古事記をSFとして読めば…
養老七年(723年)7月6日は、『古事記』を編さんした太安万侶さんのご命日です。
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以前の記事【太安万侶が古事記を作る】(1月28日参照>>)で書かせていただきましたように、太安万侶という人物に関しては、『古事記』の序文に「太安万侶(おおのやすまろ)が献上します」という部分に名前が登場するだけで、その実在すら疑われていたところ、偶然にもお墓が発見された事で、ご命日も、そして、実在の人物であった事も判明したわけです。
しかし、それまで「その実在すら疑われていた」という事は、それだけ太安万侶に関する史料が無いという事で、その人物像というのは、ほとんどわかっていないのが現状です。
そんな安万侶が編さんした『古事記』・・・ご命日にちなんで、今日はその『古事記』を別の視点から読み取って行きたいと思います。
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プロフィールを見ていただけば、お解かりいただけますように、私は歴史好きであると同時に不思議好きでもあります。
気がついた時には、歴史と同様に、不思議な事(心霊・超能力含む)、宇宙の事、星の事が大好きでしたが、小さい頃は、歴史と宇宙は別の物・・・この二つが結びつくなんて考えもしていませんでした。
ところが、中学生だったか高校生だったかの頃、それまで『日本の神話』という類の本で、断片的に読んでいた「天岩戸」の話や「ヤマタノオロチ」の話を、初めて『古事記』という形で読んだ時に、私の中で、歴史と宇宙が結びつきました。
『古事記』をSF的に読んでみると実におもしろいんです。
まず、冒頭に・・・
『天地初發之時。於高天原成神名。天之御中主神。次高御産巣日神。次神産巣日神。此三柱神者。並獨神成坐而。隱身也。』
「天も地もない始めの時。高天原という所に神が現れる。天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ・天の中央で宇宙を統一する神)。次に高御産巣日神(タカミムスビノカミ・宇宙を生成する神)。次に神産巣日神(カミムスビノカミ・同じく宇宙を生成する神)。この三柱の神々は配偶者を持たない単独の神。その姿を見せる事はない」
これは、まさに太陽系の成り立ちではありませんか?
中央で太陽が生まれ、次にそのまわりで複数の惑星が誕生する・・・。
産巣(むすび)とはまさに産み出す事です。
もちろん、今現在の科学でも太陽系の成り立ちには様々な説がありますので、これが正解ってわけじゃありませんが、安万侶がいた時代の人々が「天も地も何も無い時・・・」「何も無い所から産まれる・・・」なんて事を考えていたという事だけでも驚きませんか?
今の私たちは考える前に教わります。
太陽の事、惑星の事・・・地球は太陽系の中の惑星の一つで、太陽の周りを回っているのだと・・・。
しかし、そのような事前の知識がないまま、混沌とした世界が誕生していくような過程を想像して書ける物なのか・・・と、驚きます。
そして、その次に続くのは・・・
『次國稚如浮脂而。久羅下那洲多陀用幣琉之時。如葦牙因萌騰之物而。成神名。宇摩志阿斯訶備比古遲神。次天之常立神。此二柱神亦獨神成坐而。隱身也。』
「形のない地上は水に脂(あぶら)が浮いたような状態。水中をくらげが流れて行くような中、水辺の葦(あし)が芽吹いて萌え上がっていくような物があった。そこから神が現れる。宇摩志阿斯訶備比古遲神(ウマシアシカビヒコヂノカミ・地上から天へ指し登る神)。次に天之常立神(アメノトコタチノカミ・天そのものを現す神)。この二の柱神も配偶者を持たない単独の神。その姿を見せる事はない。」
ドロドロしたマグマの様子に加え、「天に向かって萌える」という描写は、まるで火山の噴火を連想させます。
以上は、天に現れた神で、この後、地上に次々と神が誕生します。
生まれてきた大地を表す国之常立神(クニノトコタチノカミ)。
脂が固まって広い沼になる事を表した豊雲野神(トヨクモノカミ)。
沼地が固まって草が生え育っていく様子を表した角杙神(ツノギヒノカミ)と活杙神(イクグヒノカミ)。
大地の表面が整った事を表す淤母陀琉神(オモダルノカミ)。
大地が整った喜びの声「あやにかしこし」を表した阿夜訶志古泥神(アヤカシコネノカミ)。
まるで、徐々にマグマが冷え、海から大地が現れ、そこに植物が誕生していく様子のように思えます。
・・・で、これらの神々の最後に登場するのが、皆さんよくご存知の伊邪那岐神(イザナギノカミ)と伊邪那美神(イザナミノカミ)です。
いざなう=誘う・・・つまり、お互いが協力して、出来上がった大地に国を造り、物を生み出して行く・・・
『国産み』と言いますが、私は、イサナギとイザナミは産んだのではなく、国を造った・・・つまり、人々が集団生活をし、村になり、やがて国家になっていった事の描写ではないかと思っています。
このイザナギとイザナミがそれまでに登場した神様と種が異なるように思うのは、それまでの神様が、地球の成り立ち・・・つまり自然現象だったのに対し、彼らが人類だからなのではないでしょうか?
それを、裏付けるかのように、イサナギとイザナミは神としては初めて男女の交わりをし、その子・天照大御神(アマテラスオオミカミ)、その孫・天邇岐志国邇岐志天津日高子番能邇邇芸命(アメニギシクニニギシアマツヒダカヒコホノニニギノミコト)と続き、そのニニギノミコトが天孫降臨をして、天皇家の祖となるわけですから・・・。
さらに、皆さんよくご存知の天岩戸隠れ・・・弟・建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)の悪行に怒った太陽神・アマテラスが天岩戸に隠れてしまう話です。
これは、皆既日食を描写した物であるとか、国を治めていた女王が亡くなり、一旦国が荒れ、再びカリスマ性のある次の女王が現れるまでの状況を描いた物であるというのが一般的な見方ですが、これをSF的に読み解くと、これまた非常におもしろいのです。
ここから先は、緑が一般的な話で紫の文字がSF的読み方です。
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アマテラスがお隠れ=仮死状態?になって、さぁ困った八百万(やおよろず)の神様は会議を開いて「どうしたものか?」と話し合います。
そこへ登場する思金神(オモヒカネノカミ)・・・このオモイカネさんは、皆が困った時に質問をする神様で、必ず明確な答えを出し、皆がその意見に従う・・・という立場の神様なのですが・・・思金=考える金属?・・・まさにスーパーコンピュータ!
あらゆるデータを蓄積し、こんな時どうすれば良いか?という答えを瞬時にして導き出してくれるのです。
この時も、華麗なる女王復活のために、各担当者に指示を与えます。
まず、闇夜に鳴く長鳴鳥(ながなきどり)を集めて一斉に鳴かせます=仮死状態の人への声かけ?
鍛冶の名人・天津麻羅(アマツマラ)に特別の岩と鉄で矛=手術道具(メスとか)の準備?を作らせます。
次に、伊志許理度売命(イシコリドメノミコト)に鏡=人工心臓?を作らせ、玉祖命(タマノヤノミコト)に500の勾玉をつけた長い玉飾り=輸血用チューブ?を用意させます。
さらに、天児屋命(アメノコヤネノミコト)と布刀玉命(フトタマノミコト)に、天の香久山に住む牡鹿の骨で鹿卜(しかうら)を行わせ、この策略が正しいか=手術のシュミレーション?を占わせました。
結果が「良し」と出たので、香久山に生える榊の木を根こそぎ掘り出して=輸血用の血液を確保?、そこに先ほどの玉飾りと鏡を装着してフトタマノミコトが捧げ持ち、そばにはアメノコヤネノミコトと、力持ちの天手力男神(アメノタヂカラヲノカミ)が準備万端整えた所で、男まさりの女神・天宇受売命(アメノウズメノミコト)が登場します。
ウズメは、天岩戸の前に、中がうつろな台=ベッド?を設け、そこに登って足拍子おもしろく=一定のリズムで?、音が鳴り響くように踊った=心臓マッサージをした?のです。
外の騒がしさが気になったアマテラスは、閉めきっていた岩屋戸を少し開き=快復の兆し?、何があるのかと顔を出したとき、フトタマとコヤネが先ほどの鏡を差出し=人工心臓装着・手術?、同時にタヂカラヲがその力強い腕でアマテラスの手を取って岩屋戸の前に引き出します=ひょっとして電気ショックなんかもしてるかも?
すかさず、フトタマが岩屋戸の入り口にしめ縄を張りめぐらして=縫合?、「もう、二度とお戻りになりませんように」とつぶやいて、めでたしめでたし・・・
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・・・と、いかがでしたか?『古事記』のSF的読み解き。
まだまだ、ヤマタノオロチも天孫降臨も、SF的発想で読んでみるとおもしろいです~。
最後まで読んでくださったかた、長い妄想におつき合いくださってありがとうございました~。
今日のイラストは、
天孫降臨の時の『天鳥船』を、SFっぽく書いてみました~。
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コメント
おお~! これは、面白いですね。
これで、ダースベイダーが出てきて(♪チャーンチャチャン、チャンチャチャン、チャンチャンチャン、チャンチャチャン♪)
失礼・・ただダースベイダーが好きなんです。昔、私達も中国神話で、すたーwォーズやってました。あっちの方がはるかにSFぽいんです。
確かに天の岩戸は、死せる太陽の復活儀礼ですから、こういうのもありですが、私は、もっと生々しくて、性交、妊娠、出産をイメージします。天津麻羅なんてマンマじゃないです? いや~楽しいSFが興ざめですね。ゴメン。
デ、是非今度はヤマタノオロチでやって下さい~♪
投稿: 乱読おばさん | 2007年7月 6日 (金) 10時29分
いやいや、そっち系もアリですよ~。
天津麻羅が矛造り・・・よほどご立派なのをお持ちだったんでしょうな。
明日香村にある「マラ石」なんか、形もモロですし、向かいの山は「フグリ山」・・・子孫繁栄・生命復活は重要な儀式だったんでしょうね。
神話をそっち系でウラ読みして妄想にふけると寝られなくなりそうです。
投稿: 茶々 | 2007年7月 6日 (金) 16時07分
さすが、安来は歴史の宝庫ですね。考古学的にも奇跡的な場所、早く発掘が進むことが期待されます。
投稿: スサノオ | 2007年12月25日 (火) 21時54分
スサノオ様、コメントありがとうございます。
藤原氏の思惑によって、すっかり中央に取り込まれてしまった感のある出雲王朝・・・どのような存在だったのか?とても興味をそそられますね。
投稿: 茶々 | 2007年12月25日 (火) 23時18分
なるほど、天の岩戸隠れの神話を…性交・妊娠・出産をモチーフにした話と見るなら天宇豆女命は、さしずめ助産婦さん的な見方も出来るかも知れませんね。歌舞音曲で囃し立てる行為は、大きな声で妊婦を励まし赤ちゃんの誕生を促す行為かななんて思えてきます。
投稿: マー君 | 2009年3月31日 (火) 00時47分
マー君さん、こんばんは~
確かに、「天津麻羅」という名前は、それを想像してしまいますね~。
古代においては、妊娠・出産は神聖なものですから、より神に近い位置にあったのかも知れませんね。
投稿: 茶々 | 2009年3月31日 (火) 02時52分
すごい想像力!いや感服しました。
私も同じように歴史と不思議と宇宙が大好きですが、日本神話をSF的に読めるとは思いもよらなかったです。古代文明やマヤあたりが宇宙人と結び付く可能性があるわけですから、そりゃ日本もありですよね。
特に感心したのは、古事記の最初の記述を太陽系誕生から大地ができる様に当てはめた部分。なるほどと思いました。
また、思金をスーパーコンピュータとみた点。某SFアニメでは「オモイカネ」という困ったとき用スーパーコンピュータがほんとに出てきていました。このアニメを作った人もスーパーコンピュータだと思ったのでしょうね。私は「あれ、なんでこのコンピュータ、あのオモイカネなんだろ?」というくらいしか思わなかったです。
また、メソポタミア辺りの神話にも異星人を思わせる神が登場し、バクダッドには彼らの残したスーパーコンピュータがあり、先のイラク戦争は実はこれが目的で戦争終了後大規模な調査が行なわれた、なんて話を思いだしました。すごいです。
私も日本神話をまた読み返し、新たな発見を試みてみます。
投稿: おみ | 2009年5月 5日 (火) 18時33分
>某SFアニメでは・・・
そうなんですか・・・
恥かしながら、アニメに登場しているとは知りませんでした。
SFの視点で他の部分も読んでみると、どんどん想像が膨らみそうです。
投稿: 茶々 | 2009年5月 6日 (水) 01時04分