわしい姫・・・。

「お前は・・・お前が・・・あの鉢かづきか?」

初瀬は、始めて若者に自分の身分や、鉢をかぶったいきさつを話ました。

そして、いよいよ次の日の朝・・・嫁くらべの話は寝屋村じゅうに広まっいて、屋敷には見物人も大勢集まってきていました。

「よっしゃ~、この大勢の中で、めぇいっぱい恥をかくがえぇ。そうして、いたたまれんようなって出て行ったらええねん」と中将・・・

そんな中、現れた初瀬の姿は・・・
一足進めるごとに匂うような美しさ・・・
中将の前にきて、少し挨拶をすれば、声も返せないほどの気品・・・
まわりの者を、すべてくすませてしまうような輝き・・・

やがて始まった琴の演奏や歌会・・・ひととおりの嫁くらべの中でも、初瀬のそれが1番きわだっていました。

初瀬の生い立ちを聞いた中将夫婦は、本来なら、向こうのほうがずっと身分が上・・・望んでも叶えられないような縁談に、「よくぞわが息子の嫁に来てくれた」と大喜び。

ふたりはめでたく結ばれ、初瀬はまず、母の菩提をとむらい、長谷寺の観音様にお礼参りをしました。

その頃は、父・実高も継母と離別し、両方とも行方知れずでしたが、そのお礼参りの長谷寺で一心に祈りをささげているひとりの僧に出会ったのです。

僧は、お経を唱えるように、何やら小さな声でつぶやいています・・・「娘、鉢かづきが、まだこの世にいるなら、悪いことをした・・・一目合わせたまえ・・・」

そう、その僧は父・実高だったのです。

初瀬はすべてを許し、父を屋敷に迎え、夫婦仲むつまじく、子宝にもめぐまれ、末代まで末永く幸せに暮らしましたとさ。
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怨霊・伝説・昔話・不思議話」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しく拝見しております!
タイトルの『鉢かつぎ』ですが『鉢かづき』ではないでしょうか?
鉢は、担ぐものでなく頭からかぶるという動詞の「かづく」の方だと思うのですが・・・

投稿: ガーベラ | 2008年11月14日 (金) 09時50分

ガーベラさま、ご指摘ありがとうございます。

手持ちの書籍には「鉢かづき」となっていたのですが、先日の某サンケイ新聞で「鉢かつぎ」となっていたので、悩みつつも「鉢かつぎ」にしましたが、おっしゃる通り「鉢」はかぶる物なので、正解は「鉢かづき」でしょうね。

ただ、『大辞林』には、「被く、かずく、かづく」、「かずく(潜)と同源。『かつぐ』とも」となっていて、「かづく」と「かつぐ」は同義語という解釈のようです。

「かぶる」の古語が「かづく」なので、おそらく、こちらが正しいのでは?と訂正させていただきましたが、キーワードでの検索で「鉢かつぎ」のほうでもヒットするかも(鉢かつぎでの検索のほうが圧倒的に多いそうなので、そのキーワードも捨てがたいのです)・・・というセコい事を考え、「鉢かつぎ」とも言うというのを入れさせていただきました・・・(#^o^#)

投稿: 茶々 | 2008年11月14日 (金) 10時23分

鉢かつぎ&鉢かづき…どちらも間違いとは言いきれないでしょうね。播磨地方ではスバリそのまま、鉢かぶり姫ってタイトルで伝わってますよ。この話も細部では色んな違いが見られますね。

投稿: マー君 | 2008年11月14日 (金) 13時40分

マー君さん、こんにちは~

>鉢かぶり・・・

それも聞いた事がありました~
そっか・・・それは播磨地方だったんですね。

思うに「新しい」みたいなもんでしょうか?

「新しい」は本来(昔)「あらたしい」が正解でしたが、現在はもう「あたらしい」が一般的で、それが正解って事になってますよね・・・(違うかな?)

「世論」の「よろん」と「せろん」も最近はどっちも正解になってた気がします。

投稿: 茶々 | 2008年11月14日 (金) 15時58分

 こんにちは

 このお話、大阪の寝屋川市が舞台だったのですか。何も知らずにいました。
 このお話は昔、絵本で読んでいて(←子供っぽくてすみません。m(__)m)大好きだったので、とても懐かしく読ませて頂きました。
 絵本のお姫様は下膨れでした。昔の美人ということでそうなっていたみたいです。

 苦労を重ね、最後は幸せをつかむというハッピーエンドのお話が私は大好きなのですが、歴史の厳しい現実はそれを許さず、和宮様と家茂公のように『存命中は平安を許されず…。』というのが悲しくて…。(←まだ、言ってます。本当にしつこくてすみません。)

 楽しいお話をありがとうございました。
 

投稿: おみや | 2008年11月14日 (金) 16時19分

おみやさん、こんばんは~

そうですね。

比較的、ラブストーリーは悲しい別れで終わる事の多い日本の昔話の中で、このお話は、見事なハッピーエンドで、ホッとしますね。

確かに、現実のお姫様は、そう簡単には、幸せになれませんが・・・

投稿: 茶々 | 2008年11月14日 (金) 22時34分

良い話。なんだか 癒されました…

投稿: ナナちゃん | 2012年1月21日 (土) 18時07分

ナナちゃんさん、こんばんは~

>良い話。なんだか 癒されました…

ありがとうございます
その言葉に、私が癒され、元気が出ます!

投稿: 茶々 | 2012年1月22日 (日) 02時44分

『鉢かづき姫』のお話をありがとうございます

酔いどれ事件帖 最終回 妖怪

ポルター・ガイストは『ロッキード事件』の極秘書類を狙ったが、強力な超能力者に妨害され、失敗。
一方、ゲンは万来軒の店主から、娘との結婚の話を持ちかけられる。酒の量が増えているゲンは苦悩する。
その頃、石森章太郎は長崎にいた。酒を飲みに出かけたところ、店内でファンの女性に遭遇する。彼女は「ゲンに恋人を」と頼むが、石森は「ラーメン屋の娘がいる」と答える。「普通の女性ではダメだ」と言うファンは、「ハチカツギ姫を恋人に」と主張する。
当初は彼女をタダの不良娘と思っていた石森だが、彼女が胎内被曝をした事を知る。「私は長崎からは出られない。万が一の場合、専門の医療機関が必要だから」という彼女こそ、ハチカツギ姫だったのだ。石森は東京に戻りラタンへ向かうが、長崎の事が頭から離れない。
超能力者に敗北したポルター・ガイストは、傷ついたままゲンの前に現れ、超能力者へのリターン・マッチを宣言。ゲンに別れを告げる。
ゲンは、おタケに書置きを残し、去る。
石森は犯罪と正義について自問しながら、雑踏を歩く


wikipedia 「鉄面探偵ゲン」の項目より引用

投稿: 雨後の妖精 | 2015年9月18日 (金) 15時09分

雨後の妖精さん、こんにちは~

申し訳ありません。
その漫画は読んでいないので、よくわかりませんです。

投稿: 茶々 | 2015年9月20日 (日) 15時18分

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