軍師のお仕事・出陣の儀式
先日(5月20日)の大河ドラマ・風林火山は「軍師誕生」という回でした。
「山本勘助を軍師に致す!」
と亀治郎さん演じる晴信が、たからかに宣言し、勘助をサラッピンの陣羽織が“つば”でベチャベチャになるほど感動させたかと思えば、その後、ふたりっきりになった時には、「愛人・由布姫の心を読めなければ軍師はクビだ」と、パワーハラスメント気味なセリフをのたまわれ、あまつさえ「“しとね”の時には、あんなに心を開くのに、コトが終れば別人のように・・・」と、ゴールデンのNHKとしてはギリギリのご発言。
女心が読み取れなくては軍師失格なのか?
両津勘吉バリの一本眉の由布姫は由布姫で、「心はそなたに・・・」と、勘助に告ってるの?とも思える意味ありげな態度・・・私としては、合戦や策略を張り巡らすようなシーンが好きですが、「これはこれでおもしろいかも・・・」といった感じの回でした。
ところで、そもそも「軍師のお仕事」というのはどんな物なんでしょうか?
・‥…━━━☆
「合戦前の軍儀に出席して、意見を聞きたい」とドラマの中でも言っていましたが、そういう感じで「専門家として意見を述べる・・・あるいは計略などの作戦をたててアドバイスする」
ドラマを見ているほとんどの皆さんが、こういった『作戦参謀』のようなお仕事だと思っておられるでしょう。
私もそう思ってます。
もちろん、それはそれであっているのですが・・・ただ、実は作戦を練ったりするのは、一番重要なお仕事ではなく、あくまで2番目のお仕事なんです。
軍師のお仕事の中で一番重要なお仕事は、『戦勝祈願』・・・つまり、祈祷したり占ったりという仕事なのです。
力と力、作戦と作戦がぶつかり合う合戦の場で、「まず、神だのみかよ!」って思いますが、戦国時代はまだまだ、開戦の日や、「どの方角から攻める」などといった事を、星占いや易で決めていたんですね~。
今、朝のニュースの合間々々に流れる「今日の運勢・星占い」も、現代の企業戦士にとっては、気になるところかも知れませんし、考えてみれば、スポーツ選手などの場合、技術面とともに精神面でもバックアアップするのがコーチ・監督の役目だとすれば、軍事作戦と占いを同じ人物がこなすのも、不思議ではないのかも知れません。
とにかく、いかつい戦国武将が意外と「今日の○○座のラッキーカラーは?・・・」なんていうのをを気にしてたかと思うと、ほほえましい気もしますしね。
ですから、軍師は、例の『孫子』はもちろん、『六韜(りくとう)』や『三略(さんりゃく)』といった兵法書に通じていなければならないと同時に、占星術や易学・陰陽道といったものも熟知していなければならなかったんです。
いや、むしろ実際には、同時というより、宗教的な側面のほうがより重視されていました。
あくまで、祈祷・儀式が最優先です。
ですから、合戦の前後に行われる様々な宗教的儀式を仕切るのも軍師の仕事です。
特に、戦に向かう前の出陣の儀式は重要です。
「勝負は時の運」・・・今でも、この言葉が使われるくらい、実力だけでは片付けられないのが勝負の世界ですから、戦国時代の武将にとって、『縁起かつぎ』の儀式は欠かせない物でした。
ます、出陣の儀式という物の中で一番有名なのは、『三献(さんこん)の儀式』と呼ばれる物です。
これは、大将が出陣の時に、「打鮑(うちあわび)」「勝栗(かちぐり)」「昆布」の三品を口にして出陣していく・・・というものです。
「討(打)って、勝って、喜ぶ(こぶ)」
おせち料理の言われとよく似た「語呂合わせ」です。
ただし、この三品・・・あまり消化が良い食べ物ではないので、本当に食べると戦闘中に野っ原にて、猛ダッシュで“野○○”ってな事になりかねません。
ですから、実際はほんの少し口をつけるだけだったそうです。
主だった者たちを集めて、出陣直前に歌の会を開いて、「皆で歌を詠み合う」といった事も行われていました。
儀式を仕切る・・・という事は、こんな時、さしずめ軍師は、司会者なのか?
*ゴリさんがノリノリでカラオケを熱唱し、内野さんが司会している場面を想像してしまった・・・(^o^;)
また、『大将が包丁を踏み越える』という儀式もありました。
城や屋敷の門のところに包丁を置いて、留守の間に敵が侵入しないための“まじない”であるとともに、刃物を踏み越える事で決意の固さを表すものとされていました。
踏んではいけません・・・踏み越える(またぐ)のです。
「軍師たるもの、視聴率の先が読めぬようでは失格じゃぁ!」ってか!
個人的には、サラブレッドの由布姫の女優としての今後の成長に期待・・・。
最近だんだんあの由布姫にも慣れてきた。
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