八犬伝の滝沢馬琴、忌日
嘉永元年(1848年)11月6日、あの南総里見八犬伝の著者として有名な滝沢馬琴が亡くなりました。
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この滝沢馬琴(ばきん)さん・・・本名を滝沢興邦(おきくに)さんと言い、ペンネームが曲亭馬琴(きょくていばきん)です。
曲亭は読み方を変えるとくるわと読め、馬琴はまことと読めます。
『くるわ(廓)でまこと(誠)』・・・遊郭で遊びもしないで、真剣に遊女に尽くす・・・という意味で、若い頃の遊びすぎに対する反省の意味が込められているそうな。
ちなみに、滝沢馬琴という呼び方は後世の人が本名とくっつけて勝手にそう呼ぶようになったのであって、ご本人は一度も使った事がないそうです。
馬琴は、江戸・深川の旗本屋敷の用人・滝沢興義(おきよし)の三男として生まれます。
9歳の時に父が亡くなり後を継ぎますが、15歳でそれを捨て放浪生活(早くもニート?)に入ります。
24歳の時に、やっと自分の目標とする物を見つけたのか、人気作家の山東京伝(さんとうきょうでん)の弟子になり、作家としてのスタートを切りました。
その後は驚異的な精力をもって、『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』『月氷奇縁(げつひやうきえん)』などの多くの小説を書きまくります。
中でも有名なのが、文化十一年(1814年)~天保十三年(1842年)の28年の歳月を費やして完成させた98巻の膨大な伝奇小説『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)』です。
しかし馬琴は、この八犬伝の最後のほうを書く頃には、老齢のためか、視力が「昼と夜の違いがやっとわかる」程度まで落ちてしまいます。
息子にも先立たれたため、しかたなく、少しだけ文字を知っている息子の嫁・みちに、めっちゃムズイ漢語だらけのこの原稿を、口述筆記するという無謀な状況で執筆を続けたのです。
そのため「息子の嫁ばかり、そばに近づける~」と奥さんがヤキモチを焼いて、そうとう嫁いびりもキツかったと言いますが、何とか完成して刊行するやいなや大評判となり、明治まで続く大ロングセラーとなるのです。
歌舞伎や浄瑠璃でも花魁莟八総(はなのあにつぼみのやつぶさ)という演目で上演され、今でも、映画やドラマになる人気作品ですよね。
やはり、人気の秘密は、下克上の激しい時代背景、化け猫や妖婦といった特異なキャラクター、水滸伝をベースにした荒唐無稽な設定に、勧善懲悪のヒーロー物・・・ありとあらゆる要素が詰まっている感じでしょうか?
犬と結婚するというとんでもない事になっちゃった伏姫。
その伏姫の死に際に飛び散った八つの玉・・・その玉に導かれて集まる8人の剣士。
八つの玉にはそれぞれ、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字が浮かびあがります。(これは、NHKの人形劇で覚えました)
それぞれの剣士の性格や運命がこの文字の意味と関係がありそうな所もイイですね。
剣士全員の名前に犬の文字がついているという作者の変なこだわりも面白いです。
・・・で気づいてました?
伏姫の伏の字も人+犬。
伏姫を誤って鉄砲で撃ってしまう家臣の金碗大輔(かなまりだいすけ)が出家して名乗る名前がヽ大(ちゅだい)法師。
これもヽ+大で犬の字になるんです。
最近まで気づいてなかったのは、私だけかな?( ̄◆ ̄;)
とにもかくにも、漢語だらけの難しい文なので、私はまだ原文で読んだ事は無いのですが、これが、講談師の語り口のように、けっこう名調子なのだそうで、いつか機会があったら、全部は大変なので、名場面をちょびっと読んでみたいな・・・とは、思ってるんですけどね。
*最期の時の様子は2015年11月6日の【滝沢馬琴の最期~嫁・路の献身】でどうぞ>>
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コメント
お久しぶりです(^o^)/
里見八犬伝て聞いたことあります。なんかブログを読んでてちょっと興味が湧きました。八人の剣士がどーなるのか気になります。(^^)
機会があったら本でもDVDでも見てみようかな!
投稿: 見習い大工 | 2006年11月 6日 (月) 23時31分
見習い大工さん、コメントありがとうございます。
そうですね、今年のお正月ドラマとして放送されたタッキー主演のドラマは、けっこう良かったと思いますよ。
何年か前に、真田広之さんと薬師丸ひろこさん主演の角川映画の作品は、良いとか悪いとかではなく、完全に原作とは別物のオリジナルストーリーになってます。
タッキーの作品には、山田優ちゃんや綾瀬はるかちゃんも出ていて、若いかたが気軽に古典にふれられるって感じです。
投稿: 茶々 | 2006年11月 7日 (火) 01時35分
八犬伝ですが今秋に映画化されますね。なお、「劇中劇」の方式で取り上げられます。
滝沢馬琴役は役所広司さんです。
その滝沢馬琴とほぼ同時代の人物の蔦屋重三郎を、主人公にした来年の大河ドラマ「べらぼう」の撮影が先ごろ始まりました。
「べらぼう」に滝沢馬琴は登場するかな?
今は亡き杉浦日向子さんが健在であれば、番組の時代考察・監修役をぜひしたいと申し出たかもしれないですね。
投稿: えびすこ | 2024年6月27日 (木) 11時53分
えびすこさん、こんばんは~
へぇ~そうなんですね。
楽しみです!
投稿: 茶々 | 2024年6月28日 (金) 04時45分