猫と日本人~その交流の歴史
今日、2月22日は、「ニャン(2)ニャン(2)ニャン(2)」という、猫の鳴き声の語呂合わせで、『猫の日』という記念日なのだそうです。
・・・て事で、今日は、その『猫と日本人の交流の歴史』を書かせていただきます。
いったい、日本ではいつごろから猫をペットとして飼うようになったのでしょうか?
・・・・・・・・・・
犬と並んでペット界の二大巨頭である猫・・・。
その謎を秘めた妖しい雰囲気から、数々の伝説や昔話にも登場し、さぞかし、日本人とのおつき合いも、古いんだろうなぁ・・・と思いきや、意外にも、それほど古くはありません。
もちろん、金魚や熱帯魚よりは、だんぜん古いのですが、ペット界のライバルである犬が、縄文時代の頃から、すでに、番犬として、庭先で人とともに暮らしていた事に比べると・・・という事です。
猫のご先祖は、現在でもアフリカに生息する野生の猫・リビアヤマネコだと言われていますが、そんな野性の猫を、狩猟用に飼いならしたのは、紀元前3000年頃の古代エジプトの第五王朝時代のファラオたち・・・この頃の出土品の中に、首輪をつけた猫の絵が書かれているそうです。
そして、狩猟目的だった猫は、今度はペットとして、ヨーロッパやインドへと伝わります。
やがて、紀元後まもなくの後漢(25年~220年)の時代、仏教伝来とともに、猫はインドから中国へと伝わるのです。
それは、仏教の経典をネズミの被害から防ぐための、ネズミ駆除の役割を荷った猫たちで、そんな猫が大陸から海を越えて、日本にやって来たのも、日本への仏教伝来より後という事になります。
ですから、『古事記』や『日本書紀』『万葉集』などの仏教伝来以前の部分には、猫の話は一切出てきません。
日本への持込は、おそらく、大切な経典を持ち帰ってきた遣唐使たちが、ネズミから経典を守るために連れて来たでしょうが、これは、あくまで推測・・・。
ただ、平安初期の仏教説話集『日本霊異記』には猫が登場しますが、お話に登場するだけでは実際に、日本に猫がいたかどうかは確認できません。
・・・で、正式な記録としては、平安時代の第66代・一条天皇の在位中に、朝鮮半島からの献上品として、送られたのが、日本に猫がやってきた最古の記録となります。
天皇は、寛和二年(986年)から寛弘八年(1011年)までの在位ですので、その間に・・・という事ですね。
紫式部の『源氏物語』の中で、主人公・光源氏の奥さん・女三宮が、ペットの猫を可愛がるシーンが出てきますが、紫式部が一条天皇の中宮・彰子の家庭教師だった事を考えると、まさにトレンディ・・・流行りの最先端を小説に取り入れた事になりますね~お見事!
そんなペットの猫ちゃんですが、早くも室町時代、兼好法師が書いたあの『徒然草』の中で「妖怪・猫又(ねこまた)」として登場します。
正式輸入から300年経っているとは言え、長い人間の歴史から考えると・・・化けるの早っ!て感じです~。
猫又とは、長年飼った猫の尾が二つに裂けて分かれ、妖しい力を持つ化け猫になるという物です。
今思えば、動物虐待もはなはだしいですが、この時代は、猫又になるのを防ぐため、子猫のうちに尻尾を切ってしまうという風習もあったくらいですから、相当、信じられていたのでしょう。
江戸時代になっても、猫の妖しい魅力は衰えず、化け猫は歌舞伎や小説の中にしばしば登場します。
中でも有名なのは、『佐賀・鍋島藩の化け猫騒動』(9月6日参照>>)です。
佐賀の鍋島藩主に殺された飼い主の、血をなめて生きながらえ、やがて妖怪となった猫が、お殿様のお妾に化けて入り込み、お家騒動などを引き起こして怨みを晴らそうとするというストーリーです。
もちろん、化け猫はフィクションだとしても、そのもとになる話は実際にあった出来事だったのです。
ただし、それは、九州の雄・龍造寺家と、その親戚で家臣だった鍋島家の、戦国にありがちなお家騒動・・・しかも、それは、家臣・鍋島があまりにも優秀だったため、「いつか乗っ取られるんじゃないか?」と不安になり、疑心暗鬼の末、勝手に殿様が自殺して龍造寺家が断絶してしまっった後、家臣たちの話し合いで、鍋島家がその後を引き継いだという物です。
どこでどう鍋島家が恨まれる部分があるのか、とても理解し難い状況で、猫のねの字も出てきやしません。
恨みを抱いて復讐するストーリーに引っ張り出された猫が、お気の毒なくらいです。
こうして長い間、妖怪あつかいされていた猫ですが、明治以降に登場する民話・世間話では、妖しい感じは残しつつも、いたって明るく描かれています。
ケガをして湯治に出かける猫の話や、あぐらをかいてニヤリと笑う猫など・・・
従順な犬に対して、飼い主に心を見せないその不思議な生き物は、今はもう、昔の人が描いた妖しいというイメージではなく、目が離せないイタズラっ子のようなカワイイさを振りまいて、現在の私たちを癒してくれる存在になったようですね。
今日のイラストは、
妖しくもあり、かわいくもありという雰囲気の猫ちゃんを書いてみました。
彼らの人生・・・いや、猫生や犬生が、飼い主である自分にかかっているんだと思うと、幸せにしてあげられるかどうかの自信がなく、今日もペットショップを横目に見る私です。
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コメント
猫好き、猫派(一度に最大11匹!の猫と暮らしていた)の私としては、日本の猫史を、もっと古くしてみたいところです(猫のハニワなど夢見ています?)が、やはり、猫の意匠を含めて古い時代にはないんですよね(獅子狩文の獅子が実は猫だ! などという珍説が出ない限り?)。やはり女三の宮でガマン(何を?)するか・・。
投稿: 乱読おばさん | 2008年2月23日 (土) 10時03分
>一度に最大11匹!・・・
は、スゴイですね~
確かに、今の猫と人間の関係や、斉明天皇の時代に、すでにラクダが献上されている事を考えれば、猫の献上はもっと古くても良いと思うのですが・・・
ひょっとしたら、イリオモテヤマネコみたいなのが、野生でワンサカいて、珍しくもなんとも無く、当たり前すぎて誰も書き残して無い・・・なんて事はないですかね~。
投稿: 茶々 | 2008年2月23日 (土) 11時35分