孫子の兵法2「作戦篇」
今日は、『風林火山・孫子の兵法』の3回目、『作戦篇』を紹介させていただきます。
ネタに困ると登場し、勝手にシリーズ化している感のある『風林火山・孫子の兵法』ですが、大河ドラマで毎周々々、あれだけ「孫子」「孫子」と連呼されれば、つい書きたくなってしまうのです~。
まだ、以前のページを読んでいただいていない方は、そちらから読んでいただけるとうれしいです。
武田信玄の旗のもととなった「風林火山」の一説の意味などは一回めのページで、ドラマで山本勘助がしょっちゅう口にする『兵は詭道なり』の意味はⅡで書いています。
・‥…━━━☆
・・・で、「作戦篇」には、戦争全般に関する方向性や心がけといったような事が書かれています。
『およそ兵を用うるの法は
馳車千駟(ちしゃせんし)、革車千乗(かくしゃせんじょう)、
帯甲(たいこう)十万にて 千里に糧を饋(おく)る
則(すなわち)内外の費・・・』
「だいたい戦争というものは、
戦車千台、輸送車千台、
兵を10万も動員して、千里の遠方に兵糧を送る・・・」
まだまだ、たくさんの例を出して説明してますが、とりあえず「戦争には膨大な費用がかかる」という事を力説してくれています。
負ければ当然ですが、勝ったとしても、国の財政、国力の低下をともなうのが戦争なのです。
長引く戦争で兵士の士気は衰え、経済が悪化すれば、それに乗じて近隣の国から攻められないとも限りません。
・・・ならば、どうしたら良いのでしょうか?
『・・・故に兵は拙速(せっそく)を聞くも、
いまだ巧の久しきを睹(み)ざるなり』
「とにかく早いのは聞くが、長期は知らない」
つまり、「戦争するなら短期決戦ですばやく片付けろ」という事です。
長期戦に持ち込んで成功した例を聞いた事がない・・・と孫子は言います。
そう言えば、日本が経験した中で、長期で泥沼化してしまった第二次世界大戦に比べて、勝利を収めた日露戦争が、短期決戦であったような印象がします。
そして、短期決戦と・・・もう一つ、戦争の費用を抑える意味があります。
孫子では、「戦争で最も出費が多くなるのは、軍需物資の輸送である」としています。
装備は自分の国でまかなうとしても、糧秣(兵糧とまぐさ)や武器弾薬(孫子の時代は主に矢でしょうが・・・)といったいわゆる消耗品の調達にかなりのお金がかかるのです。
国の税収の6割・7割が軍事費に投入されるような事態になると、民衆は不満をかかえますし、後にはさらに税金を上げる・・・という結果にもなります。
『故に智将は務めて敵に食(は)む』
「優れた将軍は、兵糧などを敵地で調達する」
・・・のだそうです。
敵地で調達する物資は、自分の国から運んだ場合の20倍の価値があると言います。
もちろん、これは敵地の民衆から略奪するという意味ではありません。
ちゃんと交渉をして、正等な値段で買い上げるという事です。
ただし、戦いの結果に得た「戦利品」は別です。
いえ、むしろ、敵の軍そのものが持っている武器や兵糧といった物は、どんどん奪って来い!・・・といった感じです。
ですから、たとえば敵の戦車を10台奪って来たような兵士には、まずその手柄を褒め、その功績に見合う恩賞を与える・・・そしてその事は、この「作戦篇」で最も重要なテーマへとつながって行きます。
『敵を殺すものは怒なり。
敵の利を取るものは貨なり』
そのまま、直訳すれば
「敵を殺そうと思うのは怒りの気持ち。
敵の物を奪おうと思うのは恩賞がもらえるから・・・」
という事ですが・・・孫子は兵法書なので、このようなちょっと怖い表現になっていますが、要するに、「やる気を出させるためには、成果に見合った正統で公平な評価をしなければいけない」というビジネスの世界の人事管理に通じる事なのです。
そして、孫子はこう続けます。
『その旌旗(せいき)を更(か)え、
車は雑(まじ)えてこれに乗り、
卒(そつ)は善くしてこれを養う。
これを敵に勝ちて強を益(ま)すという・・・』
先ほど、たとえ話の中で出てきた奪った敵の戦車・・・この奪った戦車も軍旗を自分たちの物に付け替えて、味方の兵に乗り込ませ、次からの戦力とするのです。
そして、捕虜にした敵の兵士は、危害を加えたりせず、むしろ手厚くもてなし、こちらの味方に引き入れるのです。
つまり、兵士そのものも現地調達。
これが、「勝ってさらに強くなる」という事。
まさに、より少ない軍事費で、軍はますます強大になって行くのです。
この理論をちゃんと理解している将軍であれば、その人は信頼に値する人物なのだそうです。
最後に、「作戦篇」で最も重要なことば・・・
『兵は勝つことを貴(たつと)び、久しきを貴ばず』
もう、意味はわかりますよね、「短期決戦をしろ、長期戦はするな」という事です。
以上、今日は作戦篇をご紹介しました。
★続編はコチラ→【孫子の兵法3「謀攻(ぼうこう)篇」】>>
今日のイラストは、
『孫子』を書いたと言われている『孫武』さまで・・・
世界史は、あまり得意ではないのでまったくの想像です。
今まで、おじいちゃんっぽい孫武さんしか見た事がないので、「どうせ想像で書くなら・・・」と、若い男前にしてみました~。
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コメント
カッコいい孫武さまで、憧れてしまいそう・・・
こんなに素敵な絵が入ると 歴史のお話がより
楽しく感じられます。
綺麗な絵に魅せられています。
投稿: m | 2007年4月14日 (土) 10時19分
おお! 若くてカッコいいですね。
私も「おじさん」にしましたから・・。はははは・・。まあ、兵法や軍略など考える人は、それなりの経験と悲惨な前半生などがあったりして、一見ジミなおっさんが多いかも・・などという思い込みかも。
でも、若くなくても、二枚目で陰険な「策士」は、実は・・・けっこう好きです。
投稿: 乱読おばさん | 2007年4月14日 (土) 10時32分
>mさま・・・
ありがとうございます~。
カッコいいと思っていただければウレシイです。
投稿: 茶々 | 2007年4月14日 (土) 15時29分
>乱読おばさん様・・・
孫武さんも、その人生は謎に包まれてますからね~。
>若くなくても、二枚目で陰険な「策士」・・・
年齢はともかく、絵にするなら、やっぱ男前のほうが力が入ります。
投稿: 茶々 | 2007年4月14日 (土) 15時39分