松平定信の「寛政の改革」は個人的恨みから?
天明七年(1787年)6月19日、老中首座となった松平定信が『寛政の改革』に着手しました。
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田沼意次(たぬまおきつぐ)の後を継いで、わずか30歳で老中首座になった松平定信(まつだいらさだのぶ)・・・
彼が目指したのは、暴れん坊だったジッチャン・8代将軍徳川吉宗の『享保の改革』のような改革でした。
まずは、荒廃した農村に対して、荒れ果てた耕地を復旧させるための公金の貸付を行うとともに、農民の出稼ぎを制限して農地回復に専念してもらいます。
すでに、出稼ぎ労働者として、都会に出ている農民に対しては、旧里帰農令(きゅうりきのうれい)を発布して、少しのお小遣いを渡し、故郷の農村に戻ってもらい、やはり農地回復ににはりきってもらいます。
出来上がった米は、飢饉に備えて、囲米(かこいまい)として倉庫に保管します。
都市部の町民に対しては、町費の節約を呼びかけ、その7割を積立金として、飢饉や災害のために貯金させます。
旗本や御家人に対しては、棄損令(きえんれい・徳政令の一種)を発布し、借金を帳消しにさせた後に、その後の質素・倹約を求めます。
改革は、人の思想にも介入します。
朱子学以外の学問を禁止し、風紀を乱す出版物がことごとく排除します。
とにかく、田沼時代のやり方を真っ向から否定する物でした。
以前、『田沼意次の汚名を晴らしたい!』(10月2日参照>>)のページで書かせていただいたように、意次が賄賂(わいろ)政治家で、とんでもない悪人のイメージで後世に伝えられてしまうのも、ひとえに、この定信さんをクリーンなイメージで売り込みたいがための、オーバーな脚色が加えられている可能性もあるのです。
それは、定信自身の意思でもありました。
とにかく、彼は田沼と正反対の位置にいて、田沼を否定したかったのです。
なんで?そこまで・・・と、実は・・・
定信は、田沼に個人的な恨みがあったのは?と言われています。
定信の父・田安宗武(むねたけ)は、明和八年(1771年)に亡くなるのですが、その後を継いだのは、定信の兄・治察(はるあき)でした。
しかし、その治察は生まれつき病弱だったため、いずれは定信が田安家を継ぐのだろうと、周囲も、そして定信本人も、そう思っていたのです。
ところが安永三年(1774年)、当時、老中になったばかりの意次が、その力を強引に見せつけ、田安家内の反対を押し切って、そして、もちろん本人の心情も無視して、定信を白河藩主・松平定邦の養子に決めてしまうのです。
老中の命令ですから、定信はしかたなく松平家の養子になって、白河藩を継ぐわけですが、それからまもなく、兄・治察が病死してしまいます。
当然、後継ぎがいなくなった田安家ですから、定信は自分を田安家の当主にしてくれるよう意次に働きかけるのですが、意次はまったくの無視・・・その願いも叶えられませんでした。
どうやら、この時期、定信は意次を殺害しようとまで考えていたようです。
何度も「殺ったる!殺ったる!」と思いながら、その都度、気持ちを押し留め・・・
地道に出世を目指していたところへ、絶好のチャ~ンス!
度重なる天変地異で、情勢が不安定となり、各地に起こった一揆や打ちこわしの責任を、老中の意次へと向け、まんまと失脚に追い込んで、見事、後釜にすわったというわけです。
・・・で、経済の発展に重点を置いていた意次に逆らうように、天明七年(1787年)6月19日、質素・倹約の寛政の改革を実行したのです。
しかし、もはや時代は、祖父・吉宗の頃とは違います。
発展を遂げた貨幣経済に対して、後戻りする形の改革が、民衆に受け入れられるはずもありません。
結局、この寛政の改革は、わずか三年で行き詰まり、定信本人も六年という短さで失脚してしまいます。
巷では、
♪白河の 清きに魚も 棲みかねて
もとの濁りの 田沼恋しき ♪
なんて歌も流行ったんだとか・・・
とにもかくにも、
政治に、個人的な恨みを持ち込むのはやめましょう・・・
と言いたいところですが、意次さんは意次さんで、パワーハラスメント的な部分もあるかもしれないので、定信さんだけを責める事はできませんねぇ・・・。
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コメント
鳩山総理大臣を見ていると松平定信の様な感じがします。麻生前総理大臣が田沼意次に当ります。当事者2人の政策と当時の経済状況が今と似ています。
今の財界の心境を当時の狂歌風にリメイク
鳩山の 高き理想に 困惑し
かすむ麻生は 今は恋しき
でしょうか?
投稿: えびすこ | 2009年11月20日 (金) 20時26分
えびすこさん、こんばんは~
>当時の狂歌風に・・・
イイですね~
前政権を批判しまくるのも、世の常ですかね。
投稿: 茶々 | 2009年11月20日 (金) 23時21分