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2007年6月29日 (金)

平安のトレンド・イケメン僧侶に貝合わせ

 

歴史を紐解いて行くと、「いつの世も、今と変わらないなぁ~」と思う事がしばしば・・・。

先日の【江戸の媚薬・イモリの黒焼き】(5月1日参照>>)では、江戸時代に「モテたい男のファッション誌」や、「恋のテクニック集」などがあった事を書かせていただきましたが、今日も、そんな感じの豆知識・・・というよりムダ知識のお話ですが、どうぞお付き合いくださいませ。

今日は、平安時代の女性の流行物(ハヤリモノ)のお話・・・。

・‥…━━━☆

その頃の女性は、今のように気軽に出歩くという事が、なかなか出来ませんでしたし、女性にとって、外出を伴うレジャーという物がほとんどない時代でした。

しかし、そんな事ではめげません。
いつの時代も、楽しい事は自分たちで作り出していく女のパワーがございます。

当時、女性たちが自由に外出できるのは、仏教行事

その頃の仏事は、今のお葬式のような厳粛な物ではなくて、ある意味人の集まるパーティのような物。

女性は、ここぞとばかりにオシャレして、ウキウキと出かけます。

そして、何と言っても一番の目的は、イケメン坊さんのお経と講話。

なんでも『枕草子』によると、講義する坊さんは、なくべくイケメンで声が美しくないと、講式に人が集まらないのだとか・・・。

「あの人の講話が聞きたい!」
「あの人の声でお経を聞きたい!」

と、人気のある坊さんのいるお寺に女性が、わんさか集まるのだそうです。

下世話な話ですが、仏像を奉納してもらったり、お布施をもらったり・・・という事がある以上、お寺も客商売。

人気がなく、法要をやっても閑古鳥が鳴いていては、寄付金も集まりません。

・・・と、なると、お寺も弟子をとるのに、オーディションを開催したりなんかして、そりゃもう、アイドル僧侶への道は、かなりの難関だったとか・・・。

*あの法然の弟子・安楽は相当なイケメンでモテモテだったらしい・・・(2月18日参照>>)

見事オーディションを勝ち抜いたお坊さんも、そこンところは心得たもので、その美声で唄うようにお経を読み、ファンを魅了したのです。

そうなると、つのるのは恋心・・・。
「せめて、夢の中でもカレに会いたいわぁ~」
と、女性の間で流行したのが、夜寝る時に「着物を裏返しにして寝る」という方法。

こうすると、夢に愛しい人が出てくるのだとか・・・

あのモテモテの小野小町(3月18日参照>>)でさえ
♪いとせめて 恋しきときは ぬばたまの
 夜の衣を 返してぞ着る♪

と、歌に詠むほどの大流行。

しかし、夢は良い夢ばかりではありません。
時には、そんな愛しい人と別れたり・・・

いや、それくらいなら、まだしも、もっと恐ろしい悪夢を見る事もあります。

当時は、今と違って、夢を「未来のお告げ」のように受け止めていた事もあって、最悪な夢を見たときの恐怖はとてつもない物でした。

そんな時は夢とき女のもとに行きて、夢あはせて・・・』
「夢とき女」とは夢占い師
「夢あはせ(夢合わせ)とは、夢判断

つまり、占い師に相談して、「夢違(ゆめちがえ)」という、悪夢が正夢にならないマジナイをしてもらうのです。

具体的には、左手に紙で作った人形を持ち、右手に水を(ひしゃくに入れたりなんかして)持ち、東に向いて呪文を唱えます。
「アラチオノカルヤノサキニタツシカモチガヘヲスレバチガフトゾキク」

これは、「矢で狙われた鹿も、足を少し違う場所に移動すれば、逃れられるとの噂だ」という意味です。

この呪文で、悪夢を少し違った物に変えちゃいましょうって事ですね。

最後に・・・平安時代の女性の間で流行した遊び、「貝合わせ」をご紹介します。

貝合わせとは、各人がそれぞれに美しく珍しい貝を持ち寄り、その貝を見せると同時に歌を詠み、中立の立場にある審判が判定を下す・・・という物です。

歌のよしあしもさることながら、差し出した貝がいかに珍しく、いかに美しいかで勝敗が決定する事が多く、そうなると、より珍しい貝を手に入れたくなるのが人情です。

京の都は海から遠いですから、珍しい貝を手に入れるのは至難の業。

合わせの日が近づいて来ると、コネ使いまくりであっちこっちから、買ったり借りたり・・・レアな貝は、ネットで・・・もとい・・・宮廷内で、かなりの高値で取引されたとか・・・。

まさに、カードゲームの世界・・・やっぱり、光ってるヤツは高いのかしら?

あまりの熱狂ぶりに嫌気がさしたのかどうかしりませんが、平安時代の後半は、まったく違ったゲームが「貝合わせ」と呼ばれて流行するようになります。

こちらは、「一対のハマグリを二つに分けた物を360組用意して混ぜ合わせ、その中から一対の物を見つけ出す」というトランプの神経衰弱のようなゲームとなっています。

私が予想するに、最初の貝合わせは、あまりの高額な取引によって、数限りないトラブルが発生したと踏んでます。

ひょっとして「禁止令」が出てたりなんかして・・・。

ちなみに、私の高校時代には、教室内での「おいちょかぶ禁止令」が出ました。

Kaiawasecc_1 今日のイラストは、
平安後半の『貝合わせ』用の貝を・・・
中の絵柄は季節がら「蓮の花」を書いてみました。

同じ2枚のハマグリの内側に、一対になるように、源氏物語の絵や花、鳥、和歌など同じ絵を、極彩色や金箔で描きます。

それを、360組・・・合わせて720枚。
半分を「地貝」と呼び、対になるもう半分を「出貝」と呼びます。

そして、まずは「地貝」を12枚、伏せて輪に並べて、残りはさらに外側に並べていきます。

全部並べたら、ゲームをする人が、その外側に輪になって座り、対になるもう一方の「出貝」を一枚だけ、先ほどの12枚の輪の中心に置き、皆でその「出貝」の片割れを、並べた中から探すのです。

中の絵を見ずに、あくまで貝の外側の特徴を見て探します。

「これだ!」
と思ったら、右手で「地貝」を取り、「出貝」すくいあげ、小指を使ってずらしていきながら合わせます。

この時、左手を使ってはいけません。
どうしても、うまく貝が合わさらない時は、左手を袂の中に入れ、直接貝をさわらないようにするのがルールでした。

ちなみに、360組という数は一年の日数で、最初に並べる12枚は一年の月の数。
旧暦の閏月にゲームを行う時は、13枚並べたそうですよ。
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コメント

こんにちわ。
流してたら辿りつきました。
前に前世の見れる方に
平安時代の僧侶だと言われました。

イケメンかどうかわかりませんが
ホストにスカウトされたことがあります。


投稿: tetsu | 2008年12月10日 (水) 17時04分

tetsuさん、こんばんは~

コメントありがとうございますm(_ _)m

きっと、平安時代にジャニーズなみの人気を誇っていた事でしょうね。

投稿: 茶々 | 2008年12月11日 (木) 00時20分

ありがとうございます。

僧侶っていうと
山奥でひっそりと修行しているイメージがありました。
実際 その前世を言われた時は
仕事場は山奥にありストイックに仕事してました。
まさか記事のように女性と縁がある華やかな世界だったとは思いませんでした。

ホストやってみようかな(笑)

投稿: tetsu | 2008年12月14日 (日) 13時10分

tetsuさん、再度のコメントありがとうございます。

また、時々、遊びに来てくださいませ。

投稿: 茶々 | 2008年12月14日 (日) 18時15分

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