勝海舟のトラウマ
文政六年(1823年)1月30日は、あの勝海舟さんのお誕生日。
という事で、今日は海舟さんのお話を・・・
・‥…━━━☆
勝海舟は、葛飾本所の勝左衛門太郎惟寅(これとら)・通称=小吉の長男として生まれました。
禄高はわずか四十一石で、典型的な貧乏旗本。
・・・で、小吉さんは、長男・燐太郎(海舟)に、出世の夢を託す事になるのです。
今でいうところの塾通いに始まり、何かとコネを使ってはお城でのイベントなどに参加をさせたりなんぞしていたんです。
そして、燐太郎が7歳の時、親戚のコネでもぐりこんだ“江戸城本丸お庭拝見”パーティ・・・そこで、小吉の努力(?)が実り、燐太郎のイケメンぶりが(ふ~ん、イケメンだったのか~)徳川十二代将軍・家慶の五男・初之丞(後の一橋慶昌)の目にとまり、小姓として、とりたててもらう事に成功しました。
「よし!いける」と、出世の希望を持って、ますます塾通い・・・御殿のお勤めが終ったら塾へ・・・の毎日。
ところが、燐太郎が9歳になったある日のこと、いつものように勤めを終えた後、塾へ向かっている途中、病犬に大事な股間を噛まれてしまうのです。
しかも、笑えないくらい重症です。
小吉が連絡を受けて駆けつけた時には、すでに一人の医者が駆けつけていました。
小吉が「助かりますか?」と、訪ねると、「難しい・・・」という頼りない返事。
小吉は、この医者をすぐにヤブと判断し、自宅に連れて帰って、別の医者を呼んで緊急手術です。
しかし、燐太郎は泣き叫ぶわ、医者の手は奮えるわ・・・で、その光景を見るに見かねた小吉さん、やにわに、刀を抜いて燐太郎の枕元にズブリ!
オヤジの気迫に、燐太郎も泣きやみ、医者も覚悟を決め、傷口の縫合手術は無事成功。
それでも、医者は「命の補償は受けあいかねる」と言います。
その後も、燐太郎は熱に浮かされるわ、家族は泣きちらかすわ、で家中が大騒ぎの中、小吉さんは、燐太郎の熱を下げようと、毎晩、水垢離(みずごり)をして、自分の体を冷やし、裸になって燐太郎を抱いて寝たのです。
小吉さんは昼夜を問わず息子の世話を一人でやって、その様子は近所に人から「子供を犬に噛まれて、アイツはおかしくなった」と、噂されるくらいでした。
実は、小吉さんも14歳の時、崖から転げ落ちたはずみで大事な股間に大怪我をした経験があり、その傷は二年もの間、彼を悩ませたのです。
だからこそ、その苦しさはイタイ程わかっていたんでしょうね。
やがて、必死の看病の甲斐あって、燐太郎は命も助かり、無事、御殿勤めに復帰しますが、燐太郎を気に入ってくれていた慶昌が15歳という若さで亡くなってしまったため、出世の道は閉ざされてしまいました。
後に大出世する海舟ですが、小吉さんは息子の出世した姿を見る事なくこの世を去っています。
ところで、心配だった後遺症ですが、後々海舟さんは四男五女という9人の子供を設けていますから、こちらのほうは大丈夫だったようですね。
出世して有名になっても、海舟さんは「刺客より犬のほうが怖い」と言って、暗闇を歩く時は犬に警戒していた・・・と言いますから、よほどその時の恐怖がトラウマとなっていたんでしょうね。
しかし、もしその時、海舟さんが亡くなっていたら、維新はどうなったんでしょうね。
そう言えば、1月13日に咸臨丸でアメリカに向けて出航した海舟さん(1月13日参照>>)・・・サンフランシスコ入港が3月17日ですから、1月30日頃は海の上、ハワイあたりで、船酔い+下痢と格闘中ってとこですかね。
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コメント
毎日口笛の練習をしているさときちでございます。
曲は何故か「結んで開いて」です。
勝海舟、股間をガブりっ!
これは男としては読んでいるだけで
冷や汗が、、、
よく、チカン撃退法として股間を蹴り上げる、というのがありますが、
同性としては、それはかわいそう、という気もしてしまいます。
悪いヤツだからいいじゃん、という意見もありますが(笑)
ホントにヤバイ!
(関係ないですが、このヤバイという表現も近頃は意味が変ってきていますね、、、)
場合によっては死んでしまいますからね。
私も小学生の頃、犬に太ももを噛まれた経験があります。
大切なところまで10センチぐらいでした。
ああ、命拾いしたな、と本気で思います。
勝さん、子だくさんでよかったよかった。
投稿: さときち | 2007年1月31日 (水) 00時58分
さちきちさん、こんんばんわ~。
>犬に太ももを噛まれた経験があります
そうなんですか・・・危機一髪でしたね。
私は犬に噛まれた経験はありませんが、小学生の時、奈良の鹿にまたがろうとして若草山からころげ落ちた事があります。
よいこはマネしないでね・・・。
投稿: 茶々 | 2007年1月31日 (水) 20時30分
「小さい時に大ケガや大病をした人は、長生きする確率が高い」と聞いた事があります。
勝は上記の事があるので、欧米列強におびえる幕閣を見て、「外国人のどこが怖いんだ?」と感じたでしょう。勝海舟は77歳の天寿を全うしました。弟子の坂本龍馬よりもこの人の方が、人生経験を積んでいる(年上だから当たり前か?)から維新の荒波を乗り越えて、40代以降で存在感を示したんでしょうね。でも、あまり書店で勝海舟の伝記ってないんですよね。
余談ですが、去年の「天地人」で前田慶次郎が出なかった事に、ファンが猛烈な批判をしたらしいです。配役が年配俳優でないといけないので、「ファンのイメージ」のジレンマが影響した様です。慶次郎は「戦国の中年フリーター」みたいな人でしたからね。
投稿: えびすこ | 2010年1月17日 (日) 09時59分
えびすこさん、こんばんは~
この幼い頃の一件が永享しているかどうかはわかりませんが、勝海舟は、ハッタリをかますのがウマイと思います。
ハッタリは、人によっては失敗もありますが、勝さんは良い方向になったようですね。
前田慶次郎は、やはり、他の小説&それを原作にした漫画のイメージが強すぎたんでしょうね。
投稿: 茶々 | 2010年1月17日 (日) 21時28分
龍馬伝では「小さい時に野良犬に襲われた」事になぜか触れなかったですね。龍馬伝では勝海舟の影が薄かったような気がします。いよいよ最終版ですが、もう1回出るかな?
投稿: えびすこ | 2010年11月12日 (金) 08時56分
えびすこさん、こんにちは~
「龍馬伝」に勝海舟が出ていた事すら忘れそうになるくらい影が薄いですね~
もう、出て来ないのかも…
投稿: 茶々 | 2010年11月12日 (金) 13時21分
通りすがりの者です。
私の妹は4歳の時に雑種の成犬にお尻を噛まれそれ以来特に柴犬系統の犬を見ると私を盾にして後ろに震えながら隠れるようになりました。
私自身も犬が苦手なのですが…
近所でも有名になってしまい私たち姉妹が近づく前に近所の犬の飼い主さんはリードを短めにして散歩をしてます。
投稿: hamutaro24 | 2012年8月12日 (日) 01時39分
hamutaro24さん、こんにちは~
そうですね~小さい頃の思い出は、大きくなっても痛烈に残ってますね。
私も、幼稚園の頃、噛まれてはいませんが、自分より大きな犬に追いかけられた事があり、犬は大好きなんですが、あまり近づけないでいます(゚ー゚;
投稿: 茶々 | 2012年8月12日 (日) 13時02分