史上最恐の暗号・エニグマ
今日、6月22日は何があった日なのかなぁ~何の話題を書こうな?と、ネットサーフィンしていたら・・・
1940年・フランスがドイツに降伏
1941年・ドイツがソ連に攻撃を開始
・・・と、ありました。
手持ちの年表を見ても、1942年に連合国軍が反撃を開始するまで(これは6月22日ではありませんが・・・)、第二次世界大戦において、ドイツが優位に立っていた事が伺えます。
・・・で、「ドイツ優位」で思い出したのが、その勝利の陰にあったと言われている『暗号・エニグマ』・・・。
このブログで度々登場する『孫子』を見ても、戦いにおいて「情報」という物がいかに重要なのかはご承知の通り。
第二次世界大戦の初期に、ヒットラーの作戦がことごとく勝利に終るのは、この「エニグマ」を駆使した情報連絡網があったからなのです。
「エニグマ」とは、ギリシャ語で「謎」という意味・・・「この暗号は誰にも解かれるはずはない」という自信にあふれたコードネームです。
ヨーロッパ戦線において、「エニグマがいかに重要であったか」という事は、戦後30年間、戦勝国軍のトップシークレットとして公表される事なく、闇の中に隠し続けられていた事でも伺えます。
1974年・・・関係者の証言によって、初めてその存在が明らかとなるのです。
では、その「史上最強の暗号・エニグマ」とはどんな物だったのでしょうか?
・‥…━━━☆
まず、エニグマは一見すると、古い感じのタイプライターのような機械です。
つまり、そのタイプライターのような物で、「文字を変換して暗号にする」という事です。
手前にキーボードがあり、その向こうにランプボードという表示盤、一番奥にローターという歯車のような回転盤が3枚並んでいます。
キーボードの下と蓋にプラグがあります。
まず、ローターの位置とプラグコードのつなぎ方を最初に設定してから、キーボードに文字を打ち込むと、表示盤の一つの文字のランプが点灯・・・
つまり、送りたい文章の最初の文字が「A」だと仮定すると、キーボードに「A」と打ち込みます。
すると表示盤の「Z」のランプが点灯する・・・「A」を暗号に変換した物が「Z」という事になります。
そうやって1文字ずつ暗号化するのです。
1文字打つごとにローターが回転して、次は1回目とは違う変換の仕方をしますので、もう一度「A」と打ち込んでも、2回目・3回目は「Y]になったり「X]なったりするわけです。
複数のプラグと複数のローターがあるので、その変換の仕方は宇宙的な数になりますが、暗号文を受け取る側は、最初に設定するプラグのつなぎ方と、ローターの位置の設定を教えてもらえば、同じ機械で、暗号文をもとの文章に戻せるという事になります。
(説明ヘタですいません)
これは、現在のネットワークのセキュリティにもある「共通かぎ方式」という方式で、送り手と受け取り手が同じ「鍵」を持っていて、その「鍵」で暗号化して送信した文を、受信者が同じ「鍵」を使って平文に戻すという、
方法自体は一番単純な方法ですが、プラグとローターの組み合わせで、その変換方法が1文字ずつ無数にできる事、そしてこのエニグマという機械によって、その変換が瞬時にできる事が、最強と言われる所以です。
エニグマの出現によって、解読を心配する事なく、軍事連絡取り放題になったドイツ軍・・・ヒットラーはヨーロッパ全土に数百台のエニグマを配置し、快進撃を続ける事になります。
しかし、連合国側もじっとしているわけには行きません。
何とか、エニグマの謎を探ろうと、あの手この手でスパイ活動を続ける中、ついに1940年、1台のエニグマ機をイギリスが入手するのです。
狂喜乱舞するイギリス軍関係者でしたが、本当の戦いはここからでした。
なにしろ、最初のプラグとローターの設定がわからなければ、機械を持っていても暗号は解読できません。
しかも、その設定方法は定期的に変更されるのですから・・・。
イギリスの首相・チャーチルは、一大プロジェクトを立ち上げます。
軍の暗号解読担当はもちろんの事、数学者・言語学者・時計職人・・・はたまたチェスの名人など、様々な分野の匠を1ヶ所に集め、昼夜を問わず、暗号の解読に挑みました。
誰もが、「今のヒットラーに一泡吹かせるには、エニグマの解読しかない!」と、決して諦めようとしなかったのです。
そんな中・・・この最強と謳われたエニグマにも、たった一つ欠点と言える部分があったのです。
それは、「A」は絶対に「A」に変換されないという事・・・つまり、「暗号化すると、必ず別の文字になる」という事です。
それが、突破口となったのかどうかは定かではありませんが、プロジェクトが立ち上がってから3年後、彼らはこの機械から意味のある断片的な文章を引っ張り出す事に成功します。
一旦、鍵が開かれると、それは、今までが嘘のよに次々と解明されて行きます。
しかし、このエニグマの解読成功は、チャーチル以下、軍の一部の者以外には秘密にされました。
ドイツ軍を安心させるため、エニグマを探るためのスパイを定期的に送り込んだり、わざと不利な方向に軍を進めてみたり・・・。
1944年3月のイギリスのコヴェントリー市への空襲も、エニグマの解読によってチャーチルは事前に知っていたけれど、あえて、避難命令を出さなかったのでは?とも言われています。
しかし、エニグマ解読の事実を隠しに隠していたおかげで、ドイツ軍は暗号がバレているとは気づかず、その動きは連合軍に筒抜け状態・・・あのコヴェントリー市への空襲の3ヶ月後に、チャーチルは「ノルマンディー上陸作戦」という史上最大の作戦を成功させるわけです。
間接的に何十万人という犠牲者を出した史上最強・・・いえ、史上最恐の暗号・エニグマの解読によって、その後の戦況が明らかに変わる事となるのは、もう皆さんご承知の通りです。
今日のイラストは、
その『エニグマ機』を・・・。
機械なので、本当はもっと正確に書かなくちゃいけないのはわかっておりますが、あまりにボタンとかが細かくて・・・お許しを・・・。
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コメント
こんばんは、茶々さん。
最近疲れていますがなかなか眠れず睡眠不足です。
と言ってエニグマみたいな秘密文書を解いているわけではないですが。
そういう冗談はさておきアングロサクソン系は発明はあまりないです。車、テニスはフランス、インスタントコーヒー、テレビ、レーダーは日本、自転車はイタリアという様にところがそういうのを解析する能力は何故か昔からあります。エニグマ解読、ゼロ戦解読などです。
ところでエニグマ解読の一人の孫が今イギリス王室に嫁いでいます。それはキャサリン妃です。キャサリン妃は前にエニグマの事の本で前書きを書いたときに実は祖母がエニグマの解読の一員と明かしました。顔はキャサリン妃は祖母に似ています。国家に関わることを祖母と孫が関わっているので不思議なことがあるのだと思いました。
今の英米は産業がないですけど資格、特許で潤っていますがその先駆けがこういう事なのだと思いました。
投稿: non | 2021年1月16日 (土) 20時27分
nonさん、こんばんは~
へぇ、キャサリン妃が…
それは、知りませんでした。
ありがとうございます。
投稿: 茶々 | 2021年1月20日 (水) 01時55分