「京の冬の旅」特別公開~安国寺恵瓊の茶室・作夢軒と勝林寺と伏見稲荷お茶屋
京都では、毎年12月頃~3月頃まで、京都市観光協会・主催の『京の冬の旅』というキャンペーンをやってます。
ご存知のように、京都は日本でも有数の観光都市・・・観光客の姿が絶える事がない町ではありますが、春の花の季節、夏の行楽シーズン、秋の紅葉にお正月の伝統行事と、魅力が目白押しの中で、1月半ば~3月半ばまでが、ちょっとだけオフシーズンなわけで、悪く言えば、「そのお客さんの少ない時期にイベントやって来てもらおう」って事なんですが、この『京の冬の旅』の目玉とも言える
『非公開文化財特別公開』・・・
これは、毎年、10箇所くらいの社寺(今回は12箇所)の協力のもと、いつもは非公開な場所を、同一期間に均一の拝観料(今回は1ヶ所=600円)で拝観させていただけるイベントなのですが・・・
これが、ホントにいつも、ものすごい非公開な場所を選んで公開してくださるので、歴史好き&寺社好きの一般人としては、大変ありがたいイベントなのです。
ただ、上記の通り、12箇所とも一日で廻れば、拝観料だけで合計=7200円・・・しかも、離れた場所を行き来すれば、交通費も・・・
もちろん、途中でお会いした遠方から来られた方は、「全部廻る」とおっしゃっていましたし、3箇所以上を制覇すればプレゼントがいただけるスタンプラリーなんかもあるので、そりゃ、私だって、遠い場所で、次にいつ来られるかわからないなら、全部廻りますが、近いだけに、ちょっと・・・
・・・って事で、今回は、どうしても見たがった東福寺塔頭(たっちゅう・本寺の敷地内にある所属する寺)の退耕庵(たいこうあん)と、距離的に近い同じく東福寺塔頭の勝林寺、そして、東福寺駅から、JRだと1駅南の稲荷駅、京阪電車なら2駅南の伏見稲荷駅が近い伏見稲荷大社・お茶屋の3箇所の拝観をしてきました~。
東福寺&伏見稲荷への行き方はHPの歴史散歩で・・・
・東福寺>>(退耕庵と勝林寺は東福寺の北側にあります)
・伏見稲荷大社>>(お茶屋は神楽殿の近くにあります)
先ほど、ものすごい非公開と言いましたが、たとえば、今回行かせていただいた、この3箇所ともが、実は一般公開をまったくしていないのです。
退耕庵も、勝林寺も、境内に入れるのは、檀家さんか先祖のお墓のある人だけ・・・
しかも、勝林寺などは、その檀家さんでも入った事のない建物内を83年ぶりに公開なんです。
以前公開したのは大正十五年で、その時に本堂の襖絵を新しくしたので、そのお披露目としてチョコッと公開しただけなんだとか・・・建物は、あの近衛家の大玄関を移築したもので、「この襖を開けたのも83年ぶりかも・・・」なんておっしゃってました~。
建物内は撮影禁止でしたが、「お庭はいいですよ」とおっしゃるので、外観を思いっきり正面から撮影させていただきました。
天を仰ぐために床が斜めに造られている毘沙門堂には、平安時代の毘沙門天像があり、この仏様は、長く東福寺の天井内に密かに安置されていた秘仏だったのだとか・・・
・・・で、話が前後しましたが、今回、最も見てみたかったのが、退耕庵・・・、ここも、上記の通り、普段は檀家さんと先祖のお墓など、ゆかりのある人しか入れないお寺なのです。
この退耕庵は、小野小町ゆかりのお寺でもあり、有名な彼女の100歳の姿を描いた像や、彼女に送られた多数のラブレターを胎内に収めたお地蔵様がおられるのですが、何と言っても、ここを、現在のような建物に再建したのは、第十一世住持となったあの安国寺恵瓊(あんこくじえけい)・・・。
恵瓊さんについては、9月23日【戦国のネゴシエーター・安国寺恵瓊の失敗】>>でご覧いただくとして、ここには、その恵瓊さんが設計した作夢軒(さくむけん)という茶室があるのです。
実は、あの関ヶ原の合戦の時、恵瓊は、この茶室にて、石田三成や宇喜多秀家、小早川秀秋らと、作戦を練ったと言われているのです。
茶室の中には入れず、上部が丸くなった扉の部分から、1人ずつの見学で、もちろん茶室もお庭の前面撮影禁止でしたので、他のかたの迷惑にならないようチラ見しながらスケッチをとり、何とかイラストで再現できないかと描いてみました~↓。
茶室・作夢軒・・・画像をクリックしてください。
何とか、実際に見ている臨場感を味わえないかと動きのあるイラストを作成してみましたので・・・
手前には、警固の侍が控える2畳の伏侍(ふせざむらい)の間があり、その向こうに4畳半の茶室・・・天井は、隠し天井となっていて、空間に警固の侍が潜めるよう、あるいは、まさかの時の隠れ場所となっているのでしょうね。
今は誰もいない茶室に、恵瓊さんや三成さんの姿を重ね合わせ、わくわくドキドキ・・・「時間よ止まれ!」ではなく、「時間よ戻れ!」って思っちゃいました~。
そして、一言・・・小早川秀秋に向かって「お前、裏切んなよ!」と、釘を刺しておかねば・・・せっかくの作夢軒なのに、アンタおかげで夢が崩れたやないかい!なんてね~
最後に立ち寄らせていただいた伏見稲荷・お茶屋・・・これは、お団子やうずらの焼き鳥を出すお稲荷さんのお土産屋さんではなく、第108代後水尾(ごみずのお)天皇(後水尾天皇については4月12日のページでどうぞ>>)のからの賜物で、御所の古御殿を移築した建物です。
門内は、お庭も含めて、すべて撮影禁止ですので、お写真で紹介できないのが残念ですが、稲荷山を借景にした(木が生長しすぎて稲荷山が見えませんでしたが・・・)回遊式の庭園に、そのお茶屋の建物をメインとして、3つの茶室と、松の下屋という、以前、神官さんの居宅だった建物があります。
松の下屋は、そこに長期滞在した棟方志功(むなかたしこう)が滞在中に描いた襖絵が見事です。
お茶屋は、上の間と下の間の二間続きの書院造で、宮廷好みが色濃く出た重要文化財・・・表にあったイベントの看板を写した写真で雰囲気だけでもどうぞ→
ここも、茶会が開かれる時に、その茶道の一門、あるいはゆかりのある人のみが入れる場所で、以前、一般公開されたのは平成六年・・・13年ぶりの今回の公開ですが、もちろん、次は、いつ公開されるかは未定なのです。
以上、今回訪れた3箇所をご紹介・・・今回は、3月18日までの公開です!
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