備中高松城・水攻め
天正十年(1582年)4月27日、織田信長の命を受けて、中国地方の攻略を進めていた羽柴秀吉が、備中高松城を攻撃しました。
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天下目前の織田信長・・・天正十年(1582年)の3月に甲斐の武田を滅亡させ(3月11日参照>>)、いよいよ残る強敵は中国地方のみとなってきます。
その頃、信長の命を受け中国地方の平定にあたっていた羽柴(豊臣)秀吉は、天正八年(1580年)に播磨・三木城を(3月29日参照>>)、翌・九年(1581年)に稲葉・鳥取城を落とし(7月12日参照>>)、いよいよ、この天正十年(1582年)の4月に備中(岡山県・西部)までたどり着きます。
途中、備前・岡山城主・宇喜多直家(うきたなおいえ)が味方に加わり(10月30日参照>>)、士気上がる秀吉軍は高松城に狙いを定め、この天正十年(1582年)4月27日に包囲を完了・・・総攻撃を開始したのです。
しかし、高松城では勇将・清水宗治が難攻不落の籠城作戦。
・・・なので、守りは固く、多数の犠牲を払いながらも、城を落とせないため、「力技はムリ」と判断した秀吉は、先の三木城や鳥取城と同じように、長期戦に持ち込んで落とす作戦に変更します。
そして、5月に入ってまもなくの7日、堤防の構築を始めたのです。
この高松城は、足守川と沼沢池の広い湿地帯に囲まれた自然の要害・・・そのぶん、土地も低い上に、季節は今まさに梅雨に入ろうとしています。
「堤防を築き、水の出口を無くせば、足守川の流れと雨水が一緒になって、あたりは人口の湖になるに違いない」
案の定、梅雨に入って雨が降り出すと、またたく間に城は湖中に孤立状態になってしまいました。
その頃には、吉川元春(毛利元就の次男)・小早川隆景(同じく元就の三男)といった武将たちが毛利から援軍として駆けつけて来ますが、湖中に沈んだ城を目の前にして、もはや、なす術がありません。
しかたなく、毛利方は、交渉人・安国寺恵瓊(えけい)を秀吉側に派遣して講和の交渉にあたりますが、これがなかなかうまくいかない・・・。
そんなこんなの6月3日の夕方・・・神は秀吉に味方したのでしょうか・・・
前日、本能寺で信長を自刃に追い込んだ明智光秀(6月2日参照>>)が、毛利方の隆景に送った密書を持った使いの者が、道を間違えて秀吉の陣に迷い込み、ウロウロしているところを見つけられてしまいます。
密書を見て主君の死を知った秀吉・・・気が動転して泣き叫ぶ秀吉の前に、ニンマリと笑いながら近づく腹心・黒田官兵衛・・・
「どうすんの?これから・・・。うまくやらなきゃね」
一刻も早く畿内へ立ちかえり、織田家内で株を挙げる絶好のチャンスを逃がしてはならないとばかりに進言します。
まずは、「信長死す」の情報が毛利方に伝わらないように街道を封鎖し、その間に講和の条件として、「城主・清水宗治の自刃と備中・美作(岡山県東北部)・伯耆規(ほうき・鳥取県西部)を譲る事」というのを提出しました。
兵糧も底を突き、もはや落城寸前だった高松城を目の当たりにしていた毛利側は、あっさりとその条件を受け入れ、翌日の6月4日には、湖上に浮かべられた小舟の上で宗治は自刃して果てます(6月4日参照>>)。
その様子を、はやる気持ちを抑えながら見つめる秀吉・・・しかし、まだ毛利軍の撤退をその目で確認するまでは、その場を動けません。
そんな時、やっとここで、毛利方は「信長死す」の情報を知るのです。
「そんなん詐欺やんけ!」と、怒り狂った次男の元春は、帰る準備の秀吉軍に総攻撃をかけようとしますが、逆に弟に、「兄ちゃん、書面に署名捺印した以上、書類は正等で、講和は成立や!それを破ったらこっちが不利になるがな」と、さとされ、しかたなく陣を解き、軍を引き揚げはじめました。
毛利軍の撤退を確認した秀吉・・・もう、待ってはいられません。
織田家一番の家臣・柴田勝家よりも、同盟者の徳川家康よりも、先に主君の仇を討てたなければ・・・。
念のため、高松城外に浅野長政(秀吉の義弟)を、岡山城に宇喜多秀家を配置して、いよいよ京を目指して猛スピードで進軍を開始します。
これが、世に言う秀吉の『中国大返し』なのですが・・・ここから先のお話は6月6日の【秀吉の大バクチ・中国大返し】でどうぞ>>
今日のイラストは、
やはり『備中高松城・水攻め』という事で、湖上に孤立する高松城を・・・
地図を見てみますと、人工の湖を囲むように秀吉軍が陣取り、秀吉・本陣と秀長が湖の南東に陣を敷いています。
毛利軍はその西側と南西側の位置に陣を敷いています。
確かに、京都から来たら、かなり迂回しないと先に秀吉軍にぶつかっちゃうって感じがします~。
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コメント
来年のテレビ東京系新春時代劇SPの主人公が、黒田官兵衛に決まったようです。演じるのは高橋克典さんです。本音を言うと今年の大河ドラマの坂本龍馬の方を、ぜひ演じてほしかったんです。風貌が似ているので雰囲気が合うかなと。少なからず同意見の人がいると思うんです。でも年齢の兼ね合いで候補にならなかった?
最近は「大将の参謀役」が注目を集めていますね。
投稿: えびすこ | 2010年7月28日 (水) 17時06分
えびすこさん、こんにちは~
黒田官兵衛…なにやら、描く年代が長くなりそうで、役者さんの腕の見せ所ですね。
楽しみです。
投稿: 茶々 | 2010年7月28日 (水) 17時59分