かかとの無い履き物と「ナンバ」~「下駄の日」にちなんで
今日、11月11日は、『下駄の日』という記念日らしい・・・
下駄(げた)の足跡が「11 11」に見えるところから、伊豆の国市観光協会が制定したのだとか・・・
なぜに?伊豆?
・・・という事はともかくとして、下駄の日なので、やっぱゲタの歴史と、それに関連して、以前から、どこかの話題にもぐり込ませようと考えていた日本人の歩き方についてお話させていただきます。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
下駄の歴史は、想像以上に古いです。
なんせ、弥生式の土器に登場しているのですから・・・
ただし、この頃の下駄は、日常にはいて歩く物ではなく、水田耕作用に造られた田げたという物で、いわゆる雪国のかんじきのように、泥田の中に足がもぐってしまわないようにするための下駄でした。
そして、もう一つ、大陸と交流するようになって、下駄のルーツのような物が輸入されたという説もあり、察するに、外国の物と日本の農業用のが入り混じって、やがては日常の履き物へと変化していったように思います。
それでも、しばらくは、洪水の時に使用したり、水濡れするような職場で使用されたりと、主に仕事用の履き物として使用されていた下駄でしたが、そんな下駄が日常的な履き物となるのは、江戸時代の中期頃から・・・
現在のような形になったのは18世紀初頭=宝永年間(1704年~1710年)であろうと推測されます。
その後、正徳年間(1711年~1715年)頃には塗りの下駄が流行し、文化文政の時代(1804年~1829年)にはポックリの流行・・・と、今の人気ファッションと同じように、時々の流行で新製品が生まれ、その中の良い物は定番として残っていくといった形で、デザインも多様になり、様々な工夫もされていったようです。
ただし、実際に、下駄を一般庶民の誰もが履くようになるのは、明治以降の事だそうで、やはり、それまでは、草履(ぞうり)・草鞋(わらじ)というのが主流だったようです。
ところで、この日本の伝統的な履き物である下駄・草履・草鞋・・・これらの履き物すべてにかかとが無い事にお気づきでしょうか。
これには、日本人独特の歩き方・走り方が関係しているのです。
実は、日本人が現在のような歩き方・走り方をするようになったのは、明治以降・・・以前、『靴の記念日』(3月15日参照>>)に書かせていただいたように、維新となって、真っ先に西洋式に移行したのが、新政府の軍隊でした。
当然、そのページにあるような西洋式の軍服や靴などの衣服だけでなく、軍隊の行進も、西洋の物を見習った歩き方に変えられたわけで、それが、現在の日本人の歩き方なわけです。
現在は、「外国から輸入された靴を日本人が履けない(サイズ違いは別ですよ)」なんて事はないわけですが、当時、最初に輸入された靴を、徴兵された一般庶民が誰も履けなかったという事は、やはり、歩き方が違っていたからではないでしょうか。
では、なぜ、日本人は、西洋とは違う歩き方をしていたのか?
それは、日本の地形です。
目と鼻の先に山をひかえた日本人にとって、欧米や大陸のように、平坦な国土に張りめぐらされた平坦の道を歩くという事が少なかったのです。
古来より、細く曲がりくねった山道を歩いて来た日本人は、背筋をピンと伸ばして歩く事はなく、自然と前のめりになり、後ろ足のつま先で地面を蹴り、前に踏み出した足に体重移動して、さらにその前に進むという方式で、この歩き方だと、かかとは地面につきません。
なので、日本の履き物には、かかとがないのです。
そして、体重移動で前に進むという事は、自然と、手と足は、同時に前に出るわけで、現在の、左足が前に出た時に、右手が前に出る歩き方とは、まったく違う事がわかります。
この歩き方・走り方は『ナンバ』と呼ばれ、北京オリンピックのリレーで銅メダル獲得に貢献した末續(すえつぐ)慎吾選手が、アジア新記録を出したときに「ナンバ走りの動きを意識して走りました」と、答えた事から、一気にその名前が有名になりましたね。
そうなんです。
このナンバ・・・現在のスポーツ理論によれば、これを完璧にマスターすれば、数段早く、数段長い距離を、数段疲れずに歩ける(走れる)らしく、スポーツ選手などが、その歩き方・走り方を研究し、練習に取り入れて、より良い記録に挑戦しているのですが、悲しいかな、実際に、この歩き方のホンモノが伝承されていません。
古武術研究家の方の研究や、未だ残る狂言や歌舞伎の歩き方などから、「このような歩き方であったであろう」という推測はされてはいるのですが・・・確かに、体重移動などは、実際にその歩き方を見てみない限りは、再現できませんよね。
なので、現在研究中のナンバが、どこまで本物のナンバに近いのかは、未だ誰もわからないわけです。
そして、相撲のてっぽうなども、手と足が同時に出る事から、歩いたり走ったりだけではなく、力も強くなる=重い物も持てるのでは?とも言われているようですが、なんせ完璧に再現できないので、その効果は未知数です。
ただ、江戸時代の飛脚は、このナンバのおかげで、長距離を疲れずにいち早く移動できたとも言われ、それを聞くと、松尾芭蕉が奥の細道で、異常に早く旅をこなした事もうなずけます。
改めて、「日本人、すごいゾ!」と自慢したくなりますね。
忘れられてしまった事が残念ですが・・・
←「なるほど」と思っていただけましたら応援クリックよろしくお願いします(゚ー゚)あなたの応援で元気がでます!
固定リンク | コメント (6) | トラックバック (0)


最近のコメント