力づくの勝利~日露戦争の黄海海戦
明治三十七年(1904年)8月10日、日露戦争の黄海海戦において、日本軍の連合艦隊が勝利しました。
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この年の2月、日本の宣戦布告によって開始された日露戦争(2月10日参照>>)・・・。
開戦前から、陸軍には朝鮮半島の占領と満州南部のロシア軍の撃破、海軍には旅順(りょじゅん)とウラジオストックに拠点を持つロシア太平洋艦隊の撃破して黄海&日本海の制海権を握る事が目標とされていました。
開戦間もなくの仁川(じんせん)沖海戦で勝利(2月9日参照>>)した日本軍は、すぐに仁川へ上陸し、韓国政府との間で、兵の駐留を認める議定書に調印します。
次の目標は、旅順港に停泊中のロシア艦隊の主力を撃滅させる事ですが、これがなかなかうまくいきません。
旅順港内は鉄壁の要塞となっており、戦うには、相手が、その港から出撃してくれなければならないわけですが、艦隊を温存したいロシアが出撃をしないのです。
決死の覚悟で近距離から砲撃を浴びせるも、旅順要塞からの砲弾によって、多数の被害が出る(3月27日参照>>)・・・結局、これらのくりかえしによって、旅順の攻略は、陸軍へとゆだねられる方向へと変わりました。
そんなこんなの8月7日、旅順港内に籠りっぱなしのロシア艦隊に、本国・ロシアから、「艦隊をウラジオストックに移せ」との命令が届きます。
先の、陸軍による陸からの旅順攻略作戦を見込んでの命令でした。
もし、日本軍が陸路で旅順を攻略すれば、その眼下に広がる港に停泊する艦隊を攻撃するのは、いとも簡単な事になってしまいますから・・・。
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(このイラストは位置関係をわかりやすくするために趣味の範囲で製作した物で、必ずしも正確さを保証する物ではありません)
かくして明治三十七年(1904年)8月10日早朝・・・旅順の港を出るロシア艦隊・・・。
一方、6時15分に、このニュースを聞いた司令長官・東郷平八郎は、ただちに、周辺に停泊中の連合艦隊に出撃命令を発し、ロシア艦隊への追撃を開始します。
12時30分、遼東半島沖でロシア艦隊を捉えた連合艦隊は、90度左に回転し、進んで来るロシア艦隊にふさがる形となります。
先の「旅順への陸路の攻略に備えて・・・」というロシア側の判断を知るよしもない日本軍は、「こう着状態を打開するためロシアが決戦に及んだ」と判断し、すぐさま砲撃を開始します。
しかし、当然の事ながら、ロシア艦隊は、ある程度応戦はするものの、とにかく、射程距離から脱出する事のみを目標に、スピードを落す気配はありません。
そうなると、徐々に距離が開いていくのは当たり前・・・15時20分、東郷は砲撃中止の命令を発します。
なんとか、逃げ切ったロシア艦隊・・・しかし、時節は夏真っ盛り!
まだまだ、日が傾くには時間があります。
連合艦隊は、その世界に誇るスピードを生かして、追撃を再開・・・17時30分、再び射程圏内にロシア艦隊を捉えます。
暮れなずむ黄海を、ロシア艦隊に並走しながらの猛攻を加える連合艦隊・・・。
やがて18時37分、連合艦隊の旗艦・三笠が放った砲弾が、ロシア艦隊の旗艦・ツェザレウィッチに命中・・・しかも、重要な部分に着弾した事で司令官や参謀に被害が出ます。
さらに、操舵室で運転中の兵士が、舵に寄りかかって亡くなったため、ツェザレウィッチは大きく左に旋回します。
まだ、無線もままならない頃・・・旗艦が左に旋回すれば、それが作戦かと勘違いし、後に続く艦船も次々と旋回しますが、360度旋回したツェザレウィッチは、その後に続く艦隊の列に突っ込んで、もう、ロシア艦隊は大混乱となります。
こうなって、やっと旗艦・ツェザレウィッチの異常を知った他の艦船は、指揮命令系統が崩壊したまま、散り々々に・・・ある船はサイゴンへ、ある船は樺太へ、また、ある船は旅順へと帰港しましたが、もはや戦闘能力はゼロ。
結局、目的のウラジオストックには、一隻も到着しなかったのです。
こうして、黄海海戦は、日本軍の連合艦隊の大勝利となったのです。
後の東郷によれば・・・
「5月27日の日本海海戦(5月27日参照>>)の日ではなく、この黄海海戦の日こそ海軍記念日にしてほしい」との事・・・
確かに、日本海海戦は大勝利ではありますが、東郷の予想が的中したラッキーな部分も拭えない勝利・・・それに比べると、こちらは、自らが、決死の覚悟で挑んだ激戦により、勝利をもぎ取った感じがします。
おそらく、東郷さんにとっては、こっちの黄海海戦のほうが「やったった!」感が強いのかも知れませんね。
この後に、陸軍が奮戦する旅順攻略は1月2日のページでどうぞ>>
本日のイラストは、夕暮れ迫る黄海での連合艦隊の勇姿を描いてみました~
ちなみに、一番向こうのが先頭を行く旗艦・三笠・・・のつもりです。
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★日露戦争関連ページ
・【日露戦争~旅順と仁川沖・同時海戦】
・【宣戦布告】
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コメント
このイラスト、いいですねぇ。砲弾の音まで聞こえてきそう。日本って蒙古襲来のときもそうだけど、どこか、何かに守られているような気がします。日露戦争にこういう面があったとは・・・いつもながら歴史の一こまを教えて下さってありがとうございます。(一こま一こまが歴史にとって大切なんだと思います)
投稿: Hiromin | 2009年8月10日 (月) 22時07分
Hirominさん、こんばんは~
夕焼けの中を一列に進む連合艦隊・・・頭の中で想像するだけでもカッコよかったので、何とか描いてみました~
投稿: 茶々 | 2009年8月10日 (月) 22時31分
坂の上の雲 が楽しみです~
黄海海戦で、敵旗艦に当たった砲弾を評して、「天佑」って事らしいですね~。日本の歴史の中で最も好きな所です。この時代の日本人もです。
投稿: 山は緑 | 2009年8月14日 (金) 18時55分
山は緑さん、こんばんは~
ホント、「坂の上の雲」楽しみですね~。
投稿: 茶々 | 2009年8月15日 (土) 03時06分