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2006年11月25日 (土)

福沢諭吉の『学問のすゝめ』刊行

 

明治九年(1876年)11月25日、福沢諭吉『学問のすゝめ』の最終篇・第十七篇を刊行しました。

・・・・・・・・・

福沢諭吉は、天保六年(1835年)に九州の中津藩の下級武士の子供として生まれます。

封建社会の中で生きる父の姿を見ての身分の違いという物の屈辱を味わうのです。

父が早くに亡くなった後、「自分が父と同じ封建社会の中で功名を得るには学問しかない」と感じ、学問の道を志すようになるのです。

22歳の時には、大坂にある緒方洪庵(こうあん)適塾塾長を務めました(6月10日参照>>)

翌年、得意な蘭学のおかげで、江戸にできた蘭学塾の教師に選ばれます。

Fukuzawayukiti600 ここで教育者・福沢諭吉の誕生です。

やがて、27歳の時に幕府の使節の一員として、咸臨丸でアメリカに渡ります(1月13日参照>>)

日本に帰る時、アメリカで購入した1冊の英語辞書を持ち帰りましたが、この辞書を読むのがなかなかたいへん。

英語の難しさを痛感し、「辞書があればなぁ~」と思い、塾の生徒に教えながら、自分も、この辞書に発音と、日本語と中国語の訳をつける作業にとりかかります。

そうやって完成した『増訂華英通語』を刊行。

ここで、本の著者・福沢諭吉の誕生です。

慶応三年(1867年)、諭吉34歳の時に、欧米を見聞した経験を生かし、西欧諸国の政治や社会、学校や病院などの海外事情をつぶさに紹介した『西洋事情』を刊行します。

この本が、誰にでもわかりやすい文章だと大評判!

10万部を越えるベストセラーになり、寺子屋やできたばかりの小学校の教科書としても使用されます。

翌年、諭吉が教師をやっていた塾が新しい場所に移転して、それをきっかけに名前を変更、当時の元号を取って『慶応義塾』となります。

同じ年の慶応四年、いよいよ『学問のすゝめ』初篇が刊行されるのです。

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり、されば天より人を生ずるには、万民は万民皆同じ位にして、生まれながら貴賊上下の差別なく・・・」
という有名な書き出しで始まり、やはりこれも読みやすい文章に軽快な言い回しで、20万部という空前の大ヒットとなるのです。

『学問のすゝめ』の中で諭吉は、個人の解放・自由・平等・独立を主張し、それら抑え続けてきた封建思想を批判します。

ただ、「教育も強制ではなく、自由でなくてはならない」のに、「学問をすすめる」というのは、相反する気もしないではありませんが、とにかく、諭吉は「学問をする事が目的なのではなく、国が独立する事が目的であり、そのために学問する事が必要なのだ」と主張します。

西洋のまねをするのではなく『今、西洋の文明を学ぶ事で、後々に日本の独立(自立)へとつながる』のだそうです。

また、今までの身分制度ではなく、学問の有る無しによって、個人に格差が出てしまう現状も書いています。

そして、明治九年(1876年)11月25日、いよいよ最後の巻となる『学問のすゝめ』最終篇・第十七篇が刊行されるのです。

あまりの売れ行きに海賊版も登場し、百人に一人はこの『学問のすゝめ』を買ったと言います。

確かに、江戸時代からすでに識字率が高かったと言われる日本ですが、これはものすごい売れ行きです。

この『学問のすゝめ』を読んで自由民権に目覚めた人も多く、また義務教育(小学校)などの教育制度に大きな影響を与えたのは言うまでもありません。

そら、お札にもなるっちゅーねん!
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コメント

学生時代に岩波文庫で読んだことがあります。「詩作や文学よりも、今必要なのは読み・書き・そろばんですぞ」と繰り返し主張していた部分が印象に残っています。学生ではありましたが感心することが多かったですね、この本は。

投稿: おおひら | 2006年11月25日 (土) 17時26分

おおひらさん、コメントありがとうございます。

今回、『学問のすゝめ』の事を書くにあたって、本来ならもう一度読み直して書くべきなんですが、時間に追われ、遠い昔の記憶をたよりに書いてしまいました。

>今必要なのは読み・書き・そろばんですぞ

おっしゃる通り、諭吉さんは、実際の生活に必要な学問の重要性を強調していたように思います。

教育改革が叫ばれる今日この頃、もう一度ゆっくり読み直してみたいですね。

投稿: 茶々 | 2006年11月25日 (土) 21時40分

茶々さん、こんばんは!

今日は福沢諭吉が『学問のすゝめ』の最終篇・第十七篇を刊行した日なんですね。
この前の「逃走中」の舞台は明治時代で、諭吉さん大活躍でしたね!
『学問のすゝめ』は一度読んでみたいです。同じくらい『西洋事情』にも興味はありますが。
それにしても、韓国(とアメリカ)と北朝鮮(と中国)の戦争始まりそうですよね…。起こらないことを願いますが!
日本はどのように対応するのか気になります。それにしても、今年は世界情勢激動ですよね。

投稿: 暗離音渡 | 2010年11月25日 (木) 23時18分

暗離音渡さん、こんばんは~

現在の政治家さんにも、この明治の初めの頃の方々のような英断を期待したいですけどね~

大丈夫かな?ww

投稿: 茶々 | 2010年11月26日 (金) 00時50分

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