本当はオトナの一寸法師
今日はおとぎ話についてお話させていただきます。
一寸法師という昔話・・・かなり有名なお話なので、皆さんもよくご存知じでしょうが、背丈が一寸(3㎝)の小さなヒーロー。
・‥…━━━☆
一般的なお話では・・・
子供のいない老夫婦が神様に願って生まれた子供・・・一寸法師が、立身出世を願って京の都へ行って貴族に仕えていたところ、ある日、お姫様のお寺参りのお供の時に鬼が現れ、姫を襲います。
小さい一寸法師が、大きな鬼の口から腹の中に入って、中から針で猛攻撃!
降参した鬼が置いていった「打ち出の小槌(こづち)」を振ると、一寸法師の体はぐんぐん大きくなってりっぱな若者になり、お姫様の婿になる・・・というお話です。
付け加えますと、老夫婦が「子供が欲しい」と願った神様は住吉大社。
法師は、お椀の舟に箸の櫂(かい)そして、針の刀を持って大阪から淀川をさかのぼり、伏見から上陸し京の都に向かう・・・という設定になっています。
これは、「御伽草子」にある一寸法師のお話を子供向けの「おとぎ話」にした物。
そもそも、この「おとぎ話」というのがクセ者です。
「おとぎ」とは「御伽」・・・つまり、夜、寝床に一緒にいてお相手をする事です。
戦国時代の大名には、そのそばに仕え、夜な夜な主君の話し相手を務める「御伽衆」と呼ばれる人たちがいて、最近の出来事や、昔からの言い伝えなどを物語風に話して聞かせたのです。
それが、御伽衆が語った「御伽話」としてまとまって行き、江戸時代に「御伽草子」として確立されるのです。
つまり、中東の「千夜一夜物語=アラビアンナイト」と同じです。
アラビアンナイトがそうであるように、この「御伽話」も本来は、完全に大人向けのお話・・・一寸法師も、今のような勧善懲悪のヒーロー物語ではなかったのです。
「御伽草子」の一寸法師は・・・
老夫婦(・・・と言っても、40歳過ぎですが…)の間に生まれた一寸法師が、12~3歳になっても、まったく背が伸びない事を両親が不思議にの思い「あの子は化物の子供かもしれない」「どこかへ捨ててしまおう」と、夜中にこっそり相談しているのを彼は立ち聞きしてしまいます。
親にそんな風に思われている事を知った以上、「こんな家にいてられるか!出ていったる!」と彼は家出を決意!
もう、すでに、このへんからダーティなイメージ。
仮面ライダー1号かデビルマンのような、私好みの暗い過去を持つヒーローの誕生です。
京に上った一寸法師はその風貌から三条の宰相という貴族に気に入られます・・・と言っても、おそらくはペット扱い、もしくは物めずらしさからだったと思われますが、今のところはそのコンプレックスを逆手に利用するしかありません。
ところが、その宰相には、13歳になる美しい姫がいて、彼は彼女に一目惚れ・・・「何とか、この女をモノにしたい」と考えます。
そして、ある夜、祈祷などに使用する神聖な米を用意して、姫の寝室に侵入し、ぐっすり眠っている姫の口元にその特別な米を何つぶかくっつけました。
そして、翌朝、「姫が神聖な神の米を盗んで食べた」と宰相に訴えたのです。
当時の神仏に対する恐れというのは、今とは比べ物になりませんから、当然宰相は「神の物に手をつけるとは、何という娘だ!」と激怒して、姫を即座に勘当してしまいます。
わけもわからず、泣く泣く屋敷を出る姫・・・。
「してやったり」と一寸法師は、大阪で姫と結婚しようと、ともに舟に乗り込みますが、途中で嵐に遭い、見た事もない島にたどり着いてしまいます。
そこが、鬼の住む島で、姫を奪おうとした鬼を例のごとく退治して、「打ち出の小槌」で・・・という、皆さんご存知のめでたしめでたし・・・となるわけです。
ところで、この御伽草子の「一寸法師」自体も、もちろん作り話でしょうが、その端々に、そのもととなった真実が見え隠れしているのです。
まず、最初に「一寸法師」という名前・・・。
本来、「子供に見える」という事ならば、「一寸童子」と呼ばれてもよさそうなのに、あえて「法師」。
「法師」とはお坊さんの呼び方ですよね。
昔話の絵本では、侍のような姿で描かれている一寸法師ですが、この「法師」という呼び方でわかる通り、彼は侍ではなく、「法師」の類に入れられる職業だったのです。
しかし、お寺で修行した話は出てきませんから、お坊さんではなく、祈祷師、あるいは陰陽師・・・といったたぐいの職業ではないでしょうか。
当時は、こういった人たちも法師の仲間でした。
そうすれば、彼が祈祷に使う神聖な米を持っていた事もうなずけます。
そして、プラス、彼は鍼灸師でもあったのではないか?という事も感じられます。
それは、彼の持っていた刀がわりの針です。
これが、いわゆる縫い針ではなく、鍼灸に使う針だったかも・・・
この時代、原因不明の病気は何か悪い物が体に入って起こると考えられていて、そういう場合は僧侶と祈祷師と陰陽師と医者・鍼灸師が、セットになって治療にあたるというのが普通でした。
その原因のわからない悪い物を鬼と表現する事も、周知の通りです。
つまり、この一寸法師の物語は、無名の陰陽師が、その祈祷と鍼灸の技術で、有力な貴族の姫を病気から救った事によって名声を得た話が、徐々に変化した物ではないかと思えるのです。
きっと私たちが想像する以上に、一寸法師はオトナだったんでしょうね。
今日のイラストは、
きしょくわるさ満載の『一寸法師』で・・・。
ダーティなヒーローにはそそられます~。
小さいほうのイラストは、昔話っぽくかわいく書いてみました~。
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コメント
こんにちわ~♪
このイラスト、気色悪くもなんともないですよ~♪
白髪は「蟲師」を思わせるし、なかなかの美少年〔少年の域を出ているかもしれませんが)ではありませんか。素敵ですよ~♪
こういう展開ではなんだか妄想がわきますねえ。ちょっとダークな白髪の少年陰陽師・・みたいなイメージで絵を描きたい気分になります。そそられます。
なんだかとっても刺激を受ける絵柄ですよ。姫の寝姿の位置関係によってはかなりエロチックにもできるし・・描線の和風処理がヤマモトタカトばりで・・・・うわ~・・一人で妄想しています!
投稿: 乱読おばさん | 2007年4月 5日 (木) 15時20分
ワァ~ッ!おばさまに褒めていただけるなんて、ウレシイです~。
最初はもっと接近してたんですが、あまりにエロい雰囲気になってしまい、二人を引き離しましたww・・・。
ダーティなヒーローは大好きなもので・・・。
投稿: 茶々 | 2007年4月 5日 (木) 19時23分