高杉晋作の奇襲で幕を開けた長州の大島奪回作戦
慶応二年(1866年)6月13日、第二次長州征伐=四境戦争で、最初の衝突の地となり幕府側に奪われていた周防大島へ、長州の大島奪回作戦が開始されました。
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慶応二年(1866年)6月5日の幕府の宣戦布告によって開始された朝敵(天皇の敵)・長州(山口県)への幕府の武力制裁・・・幕府側からは第二次長州征伐と呼び、長州川からは四境(しきょう)戦争と呼ばれる一連の戦いですが、その戦いまでの経緯は、すでに書かせていただいた【いかにして第二次長州征伐は始まったか?】(5月22日参照>>)で見ていただくとして、本日は、最初の衝突となった6月8日の周防大島口の戦いの続きのお話・・・。
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慶応二年(1866年)6月8日、長州の東南の玄関口・周防大島に幕府軍の兵が上陸し、第二次長州征伐の幕が切って落とされました(6月8日参照>>)。
江戸幕府という政府を相手に戦う長州は一地方・・・もとから少ない兵を、さらに分散してはかえって負けが濃くなるであろうという予想のもと、この周防大島へは兵を配置せず、言わば、捨石として置かれた場所でした。
しかし、ほとんど無抵抗な状態のまま、非戦闘員である多くの島民が戦いに巻き込まれて犠牲になった事がニュースとして届くと、やはり、長州軍部にも怒りの声が上がります。
ここは一つ、勝敗を抜きにして一矢報いらねば、長州藩士の男がすたる!とばかりに、小倉口に配置されていた一部の兵を、大島へと差し向ける事が決定されます。
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(このイラストは位置関係をわかりやすくするために趣味の範囲で製作した物で、必ずしも正確さを保証する物ではありません)
この大島反抗作戦のトップを切って出撃したのが、あの高杉晋作です。
晋作は、長州軍が大島奪回作戦で上陸を開始する前に、敵側の動揺を引き出す秘策をたずさえて、丙寅丸(へいいんまる)に乗り込みます。
丙寅丸は、鉄製の全長125mの軍艦・・・先日の幕府の大島上陸の時に活躍した幕府の軍艦・富士山丸(ふじやままる)が木造ではあるものの224mの全長を誇りますから、丙寅丸は、その約半分・・・。
しかし、その丙寅丸は、晋作自身が惚れ込んで、イギリスの商人・グラバーから、藩に無許可のまま購入した蒸気船で、小型ながらも最新鋭のアームストロング砲を3門も搭載した心強い味方でもありました。
そして、6月12日・夜・・・晋作は前代未聞の作戦を決行します。
その夜、大島の北側、久賀沖に密かにやってきた兵寅丸・・・そこには、八雲丸をはじめとする4隻の幕府軍艦(富士山丸はいなかったようです)がイカリを下ろして停泊中・・・。
すでに蒸気機関も停止して、皆が眠りについているあたり一帯は、恐ろしいほどの静寂・・・しかも、夜の海は真っ暗闇です。
その中に、ほのかに浮かびあがるのは、船べりに吊るされている小さなカンテラの灯り・・・
晋作は、そのカンテラの灯りを頼りに、敵の船を位置を確認し、敵艦の間にスルスルと入り込んでいきます。
そして、「ここがド真ん中!今や!」とばかりに、一斉に砲撃を開始・・・右に左に、あの最新鋭のアームストロング砲が火を吹きます。
さらに、その小型である機動力を生かして、敵艦の周囲を縦横無尽に走りまくりながら、狙いもクソもなく、めったやたらと撃ちまくります。
もちろん、その攻撃に驚いた幕府軍の兵も、一斉に飛び起き応戦しようとしますが、いかんせん蒸気船・・・当然の事ながら、蒸気を起すのにも時間が必要・・・。
とは言え、長州としても、わずか一隻で立ち向かうわけはありませんから、ここは、敵が動けぬ間に立ち去るのが上策・・・とばかりに、未だ動けぬ敵艦を尻目に、一方的に撃ちまくるだけ撃ちまくって颯爽とその場から走り去っていきます。
久賀港沖海戦とも呼ばれるこの作戦・・・幕府の兵があっけにとられている間の、あっという間の出来事でした。
確かに、この奇襲攻撃・・・実際には、わずか一隻の小型船では、敵艦に対してさほどのダメージを与える事もできなかった奇襲ではありましたが、幕府の兵への精神的ダメージは充分に与えた作戦でした。
それを物語るのが、翌日・慶応二年(1866年)6月13日の上陸作戦です。
本州側から、大島出身の世良修造率いる長州の第二奇兵隊が上陸して、すんなり幕府軍を撃破・・・この時、島民は手に手に石を持って、長州兵とともに戦ったと言います。
かくして6月17日、彼ら長州軍は大島を奪還し、幕府軍は大島口から撤退する事となりました。
四境(4方)のうちの1方向を、長州の勝利に終らせる事ができたのです。
さぁ、まだ、あと3方向残っていますが・・・まずは、明暗分けた芸州口の戦いへどうぞ>>
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