京阪電車の歴史
明治四十三年(1910年)4月15日、京阪電車が運転営業を開始しました。
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このブログをご覧いただいている方の中には、お気づきの方もおられましょうが、私はかなりの「おけいはん(京阪電車に乗る人の事)」です。
京阪電車なしでは、西へも東へも行けません。
利用している・・・というだけでなく、京阪電車のファンでもあります。
関西在住の方はおそらく一度は京阪電車を利用された事がおありでしょうが、遠方で京阪電車の事を、あまりご存知ない方のために、少しご説明させていただきますと・・・京阪電車は、その名の通り京都~大阪間を結ぶ電車。
しかし、大阪駅や京都駅という中心の駅に直結するJRや阪急とは違い、大阪側は経済の中心・淀屋橋駅から、京都側は下鴨神社や御所も近い出町柳駅まで、淀川から鴨川の東岸沿いを行くという独自の路線を走る電車です。
まさに、現代の「三十石船」。
さらに、枝分かれして近江は琵琶湖へと路線が続くかと思えば、平等院で有名な宇治へも行き、飛鳥時代に百済からやって来た渡来人が多く住んだ交野(かたの)・私市(きさいち)へも乗り入れているという歴史好きの私にとっては、もうなくてはならない電車なのです。
そんな京阪電車が始動したのは、明治三十九年(1906年)・・・まずは11月19日に東京商業会議所において京阪電気鉄道株式会社創立総会が開催され、京阪電気鉄道株式会社が設立されました。
その後、電力発電所の建設から車両の注文、運転手の養成・・・などなど、様々な準備を進め、ようやく明治四十三年(1910年)4月15日、天満橋ー五条間で運輸営業開始という日を迎えたのです。
当日、各駅前にはアーチがしつらえられ、紅白の垂れ幕が飾られた駅構内を、豪華絢爛な飾りつけをした美しい花電車が颯爽と通る・・・いや・・・通らなかったんですね~これが・・・。
まず朝の9時頃に、淀ー八幡の間で車軸のメタルが焼けて停車。
続いて11時には野田橋付近で脱線事故発生。
電車が立ち往生する中、停電も発生するという散々なスタート。
新聞にも、『京阪間五時間・遅いことはなはだしい』と書かれ、何事もオーバーに表現する大阪人には、「何ちゅー電車や、歩いた方が速いがな」と言われる始末。
しかも、大阪市電との連絡が未完だったため、その後も、お客は結局は市電を利用して大阪駅へ出てしまうため、客足も思うようにのびませんでした。
しかし、サービス精神旺盛な京阪電車・・・まずは、蒸気船との契約で駅への足を確保。
その後、駅の増設や小児運賃半額、主要駅への待合室の設置などのサービスを始め、沿線では淀川納涼大会や、鵜飼遊覧船などのイベントを開催します。
そこへ、ラッキーな出来事が到来します。
淀川沿岸で行われた陸軍特別大演習に参加された時の皇太子殿下(後の大正天皇)が、毎日のように京阪電車を利用・・・しかもその間、事故がゼロだったところから、創業当時の汚名を一気に返上する事ができました。
しかも、その年、香里園で開催された「菊人形」が大評判を呼び、京都や大阪からお客が殺到するのです。
さらに、営業が順調になる中、支線の宇治線を増設した直後、明治天皇が崩御され、その御陵が伏見桃山城跡に決定し、御陵への参拝客が殺到する事となります。
やがて、五条ー三条間の路線を延長した途端、大正御大典で御所や二条城が一般公開され、またもや長蛇の列ができるほどの大盛況。
京阪電車・黄金時代を迎える事になります。
しかし、さすがの京阪電車も第二次世界大戦では、政府の方針で阪神・阪急電車と合併したりなどの紆余曲折の道を余儀なくされます。
そして、戦後はどこの私鉄も経験したように、1からの復興・・・という形になるのです。
そんな京阪電車・・・大正三年に日本初の急行電車を走らせたのをかわきりに、やはり日本初の超特急、関西初のテレビカーと、時代の先端をひた走っています。
現在のダブルデッカー(2階建て車両)も、今や京阪電車の名物で、2階からの景色は実に快適です。
しかも、そんな快適な特急に特急券無しで乗れるのもうれしい。
世界最長級の複々線を持つ路線は、特急・急行と普通電車との連絡もハンパなくスゴイです。
以前、某私鉄沿線にある友人宅に行くのに、路線図を見ながら「フンフン・・・ここで急行から普通に乗り換えて○○分くらいやな・・・」と思って、家を出たところ、平日の昼間という事もあってか、急行と普通の乗り換えに20分も待たされ、おおいに予定が狂った事がありました。
京阪は、特急や急行が駅に到着すると、すでに反対側で普通電車が待ってる状態・・・たとえラッシュの時間帯でなくても、乗り換えに時間がかかった事など一度もありません。
とても、スムーズです。
さらに、京阪沿線は、「大助・花子」「ますだおかだ」「中川家」「雨あがり」「FUZIWARA」・・・など、お笑いのレベルも高い。
遠方に住んでいて、まだ一度も京阪電車に乗った事がないかた・・・今度、関西に来られた時は、是非、京都ー大阪間を京阪電車で移動してみて下さい。
1両につき数組の素人漫才を見る事ができるでしょう。
また、特急に乗れば、気にしてないふりをしながら、さりげなく補助席をキープし続けるという「匠のワザ」を目の当たりにする事もできます。
ただし、京阪利用者の9割は枚方市民・・・とのもっぱらの噂ですので、「枚方」と書いて「ひらかた」と読む事だけは覚えておいてくださいね。
場所は、樟葉ー橋本間にある『戊辰戦争(鳥羽・伏見の戦い)橋本砲台場跡』です。
沿線には、電車のよく見える場所や、美しい景色の名所は多々ありますが、個人的にはこの場所が一番好きです。(くわしい場所や地図は本家HPでどうぞ>>>)
砲台場跡の石碑の向こうには桜並木があり、その向こうに京阪電車が見えます。
電車が走る場所が少し高くなっているので、この場所から川は見えないのですが、線路の向こうには淀川が流れ、対岸には天王山が見えます。
戊辰戦争と山崎の合戦・・・日本を揺るがした2度の天下分け目の戦いの場所を、颯爽と走る京阪電車の勇姿・・・。
イラストに関しましては、鉄道ファンの方から見れば「1両めに2階建てはない」「窓の数が違う」「パンタグラフがおかしい」など、数々の指摘がございましょうが、絵として見てわかりやすいように、変えましたので、そこのところは広いお心でご覧くださいませ。
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コメント
茶々さん、こんばんは!
京阪宇治線利用者の御堂です(笑)
昔は宇治発三条行がたくさんあったのに、今や8時台の1本だけ!宇治から乗って、一眠りできる…のが良かったのに…
今や宇治の玄関口は京阪側(旧宇治郡)から川向こうのJR側(旧久世郡)に取って代わられちゃいましたよ(観光案内所もJR側に移設しちゃいましたからねぇー)
さて、本文中にもありましたように明治天皇の御陵=桃山御陵ですが、現在では「桃山御陵」って名前だけを聞くとやっぱり近鉄を浮かべちゃいますよね。
ところが、京阪宇治線に御陵駅ってのがありました。その駅を降りて、正面にあたる大鳥居をくぐって参拝するのが一般的なコースだったようです。
戦後、あの辺りに工場が建ち、その従業員たち向けに団地が建ち始めます。
そうなってくると、御陵駅も桃山御陵への参拝客から団地に住む人たちへと客層も変化を見せ、ついには「桃山南口」と駅名が変わったそうですよ!
投稿: 御堂 | 2007年4月15日 (日) 19時42分
おおお!
おけいはんでしたか!
京阪に乗らないで生活のできる私ですが、阪急に乗らないでは生活できないヒトなので、TOKK(宝塚・大坂・京都・神戸)人ですが、阪急は今年の10月19日に創立100周年ですので、3年ばかしお姉さんですね・・。実は私も、けっこう阪急にはイレコミがありまして・・などと、ここで阪急の歴史は語りませんが、地域の鉄道を愛する心意気・・なんだか嬉しいです。
投稿: 乱読おばさん | 2007年4月15日 (日) 21時35分
>御堂さま・・・こんばんは~。
宇治線のかたでしたか・・・。
やっぱ、三条への直行便が少なくなったのは、K特急が中書島に止まるからでしょうか?
K特急が停車する・・・というのは、まことにうらやましいですね・・・
>「桃山南口」と駅名が変わった・・・
なるほど、私も御陵に参拝した時、伏見桃山駅から行きましたが、そのお話を聞いて、もう一度地図を見直してみると、ホント桃山南口が一番近いんですね~。
あそこが、御陵参拝のための駅だったんですね・・・。
投稿: 茶々 | 2007年4月15日 (日) 22時05分
>乱読おばさん様・・・こんばんは~。
わぁ・・・阪急沿線でしたか・・・。
「おけいはん」から見ると、阪急沿線は何かちょっとセレブな感じ・・・
「タカラヅカ」のイメージもあいまって、とてもお上品なおばさまがたを想像してしまいました~
なるほど・・・だから虎ファンなのですね
投稿: 茶々 | 2007年4月15日 (日) 22時11分
茶々様こんにちは~
いや~、いつかきっと関西巡りの旅をして、京阪電鉄利用したいと思いました~!
ではまた
投稿: ダルタパオ~ン | 2013年4月15日 (月) 13時31分
ダルタパオ~ンさん、こんばんは~
是非、京阪電車に乗ってみてください!
投稿: 茶々 | 2013年4月16日 (火) 00時11分