第二次長州征伐・開始~大島口攻防戦
慶応二年(1866年)6月8日、江戸幕府の軍艦・富士山丸が砲撃を開始し、幕府軍歩兵が周防大島に上陸・・・第二次長州征伐の戦端が開かれた大島口の戦いがありました。
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慶応二年(1866年)6月5日の幕府の宣戦布告によって開始される今回の第二次長州征伐・・・そもそも、蛤御門(はまぐりごもん・禁門)の変(7月19日参照>>)で、朝敵(天皇の敵)となった長州(山口県)への幕府を挙げての制裁なわけですが、その細かな経緯は、以前書かせていただいた【いかにして第二次長州征伐は始まったか?】(5月22日参照>>)で見ていただくとして、この長州征伐というネーミング・・・。
以前もチョコッと書きましたが、この第二次長州征伐という呼び方は、幕府側の呼び方・・・長州藩側からの名前は『四境(しきょう)戦争』と呼ばれます。
その名の通り、4つの国境=4方向から、囲むように幕府に攻められたので、そのように呼ぶわけですが、実は、当初の幕府の計画では、5方向から攻め込む事になっていたのです。
- 安芸(広島県)方面からの芸州口(げいしゅうぐち)
- 石見(島根県)方面からの石州口(せきしゅうぐち)
- 瀬戸内海の周防(すおう)大島からの大島口
- 九州・小倉方面からの小倉口
- 本拠地・萩を攻める萩口
ところが、この最後の萩口を担当するはずになっていたのが、あの薩摩藩(鹿児島県)・・・そうです、第14代将軍・徳川家茂(いえもち)が長州征伐のために入京してから約1年間、幕府がチンタラやってる間に、すでに、薩摩と長州は薩長同盟を成立させていて(1月21日参照>>)、薩摩藩は、幕府の傘下にいながらも出兵を拒否するという行動に出たのです。
・・・で、やむなく萩口を除いた4方向からの攻撃となり、その名も四境戦争・・・。
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(このイラストは位置関係をわかりやすくするために趣味の範囲で製作した物で、必ずしも正確さを保証する物ではありません)
そして、最初の激突の舞台となったのは、岩国の南側、瀬戸内海に浮かぶ面積・約138k㎡の周防大島という島・・・この周防大島は、西側が丸く東側が細く突き出たオタマジャクシのような形の島で、ほとんどが山地ではありましたが、わずかに集落となっていた小さな港町に幕府は狙いを定めます。
まずは、6月7日の早朝、島近くに、幕府の軍艦・富士山丸(ふじやままる)が現れ、東側にあった油宇(ゆう)、南側にあった安下庄(あげのしょう)などに砲撃をしますが、これは、ほんの小手調べ・・・いわゆる、翌日の下見ってヤツです。
かくして慶応二年(1866年)6月8日、幕府は、周防大島に上陸作戦を開始します。
昨日の富士山丸をはじめ、複数の軍艦が油宇湾内に侵入し、砲撃を開始するとともに、歩兵が次々と上陸・・・さらに、安芸の宮島から出航した幕府船団が、島の周囲を取り囲み、雨あられのような砲撃を繰り返します。
この無差別な攻撃は、多くの女子供を巻き込み、ほぼ無抵抗な島民は、慌てて海岸から山中へと逃げ込みます。
そのため、この大島は、幕府側の一方的な攻撃により、またたく間に占領されてしまいました。
・・・というのも、実は、長州は、最初からこの大島は、捨てるつもりでいたのです。
住民には気の毒ですが、そもそもこの戦争は、幕府を相手に、長州という一国が戦う戦争・・・はなから兵の数は雲泥の差なわけですから、その少ない兵を、あまりに多くの地に分散してしまっては、幕府の大軍を相手にする事など到底できず、結局は全滅してしまう事にもなりかねませんから、ここは、心を鬼にして、大島を捨てたのです。
・・・とは言え、この大島にも、本来は、この島を治めるべく地侍と呼ばれる地元の武士たちがいたのですが、なんと、彼らは、「幕府が攻めて来た!」という声を聞くなり、農民の姿に変装し、彼らに、混じって逃げてしまっていたのです。
日頃、「俺らにまかしとけ!」とふんぞりかえり、権力を笠に着ていただけに、彼らが何の抵抗もしないまま、多くの非戦闘員の犠牲者が出た事で、農民たちは皆、嘆き悲しんだと言います。
・・・が、しかし、ここで戦闘が終っていたのでは、幕府の一方的な攻撃で、お題のように大島口攻防戦とは呼べません。
大島での戦闘は、まだ続きます・・・そう、この島民の嘆きに、黙ってはいられなくなった人物がいたのです。
その人は、あの高杉晋作・・・。
大島を占領した事で、この後の14日には、ここを拠点とし、対岸の岩国に攻め込むつもりでいた幕府軍・・・
そんな幕府軍を、晋作が、前代未聞の海戦の夜襲という方法で攻撃するのは、4日後の6月12日夜・・・って事でこのお話の続きは、やはり、その日・6月13日【長州の大島奪回作戦】>>に書かせていただきました。
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