丹後風土記の「浦の島子」の物語
和銅六年(713年)5月2日、元明天皇が諸国に風土記を命じました。
・‥…━━━☆
風土記とは、
地方の地理や、産物、風俗、伝説などが記載された地方誌・・・今で言えば地理事典、やわらかく言えば観光パンフレットのような物でしょうか。
これは、壬申の乱に勝利して天皇となった天武天皇が(2月25日参照>>)、自らと、その子孫の家系が、この国を統治するにふさわしい血筋である事を、この国の歴史で以って正統化しようとした『古事記』『日本書紀』の編さんと、同時進行で進められるべき、中央集権国家の必須アイテム・・・
なぜなら、記紀で正統性を認められた天皇家が全国各地に編さんの命令を出し、それを受けた地方が、自国の名産品や歴史をまとめた物を提出する・・・つまり、その地方が、天皇の支配下にあるという事を意味しますからね。
・・・で、すでに失われた物や未発見の物、さらに疑わしい物も含めれば、この和銅六年(713年)5月2日の命令で、北は越後(新潟県)から、南は九州・壱岐対馬まで、55の風土記が編さんされたと言いますが、
さすがに原本はすでに無く、すべて写本ですが、現在に伝わっているのは5つ・・・ただし、ほぼ完本なのは『出雲風土記』だけで、『播磨国風土記』『肥前国風土記』『常陸国風土記』『豊後国風土記』の4つは一部欠損があります。
ところで、上記の中の『丹後風土記』に、あの「浦島太郎」のお話が紹介されているのをご存じでしょうか?
本日は、その『丹後風土記』の中の『浦の島子』の物語をご紹介したいと思いますが、このお話は養老四年(720年)4月21日に奏上された『日本書紀』にも、丹後地方に伝わる話『浦島子』として登場します。
この日本書紀の『浦島子』をもとにした話が、室町時代から江戸時代にかけて成立した『御伽草子』に掲載され、それが今、みなさんもご存知の『浦島太郎』の物語という事です。
なので、主人公の名前は苗字が浦島で名前が太郎なのではなく、浦に住んでる島太郎(島子)なんですね。
また、丹後地方には、風土記だけでなく口伝えの民話として『水之江の島子』という話が残っていますが、この『水之江』というのは、水のある所という意味ですから、つまり海辺・・・で、海辺=浦ですね。
長い前置きになりましたが・・・
この丹後の民話や風土記に残る『浦島子』の話というのが、今、昔話としてみなさんがご存知の御伽草子の『浦島太郎』よりも、はるかに摩訶不思議でオモシロイのですよ。
まず、亀を助けません。
五色に光る亀が女の人(乙姫ではなく、亀姫という名前です)に変身し、竜宮城ではなく常世の国へ行かれます。
もちろん、その国は海の底ではありません。
民話では、「海の上をず~っと行ってふわりと着いた」と表現しています。
風土記では、『昴(すばる)』『畢宿(あめふり)』と、具体的な星の名前まで言っちゃってます。
その常世の国で、例のごとく亀姫としばらく楽しく暮らして後、やがて島子は帰ってくるのですが、常世の国では、わずかな期間と思っていたのが、地上では、三百年経っていて、途方にくれた島子が、亀姫からもらった玉手箱ならぬ『玉匣(たまくしげ)』という箱を開けると・・・(くわしくは8月5日参照>>)。
民話では、開けたとたんに島子は空にすぃ~っと呑まれてしまいます。
日本書紀では、白鳥になって空に飛んでいきます。
風土記にいたっては、嘆き悲しむ島子を慰めるべく亀姫がその玉匣を使って声を飛ばす・・・つまり、遠くにいる亀姫の声が玉くしげを通じて聞こえて来るという、まるで携帯電話さながらの様相を呈しています。
オモシロイですね~
アインシュタイン博士の相対性理論によると、光速で移動する宇宙船の中では、時間がゆっくりと流れるそうな。
風土記や民話だけで、即、浦島子が宇宙旅行をした、というのは短絡的ですが、かと言って、1000年以上も昔の人が想像だけでこんな物語を思いつくのか、と言えばそれもまた首をかしげたくなるSFチックな物語です。
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コメント
こんばんは。
茶々さんの面白さに惹かれ、「先史〜」から順番に読むようになってココ迄来ましたw。
へぇ〜、そうなんですね!、浦 島太郎。
初めて知りました。
って事は、今CMで言ってる「浦ちゃん」は正しい呼び方って事ですね!
因みに、プレアデス星団までは光速でも300年では足らないので、きっと玉手箱がワープ装置だったんでしょうね。元々は正確な描写だったものが、後世の人には理解出来ずに御伽草子のような描写になってしまったのでしょうね。
いゃ、真面目に言ってます。ハイ(汗
投稿: とーぱぱ | 2016年11月 3日 (木) 20時43分
とーぱぱさん、こんばんは~
浦島太郎と言い、かぐや姫と言い、なんだか不思議な物語は、昔の人が想像で思いついたとは思えないほど科学的ですよね~
投稿: 茶々 | 2016年11月 4日 (金) 01時29分
茶々様 おはようございます
1300年以上も前から「浦島太郎」のお話があったとは、この年になるまで全く知りませんでした。
もうこの頃からUFOなるものが存在しており、島太郎君は他の惑星(海王星?)に行ってきたのではないでしょうか。
投稿: 山根秀樹 | 2021年5月 2日 (日) 09時19分
山根秀樹さん、こんばんは~
個人的には、1300年前の人に「(場所によって)時間の流れが違う」という感覚がある事が、最も不思議です。
やはり、何らかの実体験なんでしょうかね?
投稿: 茶々 | 2021年5月 3日 (月) 03時14分