孫子の兵法8「九変篇」
今日は、『風林火山・孫子の兵法』・・・今回は『九変篇』を紹介させていただきます。
・‥…━━━☆
『将、九変の利に通ずれば、兵を用うるを知る。
将、九変の利に通ぜざれば、地形を知るといえども、地の利を得ること能(あた)わず・・・』
「九変の効果を知っている将軍だけが、軍を率いる資格がある。
九変を駆使できなければその土地を知っていても地の利を得る事はできない。」
そんなに大事な「九変」とは・・・「その時々に応じて形を変える」という意味です。
言い換えれば臨機応変という事・・・。
孫子の中では色々な原則が語られます。
その原則を充分に心得ておいて、臨機応変に応用する事が重要なのです。
その原則は・・・
『・・・圮(ひ)地には舎(やど)ることなく、
衢(く)地には交わり合し、
絶(ぜつ)地には留(とど)まることなく、
囲(い)地には則ち謀り、
死地には則ち戦う』
「“圮地=行軍のし難い場所”には駐屯せず、
“衢地=諸外国の勢力がうまく保たれている場所”では外交交渉を充実させ、
“絶地=敵の領内真っ只中”には長く留まらず、
“囲地=囲まれたら”策略を使って脱出を図り、
“死地=危機”ならば戦うのみ」
という事です。
そして、それを臨機応変に別の視点から見てみると・・・
『塗(みち)に由(ゆ)ざらる所あり。
軍に撃たざる所あり。
城に攻めざる所あり。
地に争わざる所あり。
君に受けざる所あり』
「道には行ってはいけない道もある。
敵には攻撃してはいけない敵もある。
城には攻めてはいけない城もある。
土地には奪ってはならない土地もある。
君主の命令には従ってはいけない命令もある」
と、いう事になるのだそうです。
う~ん・・・臨機応変って難しい・・・。
また、多方面から考える事・・・「トータル・シンク」も重要だと語っています。
『智者の慮は必ず利害に雑(まじ)う。』
「デキル人は必ず利と害の両方を考える」
利益を考える時にはそれに伴う損失の事も考え、逆に損失した時はそれによる利益もしっかりと考えなくてはならないのです。
また、これは自分のところばかりではありません。
敵を降伏させるためには損害を与え、味方に抱き込むためには利益与える。
自分の利害とともに敵の利害も考えておかなくては勝てません。
そこをしっかりと押さえていれば・・・
『・・・その来たらざるを恃(たの)むることなく、吾の以って待つ有ることを恃むるなり』
「敵が攻撃してこない事を願うのではなく、敵がしてこないようにコチラ側が仕向ける」
という事ができるのです。
たとえば、敵が「これは無理だ」と思うような強固な守りを固めたりしておけば、決して攻撃される事はないのです。
そして、最後に、将軍が過ちを犯す危険=間違い例として『五危(ごき)』という5つを示してくれています。
『将に五危有り。
必死は殺さるべきなり。
必生は虜(とりこ)にさるべきなり。
忿速(ふんそく)は侮(あなど)らるべきものなり。
廉潔(れんけつ)は辱(はずか)しめらるべきなり。
愛民は煩(わずら)わさるべきなり』
「将軍には5つの危険がある。
必死な者は殺される。
生きようとする者は捕虜になる。
怒りっぽい者は軽視される。
まじめな者は策にハメられる。
民衆の事を考え過ぎると精神的に参ってしまう。」
こんな将軍は必ず負け戦をしてしまうそうですので気をつけなければいけません。
上記の5つは、3番目の「怒りっぽい」以外は、ある意味必要な要素であり、どちらかと言うと良い事である場合が多いのです。
戦うのなら、死を恐れず立ち向かっていかなくてはいけませんし、命を大事に考え撤退をする事も重要です。
まじめや民衆の事を考えるに至っては、「そうじゃなかったらむしろ困る」といった事柄です。
しかし、何事もバランス感覚が大事・・・わかりやすく言うと、「まじめ」なのは結構ですが、「くそまじめ」では困るという事です。
こだわり過ぎると、逆にそれが弱点となるのです。
将軍に求められるのは、広く浅く・・・総合的に判断する能力であって、一つの事に集中して力を注ぐ事はかえってマイナスになる・・・という事を教えてくれているのです。
これは、戦時下における将軍だけに限らず、企業のリーダーにも重要な事ではないでしょうか。
以上、今日は『九変篇』をご紹介させていただきました~。
・・・・・・
★続編はコチラ→『風林火山・孫子の兵法9行軍篇』>>
ブログにupした個々の記事を、本家ホームページで【孫子の兵法・金言集】>>としてまとめています・・・よろしければご覧あれ!(別窓で開きます)
.
「 風林火山・孫子の兵法」カテゴリの記事
- 風林火山~孫子兵法・全十三章:目次(2007.12.28)
- 孫子の兵法・最終章「用間篇」(2007.10.16)
- 孫子の兵法12「火攻篇」(2007.07.31)
- 孫子の兵法11「九地篇」(2007.07.17)
- 孫子の兵法10「地形篇」(2007.07.01)
コメント