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2006年7月21日 (金)

ハリスと唐人お吉

 

安政三年(1856年)7月21日、日本の初代アメリカ総領事となるハリスが伊豆・下田に到着しました。

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ハリス(ハリスについては2012年7月21日参照>>)と言えば『唐人お吉』を思い出しますが、彼女の悲劇の生涯は、歌やお芝居になるにつれ、だんだんと尾ひれがついて、どこまでが本当だったのか、色々な説があります。

下田の人気芸者で、幼馴染で船大工の鶴松と恋仲だったのを、ハリスが見染めて半ば無理やり愛人にした・・・というのは、どうやらお芝居を面白くするためのフィクションのようですね。

Touzinokiti600 『唐人お吉』こと、斉藤きちさんは芸者さんではなく、下田洗濯女だったようです。

洗濯女とは、もちろんクリーニング屋さんではなくて、船乗りが丘にあがっている間の一夜妻。

一緒にいる間は、相手の衣類を洗濯するのも仕事のうちなので、洗濯女と呼ばれていましたが、言わば娼婦で、当時は大きな港のある所には、そういう商売の女性がかなりの数いたらしいです。

そんな彼女の人生の転換が『ハリスの愛人・大募集』だったのです。

しかし、これは当時の幕府の大きな勘違い。

ハリスさんは、アメリカにいた時から内臓に持病をかかえていて、日本に来てからもあまり調子がよくありませんでした。

それで看護婦を探していたんです。

通訳がナース=病人の看護や身の回りの世話をする女性」と言ったのを勝手に日本にいる間の愛人を欲しがっていると思い込んだ役人は、知り合いに声をかけたりしますが、

当時の日本人は、外国人など見た事もなく、レア・ステーキを見て牛を生で食べているとか、ワインを飲んでいるのを血を飲んでいると勘違いしたりとか、とんでもない噂が流れていましたから誰も「YES」とは言ってくれません。

そこで、法外な支度金をつけて一般公募となったわけです。

商売女たちでさえ「たとえたくさんの支度金がもらえても見たこともない外国人は・・・」としりごみするなか、お吉は「外国人だって人間だ。まさかとって食われる事もあるまい」と、この話に乗ったのだとか・・・

弟も妹もいて、決して楽な暮らしではなかった彼女にとって法外な支度金はやはり魅力的だったのでしょう。

恋人もいましたが、泣く泣く別れた・・・というよりは、女に体で稼がせるようなうだつのあがらない男にお吉のほうから見切りをつけた・・という感じでしょう。

そして、幕府の役人は彼女を娼婦だという事を伏せて「いいとこのお嬢さんだ」と言ってハリスのもとにつれていきます。

しかし、ハリスはすぐに、彼女が看護婦ではない事も娼婦である事も見抜いて、解雇しようと思いますが、解雇すれば法外な支度金を返さなければならないかも・・・と聞いて、やさしいハリスさんは、しばらくはとどめおく事にします。

でも、そのうちハリスの体の調子が良くなってきた事と、お吉が体中にできものができるという病気にかかった事で、結局は解雇されてしまいます。

しかし、一度『ハリスの愛人』というレッテルを貼られた彼女にもうお客はつきません。

商売ができなくなった彼女は、江戸や横浜を転々とし、その後下田に戻って男と同棲をして髪結いの仕事を始めたりもしますが、うまく行かず、最後はお酒におぼれて川に身を投げて自殺したと言います。

とは言え、伝え聞くお吉さんの一生は、どこまで本当かわかりません。

しかしハリスのもとへ行ったいきさつはともかく、彼女がずっと『らしゃめん』『唐人』偏見のまなざしで見られた事、失意のまま投身自殺した事はまちがいない所でしょうから、お吉さんの生涯を思うと胸が痛いですね。
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コメント

9月下旬に下田に旅行に行くんですが、駅周辺になにか石碑とかありますか?「今年の主役」の坂本龍馬にもゆかりがあるので。

投稿: えびすこ | 2010年7月20日 (火) 10時04分

えびすこさん、こんにちは~

下田には、ずいぶん昔に行ったっきりなので(゚ー゚;…この頃のご時世なので、何かあるかも知れませんね。

投稿: 茶々 | 2010年7月20日 (火) 13時10分

唐人お吉の話は、私も度々聞いたことがあります。幕末や明治時代を題材にした数々のNHK大河ドラマのストーリーにおいて、触れられることは全くありませんが、お吉に対する印象は、一言で言えば、『不幸』ですね。なぜ、数奇な運命を辿らなければならなかったのかは分かりませんが、時代から捨てられてしまったような気がしました。

投稿: トト | 2015年11月12日 (木) 13時11分

トトさん、こんばんは~

写真を見ると、美しい方なので、よけいに物悲しさを感じますね。

投稿: 茶々 | 2015年11月13日 (金) 03時17分

もし、お吉の生まれた時代が、幕末ではなく、平和な時代(例えば、徳川吉宗が実行した亨保の改革の時代)に生まれていれば、もう少し幸せな人生を送れたかもしれませんし、坂本乙女のような女傑として生まれていれば、数奇な運命を辿ることはなかったと思います。

投稿: トト | 2015年11月13日 (金) 12時56分

トトさん、こんにちは~

そうですね~
昔は生活保護とか無いですからね~
一説には、「小さな弟や妹がいた」なんて話も聞いた事あります(真偽のほどはわかりませんが…)

なんだかんだで、坂本さんちはお金持ちでしたからね。

投稿: 茶々 | 2015年11月13日 (金) 16時35分

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