義経の都落ち
文治元年(1185年)11月3日、あの源義経が、都を落ちて行きました。
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黄瀬川の対面(10月21日参照>>)ではともに涙を流し、一連の源平の合戦で数々の功績(3月24日参照>>)を残してくれたにも関わらず、そんな弟・義経を拒否する(5月24日参照>>)兄・源頼朝・・・。
配下の土佐坊昌峻(とさのぼうしょうしゅん)を派遣して、義経を討とうとしますが、この時はあえなく失敗(10月11日参照>>)。
そして今度は、嫁・政子の父・北条時政が総大将となって、義経追討軍がいよいよ鎌倉を出発しました。
もう、京の町はその噂で持ちきりです。
そんな中、11月1日に義経は後白河法皇に「四国と九州をちょーだいなv(^o^)v」と、願い出ます。
壇ノ浦で平家を滅亡に追いやったのは義経ですから、筋が通ってなくもないですが、それはあくまで、鎌倉の頼朝になり代わって行った合戦ですから、そんな事したら鎌倉の頼朝が怒るに決まってます。
・・・かと言って、今、目の前にいる義経に拒否する勇気もなく、朝廷は迷いに迷ったあげく・・・
『義経記』では、この時の義経には、四国と九州を治めるように朝廷から命令が出た事になっていますが、『平家物語』では、あくまで、四国と九州の武士たちに「義経に従え」という手紙を書いただけ、という事になってます。
そして、いよいよ文治元年(1185年)11月3日、義経一行は京都を出発します。
とにかく、結果的には都落ちであったとしても、少なくとも、この時点での義経自身は、四国と九州を治める気満々での旅立ちだったのです。
義経の名声に数多くの者が従う中には、義経の叔父で、源平合戦の発端ともなった『以仁王の令旨(りょうじ・天皇家の人の命令書)』(4月9日参照>>)を源氏の生き残りに配達してまわった源行家(みなもとのゆきいえ=義経の叔父)もいました。
一行は、陸路を西へ進み、やがて大物の浦(尼崎)から船に乗って四国を目指します。
最初は、船はゆっくりと漕ぎ進み、おだやかな船旅でしたが、播磨の国・書写山が見えだした頃、にわかに異様な黒雲が現れ、強い風が吹きつけてきます。
弁慶が、「あれは、平家の怨霊に違いない」と、黒雲に向かって矢を射掛けたところ、黒雲は消え去り、一旦は穏やかになりましたが、ホッとする間もなく、また嵐が襲ってきました。
今度の風はもっと強く、帆をおろそうとしますが、滑車が凍りついておろせません。
しかたなく、カマなどで、帆をズタズタに切り裂き、なんとか船は転覆をまぬがれますが、なおも続く大きな波にもまれて木の葉のように揺れ動きます。
この船には、義経が都から連れてきた女性が十数人乗っていましたが、都ではあれほど仲が悪かった女たちも、今にも転覆しそうなこの船の中では、お互いに抱き合い、励まし合ったと言います。
もちろん、静御前も・・・。
そのうち、帆柱も中ほどから折れてしまい、舵も壊れて、ますます船は波にもまれ、ともに船出したいくつかの船も、もうどこへ行ったかわからなくなってしまいました。
やがて、一夜が明け、風は静まり、船は、見るも無残な状態にはなりましたが、何とか転覆せずに、陸の近くに漂いつきました。
命からがら陸にあがったものの、船に乗っていた一行には、ここがどこだかわかりません。
家来の片岡八郎が、あたりを調べてみると、古い鳥居が見え、神社には80歳くらいの老人いましたので、その老人に尋ねたところ「ここは、芦屋の里」だと言います。
芦屋の里とは、大物の浦一帯の事をさしていて、つまり昨日船出した同じ場所に帰ってしまっていたのでした。
一行は愕然とします。
船はもう、航海のできる状態ではありませんし、陸には、頼朝配下の追討軍が迫ってきていました。
別の船に乗っていた叔父・行家の所在もつかめないままです。
義経はしかたなく、ここから摂津、大和を越え、吉野へと向かう事になるのですが、先ほどの十数人の女性たち・・・。
平家物語によると、義経は浜辺の松の下ですすり泣くこの女性たちを、ここに置き去りにしたまま、とっとと吉野へ行ってしまうようなのですが、次は、例の静御前との『吉野の別れ』の名場面(11月17日参照>>)が待ってるわけですから、静御前だけは連れてったって事なんでしょうか?・・・ちょっとショック・・・。
結局、この一週間後の11月11日には、かの後白河法皇が、頼朝に対して『義経追討の院宣(天皇家の命令)』を下し、義経は正式に朝廷から追われる賊軍、頼朝は官軍となります。
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