源頼朝が敗走…石橋山の合戦
治承四年(1180年)8月23日、石橋山の合戦で、源氏の源頼朝と平氏の大庭景親が激突しました。
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平治の乱(12月9日参照>>)に敗れて父・義朝(よしとも)を失った(1月4日参照>>)13歳の時から、伊豆の蛭(ひる)ヶ小島で流人生活をおくっていた源頼朝(みなもとのよりとも)が(2月9日参照>>)、以仁王(もちひとおう=後白河法皇の第3皇子)が発した平家討伐の令旨(りょうじ・天皇一族の命令書)(4月9日参照>>)を受け取ったのは治承四年(1180年)の4月27日でした。
その後、挙兵を決意した頼朝は、8月17日に山木兼隆邸の夜討ち(8月17日参照>>)に勝利した後、早速、次の作戦を練ります。
時間はありません。
早くしなければ・・・山木の死を知って伊豆にいる平氏が必ず動くに違いありません。
あせっていたのか若かったのか、この頃の頼朝はのちに鎌倉幕府を開く頃の頼朝と同一人物とは思えないくらい無計画で突発的です。
(ま、個人的にはそんな感じのほうが好きですが・・・)
8月23日の朝から、平氏の襲撃に備えて、山と呼ぶにはほど遠い、丘のような石橋山の山上に陣をしき、槍を垣根のようにして壁を造り、山の木を切り倒してバリケードにして、源氏の白旗をなびかせました。
あとで、三浦勢の援軍が来ることになっていたとは言え、たった三百騎の軍勢にこの低い石橋山では、要害と呼べる要害ではありません。
先日の山木攻めは、ゲリラ的な奇襲作戦でしたから、こんな合戦らしい合戦は頼朝にとってあの父とともに戦った平治の乱以来。
しかも、その時はまだ子供で指示通り着いていって、指示通り戦っただけ。
実質上の初陣とも言えるこの石橋山は、やはり若気の至りといったところでしょうか。
この日は、昼間曇り空だった天気が日が暮れて豪雨となっていました。
相対する大庭景親(おおばかげちか)は、暗闇に乗じて三千の兵で、この石橋山を包囲します。
計画では、明日の朝から攻撃をしかけるつもりでしたが、雨空の向こうの東の方向に煙が立ち昇るのを見て、夜のうちに攻撃をしかける決断をします。
その彼方の煙が、頼朝の援軍としてコチラに向かっている三浦勢が日暮れに酒匂川の大庭方の家屋を焼いたものだと知ったからです。
明日まで待っていたら、その軍勢がこの場所までやってきますから、それなら夜であっても人数の少ないうちに攻め落としてしまったほうが良いわけです。
治承四年(1180年)8月23日・・・三千騎からいっせいにときの声があがり、戦闘の火蓋が切られました。
山を一気に駆け上がる平氏軍、槍の垣根を飛び越えて山を駆け下りる源氏軍。
両軍は、山の中腹でぶつかります。
戦いは明け方近くまで続きましたが、三百と三千ではとうてい頼朝に勝ち目はありません。
結局。頼朝は、わずか5~6騎を従えて敗走するしかありませんでした。
さすがの頼朝もこの時ばかりは死を覚悟したようですが、
「なんとか落ち延びて再起をはかってほしい」
という重臣の声に、とりあえず大きな木の根元の大きく穴の開いた場所に身をひそめて朝になるのを待ちました。
やがて夜が明ける頃、できるだけ遠くへ落ち延びようと、穴から出ようとした時、馬のいななきが聞こえ人の近づいて来る気配がします。
あわてて、また穴の中に戻って身を潜めます。
静まりかえって外の気配をうかがう頼朝たち。
突然、ヌ~っと穴を覗き込む人の顔が・・・。
当然、目と目が合います。
万事休す・・・見つかってしまいました!
中にいた全員が刀の柄に手をかけた時、その男は少し遠くにいる仲間に向かって大声で叫びます。
「お~い、大庭殿~ どうやら見当違いのようや…ここには誰もいてないぞ」
「この山に、逃げ込んだのではなかったようやな」
遠くから聞こえたその声は、まさしく敵の大将・・・大庭景親。
大庭が向こうへ去っていくのをたしかめた男は、もう一度穴の中を覗き込むと頼朝に向かって、
「早よ、逃げなはれ…ほんで、もし源氏が勝利のあかつきには、この梶原の事をお忘れなく」
少し、笑いながらそう言って、男は去っていきました。
後に頼朝の右腕となって鎌倉幕府を支える梶原景時(かじわらかげとき)との出会いでした。
その後、九死に一生を得た頼朝たちは、五日間もかかって真鶴岬まで行き、船で逃走しました。
何とか拾ったこの命・・・さぁ、再起の時!!・・・ですが、そのお話は10月6日のページでどうぞ>>
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