風林火山・孫子の兵法
『故に、
其の疾(はや)きこと、風の如く
其の徐(しず)かなること、林の如く
侵掠(しんりゃく)すること、火の如く
動かざること、山の如く
知り難きこと、陰(かげ)の如く
動くこと、雷霆(らいてい)の如し。
郷を掠(かす)むるには、衆を分かち
地を廓(ひろ)むるには、利を分かち
権を懸(か)けて動く。
「迂直の計」を先知する者は勝つ。
此れ軍争の法なり。』
ご存知、武田信玄が旗印として使用していた『風林火山』・・・これは、中国は春秋時代の呉の将軍・孫武が書いた兵法書『孫子』の軍争篇の一説を引用した物です。
今日、3月11日(1582年)は武田勝頼さんのご命日・・・
つまり、武田氏が滅亡した日(2012年3月11日参照>>)・・・まだまだ、勝頼さんに関しても書き足りないこと山の如し、なんですが、とりあえず今日は、その旗印のもととなった『孫子』について書いてみたいと思います。
・‥…━━━☆
上記の一説の意味は、
「疾風のように早いかと思えば、林のように静まりかえる、
燃える炎のように攻撃するかと思えば、山のように動かない、
暗闇にかくれたかと思えば、雷のように現れる。
兵士を分散して村を襲い、守りを固めて領地を増やし、
的確な状況判断のもとに行動する。
敵より先に「迂直の計」を使えば勝つ。
これが、合戦の法則だ」
だいたいこんな感じです。
「迂直の計」とは、「迂」=曲がりくねったり、「直」=まっすぐ行ったり・・・わざと遠回りをして油断させておいて電撃的にたたみかける・・・つまり、静と動、陰と陽、飴とムチ、ボケとツッコミ、悟空とベジータ(フュージョンで戦闘力・倍増)・・・とにかく、正攻法と奇襲作戦のような「相反する物を巧みに使え」って事です。
この通り、『孫子』は、とても二千五百年前に書かれた物とは思えない、現代でもバッチリ通用する兵法書です。
「吉だ!」「凶だ!」と、合戦の勝敗を占ってたような時代に、これだけ利に叶った科学的かつ合理的な兵法が存在する事に驚きます。
三国志の曹操も、八幡太郎義家も、もちろん武田信玄・徳川家康といった戦国武将も、そして、あのナポレオンも・・・“不可能”が載ってる辞書は持っていなくても、『孫子』は持っていたんです。
遠い昔の戦いだけではありません。
『孫子』が説く、
「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」
つまり、「情報を集めろ」という事・・・敵の情報も、そして自分自身の事も、調べつくした上で、「勝てる相手とだけ戦え」と言っています。
これは、第二次世界大戦後に開発されたオペレーション・リサーチの考え方・・・現在のビジネスにも通用する思想です。
また、次のようにも語られています。
『百戦百勝は善の善なる物にあらず、戦わずして人の兵を屈するは善の善なる物なり』
「百戦百勝してもエラくない、戦わないで勝つのがベストだ」
そのためには、情報を集めるスパイに最高の待遇を与え、誰よりも大切にしなければならないのです。
まさに、情報戦線です。
しかし、どうしても戦わなければならない時・・・。
いざ、戦うとなると、先ほどの『風林火山』です。
守る時はジ~っと息をひそめて、攻める時は一気にたたみかける。
『始めは処女の如く、後には脱兎の如し』
静と動を使い分けるんですね~。
『孫子』は優れたリーダーについても語ってくれてます。
臨機応変に行動でき、常にバランス感覚を持っている事。
『智者の慮(りょ)は必ず利害に雑(まじ)う』
「利益を考える時は、同時に損失も考慮しなければならない」
目の前にぶら下がったおいしそうな物に、すぐ飛びつくようではリーダーの資格な~し。
食べた時の満足感と、その後の体重増加を、瞬時にして計算できる人でなくてはならないのです。
必死になって一所懸命に頑張る事は、一般的には良い事ですが、リーダーは一つの事に必死になる人ではダメなのです。
必死になると、人は周りが見えなくなります。
リーダーは一つの事にこだわる事なく、広い視野と余裕を持ち、部下たちを必死にさせる人でなくてはならないのだそうです。
『利に合(がっ)して動き、利に合せずして止(や)む』
リーダーたるもの、怒りにまかせて行動を起こしてはなりません。
「状況が有利であったら動き、不利だと見たら中止する」・・・やはり、臨機応変な状況判断が大切なんですね。
リーダーの場合、失敗は部下全員に跳ね返ってきますから・・。
「僕はリーダーの器じゃないから、関係ないや!」と思ったかた・・・これは、リーダーになる人だけが知る事ではなく、リーダーを選ぶ側も知っておいたほうがいい事だと思いますよ。
誰の傘下に入るかで、人生大きく変っちゃう事もありますから・・・。
はてさて、日本のリーダーたちは、臨機応変な状況判断ができる人たちなのかな?
『孫子』には、さらに、「リーダーがやってはいけない事」なんて言うのも書いてありますし、まだまだ現代にも役立つ名言・金言がたくさんなのですが、ページにも限りがある事ですし、今日はこのへんで・・・また別の機会に書かせていただきたいと思います。
それにしても、茶々の高校時代・・・よく当たると評判の手相占い師に「アンタは諸葛孔明の生まれ変りだ」と言われたあの日、有頂天になって『孫子』関係の本を読みあさった日々・・・あれから、○十年・・・どこからも軍師へのお誘いがない・・・大器晩成にも、ほどがある!
今日のイラストは、
やはり『風林火山の旗』をメインに「風雲・急を告げる・・・」といった感じのイメージで書いてみました~。
ブログにupした孫子関係の個々の記事を、本家ホームページで【孫子の兵法・金言集】>>としてまとめています・・・よろしければご覧あれ!(別窓で開きます)
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コメント
茶々さん、こんにちは。
孫子の風林火山は、私も調べてみたのですが、迂直の計までは知りませんでした。勉強になります。
私のブログは必ずしも歴史のことばかりではないのですが、歴史は結構好きです。
投稿: スペードのA | 2007年4月11日 (水) 23時08分
>スペードのA様、こんにちは~
スペードのAのサイトは、旬の話題が豊富なサイトですね。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 茶々 | 2007年4月12日 (木) 00時48分