江戸の媚薬・イモリの黒焼き
今日5月1日は、『源氏物語』の中で、ある女性から光源氏に「扇」をプレゼントした事から、「こ(5)い(1)」の語呂合わせで、『扇の日』という記念日なのだそうです。
何か、「風が吹いたら桶屋が儲かる」みたいな発想・・・て感じが、なきにしもあらずですが、まぁ、記念日作っても誰が損をするわけでもないですし、それはそれで結構な事です。
・・・で、せっかくなら、こちらも「風が吹いたら桶屋が儲かる」的な発想をさせていただく事にして、「恋」のお話・・・から、江戸時代に流行した「恋ぐすり」のお話をやらかしてみたいと思います。
・・・・・・・・・
江戸は文化・文政の時代(1804年~1829年)・・・この頃は、『東海道中膝栗毛』や『南総里見八犬伝』など文学の発達からも読み取れるように、特筆するような大乱もなく、人々はおおむね平和な生活を送っていました。
明日の生き死にの心配がなくなると、いつの時代も人間の興味は同じ・・・おしゃれと恋愛にうつつをぬかすようになるんですね~。
女性がおしゃれや恋愛に興味を持つのは、だいたい想像できますが、江戸時代のオトコノコも今と変らずやっぱり、おしゃれや恋愛に興味を持っていたっていうのは、少し意外な感じがもしますが、すでにこの頃には、男性向けのファッション誌も登場し、ヘアスタイルや着物・帯まで、今時のモテ男ファッションを紹介しています。
当時、「艶書(えんしょ)」と呼ばれたラブレターのマニュアル本などには、恋文の書き方はもちろん、人知れず渡す方法や、周りに人がいて読みづらい時の裏ワザ・・・さらに、ご親切にも、うまくいった時の「夜のテクニック集」のおまけつきで、もう、いたれりつくせりって感じです~。
そして、いよいよ登場するのが「恋ぐすり」・・・媚薬というヤツですな。
何と言っても、江戸・両国にある「四つ目屋」という薬屋の「長命丸」が大流行!
とは言え、当時は「長命丸は日が暮れて買う」というフレーズが流行ったと言いますから、さすがに、真昼間から堂々と購入する物ではなかったようで、もちろん、店側も、そこんところはちゃんと解っていて、店先を暗くしたり、店員と顔を合わさず買えるよう工夫されていたと言いますから、なんか、店の前ではなく、横っちょに隠れるように置いてある「アレ」の自動販売機のようで、笑っちゃいます。
・・・で、その用法は・・・
「事を行わんとする2時間前、口中にふくみてよく噛みくだき、唾にてときて、よく塗るべし・・・」
つまり塗り薬ですね・・・塗る場所はご想像におまかせしますが・・・。
2時間前って・・・
なんか、タイミング計るの難しそうだな・・・(^-^;。
そもそも、君ら男子は、2時間で女の子をそのシチュエーションに誘いこめるかどうかの自信はあるのか?
とは言え、さすがにその効能は・・・
「鼻息で、その効能書きをふき飛ばし・・・」
「もがくこと神(しん)のごとし・・・」なのだそうです。
なんか、スゴそうです・・・。
しかも、この長命丸・・・
『江戸買物案内』なる文献には、
「諸国御文通にて御注文の節は箱入封付きにいたし差し上げ申すべく候。飛脚便りにても早速御届け申上ぐべく候」とあり、
なんと!全国ネットの通販まで・・・さすがに金利・手数料は負担してくれないだろうけど、ジャ●ネットも真っ青の、まさに飛脚便!!!
・・・と、これは、媚薬と言っても「刺激剤」のような薬ですが、もう一つ大流行した物に「イモリの黒焼き」というのがありました。
こちらは、正真正銘の「恋ぐすり」・・・いわゆる「惚れ薬」という物です。
これは、飲んだり塗ったりする薬ではなくて、粉にして相手にふりかけるのだそうです。
すると、「自分の事を好きになってくれる」というので、どちらかと言えば、フェロモン満載の香水?って事になりますかしら。
にわかには信じがたい話ですが、長年培われた生活の知恵というのは、意外と現代科学にあてはまる物も数多くあり、あなどれないのも確かです。
その製法は、
「雄と雌のつがいのイモリを、青竹を切った物の両方から入れる・・・すると竹の節に邪魔されてつがいの恋人同士は会えません。
・・・で、そのまま竹ごと黒焼きにする」
というのです。
「恋しいのに会えない」というイモリの思いが効果となって現れる・・・というのですが、もちろん、自分で作るわけではありません。
これもちゃんと粉にした物が、漢方薬として薬屋さんに売ってるんです。
はたして、効果があるのかないのか・・・今の「ラッキーカラー」とか「ラッキーアイテム」とかっていうのと変らない気がするんですけどね。
気の持ちようってヤツですかね。
最後に一つ・・・当時流行の川柳を・・・
♪惚れにくい 顔が来て買う 惚れ薬♪
ハハハ・・・まるで、「サラリーマン川柳」のようです。
いつの時代も変らないなぁ~。
今日のイラストは、
ハートをあしらって『いろいろな愛のカタチ』を表現してみました~。
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コメント
茶々さん、こんばんは~お久しぶりです! お元気ですか?
私は連休なしで勤務しており(汗)元気です??(笑)。
なかなかオジャマできないうちに沢山の楽しい記事が満載していますね~さすがです!
「イモリの~」はアニメ「千と千尋の~」でも似たようなモノが登場していましたし、何かしら効力があったのでしょうね。
これからも楽しく勉強させていただきます、それではまた♪
投稿: ルーシー | 2007年5月 1日 (火) 23時13分
ルーシーさん、お久しぶりです。
連休中もお仕事ですか・・・大変ですね。
そうですか・・・「千と千尋」で、・・・先日「福祉の歴史」で書いたお風呂のシーンはよく覚えてるんですが、「イモリの黒焼き」は忘れてました~
もう一度見てみます・・・
投稿: 茶々 | 2007年5月 2日 (水) 01時12分
茶々様お久しぶりです
両国にそんな話があったとは初耳です。
いや~いつも面白いですね。
ではまた
投稿: 達田にゃん | 2013年5月 1日 (水) 05時20分
達田にゃんさん、こんにちは~
なんか、現代の若者と変わらない気がして…おもしろいですね。
投稿: 茶々 | 2013年5月 1日 (水) 12時46分