信長の弟・秀孝射殺事件~その処置に問題あり?
弘治元年(1555年)6月26日、織田信長の弟・織田秀孝が馬で一騎駆け中、織田信次の家臣・州賀才蔵の放った矢に当たり、命を落としました。
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織田秀孝は、尾張(愛知県西部)の戦国武将・織田信秀の七男か八男・・・つまりは、織田信長の6番目か7番目の弟という事になるのですが、とにかく、亡くなった年齢も、よくわからないくらい、その史料が少ない人です。
あの『信長公記』には、「亡くなった時は15~16歳で、例えようのないイケメン」と書かれていますが、それだと、信長の3番目の弟(つまり秀孝の兄)の信包(のぶかね)よりも年齢が高くなってしまうので×です。
逆に、亡くなった年齢を信じるならば、信長のすぐ下の弟・信行(信勝)、その次の信包との間という事になります。
こうなると、その「例えようのないイケメン」というのも怪しくなってきますが、あの戦国一の美女とうたわれたお市の方が同じ両親から生まれた妹なので、ひょっとしたら、本当に美形だったかも知れません。
(信長・信行・信包も同じ両親なんですが・・・( ̄Д ̄;;)
とにもかくにも、この秀孝さん・・・ちょっとした勘違いで命を落としてしまいます。
弘治元年(1555年)6月26日、織田信秀の弟(つまり信長・秀孝らの叔父)である守山城主の織田信次が家臣を引き連れて、自らの領内で狩りをしていたところ、その目の前を下馬もせずに、ただ一騎で通り過ぎる武者が・・・
「こら、無礼者!」(信次は殿様ですから・・・)
と、ばかりに、信次の家臣である州賀才蔵が、おどしのつもりで弓を引くと、それが、見事に、しかも、急所に命中・・・その武者は、即死してしまいます。
慌てて駆け寄って、その顔を見て、秀孝である事を確認した信次主従・・・
なんたって、この頃は、すでに、信長は織田家当主ですから、その弟を「誤って…」とは言え、射殺しておいて、何のお咎めもないわけがありません。
やむなく信次は、すぐに、その場から逃亡・・・姿をくらまし、ほったらかしとなった守山城は、信長の報復を恐れて籠城の臨戦態勢に入ります。
ところが、このニュースを聞いて、真っ先に行動を起したのは、信長ではなく、そのずぐ下の弟・信行・・・。
早速、出陣し、守山城下に火を放ち、城下を焼き払った後、さて、籠城する守山城をどうしてやるか・・・となるのですが、
しかし、ここで、当主である信長から、「彼らを許す」との判断が下されます。
「俺の弟もあろう者が供の者も連れず、怪しまれるような単独行動をとっていたのも悪いのだ」という事らしいのですが、それにしても、泣かないだけでホトトギスを殺してしまうほどの信長さんにしては寛大な処置・・・
・・・と、言いたいところですが、これにはウラがありそうなのです。
そう、この時、即座に守山城への報復を行った信行さん・・・すでに、ブログに書かせていただいていますが、後に、信長が自らの手で暗殺する事になる人です(11月2日参照>>)。
ご存知の通り、若い頃の信長は、ワル仲間と領内を暴れまわる「大うつけ」・・・父・信秀の葬式にも、とんでもない格好で現れ、焼香を投げつけて手も合わせず去っていくというシーンは、時代劇でも度々登場します。
一方の弟・信行は、利発で実直・・・父の葬式での凛した態度は、兄・信長より後継者にふさわしいのではないか?の声があがるほどでした。
もちろん、最後に、信長が信行を殺すのも、信行が、その声を受けて、自らが織田家当主になろうと謀反を画策したからなのですが、実は、今回の秀孝の事件の処置には、その事が絡んでいると思われます。
この秀孝さん・・・生前は、信行さんの味方をしていたのだとか・・・
逆に、叔父の信次は、信長派だった・・・
ちょっと、わかりやすすぎの感もありますが・・・
さすがに、亡くなったのは実の弟ですし、直接敵対している信行が死んでもいないのですから、すべてを、信長が画策したとは言いませんが、やはり、事件後の寛大な処置には、信行との関係が少なからず関わっていたような気がします。
結局、家臣の間からも、「弟が亡くなったのに、この処置は冷たすぎるんじゃない?」なんて声も出て、まったく罪を問わないとはいかず、この後の守山城主として、さらに下の弟の織田信時が入る事で、一件落着となりました。
ただし、かの信次は、この後も、信長の配下として働き、あの長島一向一揆の最終日に討死しています(9月29日参照>>)。
その史料の少なさから、ドラマなどでは、まったく登場した事のない秀孝さん(このあいだのNHKのヒストリアに一瞬出ましたが・・・)ですが、それほどの美形となると、一度くらいは見てみたいものですね。
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