半年に一度・地獄の釜開き~閻魔大王のお話
今日、7月16日は、半期に一度のバーゲン・・・ではなく、半年に一度の「地獄の釜開き」。
1月16日と、7月16日は『閻魔斎日』と言って、地獄の釜の蓋が開いてエンマ様も地獄の鬼もお休み・・・で、「地獄の釜開き」と呼ばれたり「亡者の骨休み」と呼ばれる地獄の定休日なのです。
地獄に落ちたが最後、永遠に苦しむものだと思っていましたが、年に2回は休ませていただけるんですね~(安心してる場合か!)
・・・て、事で、今日はエンマ(閻魔)様について、色々と書いてみたいと思います。
*ちなみに、毎月16日は閻魔さまの縁日となっています
・‥…━━━☆
エンマ様はご存知のように、死んだ人の霊魂を支配して、その生前の行いに対して、審判をし、賞罰を与えるという裁判官のような役どころをする地獄の王・・・閻魔大王とも呼ばれます。
しかし、最初はエンマ様は地獄の王ではなかったのです。
エンマ様は古代・インドのお生まれ・・・そこでは「ヤマ」と呼ばれていました。
そのヤマという名前には双子という意味も含まれていて、妹を「ヤミー」と言い、二人の間に最初の人類が誕生したとされました。
その後、亡くなってから、人類最初の死者として、天上界へ行き、王として天上を支配するという事になり、信仰の対象となり崇められていました。
古代インドでは、エンマ様は天上界の王だったのです。
最初は、天国の王とされていたものが、時代が経つにしたがい、「最初の死者として死者の国を支配する」というところから、しだいにその居場所が地獄へと変わって行き、インドから中国へ伝わるうち、道教の影響を大きく受ける事になります。
梵語の『ヤマ』を漢音訳で、琰魔・炎摩・夜摩などと表記され、閻魔となります。
道教と結びついた事によって、冥界で死者に善悪の審判を下す10人の中の一人となったエンマ様・・・今でも仏教では『仏神十王』という10人の裁判官が、現世での罪の重さの判決を下す事になっています。
十王の名前をあげておきますと・・・、
・初江王(しょこうおう)
・秦広王(しんこうおう)
・宋帝王(そうていおう)
・五官王(ごかんおう)
・変成王(へんせいおう)
・太山王(たいさんおう)
・平等王(びょうどうおう)
・都市王(としおう)
・五道転輪王(ごどうてんりんおう)
・閻羅王(えんらおう・閻魔王)
以上の十王です。
仏教の世界では、人が死んだら、まず、葬頭河(そうずか・三途の川)を渡りますが、浅瀬と深淵と橋の3通りの渡り方があります。(深淵はちょっと・・・)
3通りあるけれど、どの方法をとっても行き着く先は同じ場所。
(・・・なら、全員橋にしてほしい・・・)
そして、渡った所に、衣領樹(いりょうじゅ)と呼ばれる大きな木が立っていて、その木のたもとに、奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)という鬼が待っています。
そこで、奪衣婆が死者の衣服を剥ぎ取って、懸衣翁に渡し、懸衣翁が、その衣服を衣領樹の枝にかけて、その垂れ下がり具合で罪の増減を定めます。
そして、諸官庁が建ち、十王が待つ初江(しょこう)という場所で、裁判が行われるのです。
初江王が裁判長で、その他の九王が判事という役割ですが、その中でも閻魔王は、検事的な役割を荷っています。
このように、仏教世界では10人の裁判官だったのが、日本に伝わって民間信仰に移行する際に、この10人の王の中で、なぜか閻魔王がピックアップされる事になって、10人の役割を一手に引き受ける形となったのが、現在、一般によく知られているエンマ様・・・という事になります。
『閻魔斎日』が1月と7月の年2回という事になったのも、日本の民間信仰の影響を受けていると思われます。
日本では、畑作と稲作の年2回収穫が行われる事から、何かと年2回という分け方をするという風習が古くからあったのだそうです。
そこで、日本に古来からあるお正月にやってくる「年神様」の信仰(2月3日【節分・豆まきの起源と鬼】参照>>)に対して、仏教で年6回ある「魂祭(たままつり)」の一つのお盆が、お正月と一対になるように、設定されたのではないでしょうか?
お盆には、あの世の御先祖様が帰って来るのだから、当然、あの世の裁判所もストップしてるはず、そして、この日本人の根底にある年2回という観念から、お盆とお正月だけは、何もかもお休み~。
さすがの、地獄の釜の蓋も開放されるのだから、働きづめの奉公人も、いびられっぱなしの嫁も、年2回は開放される「薮入り」というお休みの日が生まれ、奉公人は田舎に帰ったり先祖の墓参りをしたり、エンマ様の縁日に行ったり・・・そして、嫁は実家に帰ったり・・・。
・・・と、すっかり、日本人の生活の中に溶け込んで行ったんですね。
とにかく、インドで生まれて、中国を旅して、長い時をかけて、日本にたどりついたエンマ様は、日本の民間信仰と、ものの見事にミックスされて、今も地獄の大王として睨みを利かす事になったようです。
最近は、すっかり労働形態も変わって、「薮入り」なんていうのは過去の事。
今じゃ、お休みは盆と正月だけじゃありませんからね~。
嫁も、実家に帰りっぱなし・・・
ひょっとしたら、地獄の釜の蓋も開きっぱなし・・・てな事は、
・・・さすがにありませんよね~。
今日のイラストは、
そのものズバリ!『閻魔大王さま』で・・・
なんか、顔がデカくなってしまった・・・アラレちゃんに出てくる「ニコちゃん大王」みたい・・・
閻魔大王のもう一つのお顔・・・お地蔵様については【1月24日:お地蔵様のお話】へどうぞ>>
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コメント
初めまして。
閻魔様のイラストを探して此方にたどり着きました。
早速ですが本題に入らせて頂きます。
私は老人施設で働いているのですが、閻魔様のイラストがどうしても欲しくて。
使用方法は配布物(プリントのようなもの)に載せ、入居者の方々に配布します。
此方では「えんま市」というお祭りがあるのですがその象徴が閻魔様です。
もし良ろしければ羽柴様のイラストをお借り出来たら、と思いコメントをさせていただきました。
勝手ですが早目にお返事を頂けると大変助かります。
ご検討よろしくお願いします。
投稿: のぞみ | 2011年6月 1日 (水) 23時39分
のぞみさん、こんばんは~
こんなんで良かったら、どうぞ使ってください。
もし、プリントに空きスペースなどありましたら、チョコッと隅っこのほうに
“ブログ「今日は何の日?徒然日記」より”
てな事を書いてくださると、うれしさ倍増です(*´v゚*)ゞ
「えんま市」が楽しいイベントになる事を願っています。
投稿: 茶々 | 2011年6月 1日 (水) 23時51分
タイの地獄も怖い・・・(´;ω;`)
投稿: 怖いよぉ・・・;; | 2013年9月12日 (木) 20時43分
怖いよぉ・・・;;さん、こんばんは~
>タイの地獄…
怖そうです(;´Д`A ```
投稿: 茶々 | 2013年9月13日 (金) 01時48分