京町屋・特別公開「無名舎」と「紫織庵」に行きました
現在、特別公開中の「無名舎(むめいしゃ)」と「紫織庵(しおりあん)」に行って参りました。
これは、「第34回・京の夏の旅」という、いわゆる京都観光を盛り上げるイベントの一環で、他にも、東福寺の三門と龍吟庵、並河靖之七宝記念館の庭園など、計・5ヶ所の文化財が1ヶ所=600円の拝観料(なぜか紫織庵は500円でした)で、同時に特別公開されるというもの・・・
東福寺と七宝記念館はいずれも東山山麓・・・と、ちょっと距離があるので、今回は、やはり「京町屋が見たい!」という事で、冒頭の2ヶ所に行ってきました。
場所は、紫織庵が新町通の六角上ル、無名舎が同じく新町通の六角下ル・・・京都に慣れたかたなら、これで大体の位置がわかるんですが、遠方から来られる方は・・・
とりあえず、地下鉄・烏丸御池駅を降りて、烏丸通を西へ行き、4つ目の新町通を左(南)へ曲がり、ひたすらまっすぐ・・・5~6分ほどで紫織庵、さらに新町通を南に3~4分で無名舎、もちろん四条烏丸からの逆バージョンだと8分ほどで無名舎、その向こうに紫織庵という事になります。
いずれも、普段は中には入れない普通のお宅で、今回は9月30日までの特別公開となります。
・‥…━━━☆まずは無名舎
こちらは、いわゆる典型的な「表屋(おもてや)造り」と呼ばれるタイプの町屋です。
京都に限らず、以前訪ねたならまちの格子の家(ならまちについては姉妹サイトの奈良歴史散歩へ>>)もこんな造りでしたが、通りに面した玄関を入ると、表に面した格子の部屋があり、その向こうに中庭、さらに縦に家をつらぬく通り庭(走り庭)と、並行に住まいの空間があり、奥の庭、さらに蔵へと縦長に続く感じです。
表に面した格子のある部屋は、おおむね店舗や私塾など、公に使用される部屋で、この格子は取り外し可能になっており、お店の形態によっては、バーゲンなどの時に、格子を外して大売出しをしたりするのだそうです。
ちなみに、この格子・・・写真でご覧の通り、太い部分が細い何本かを挟む形となってますが、太い木の間に細いのが1本だと米屋や炭屋さん、2本だと呉服屋さんで3本だと糸屋さん、4本だと織物屋さんという暗黙のルールがあるのだとか・・・
現在の無名舎さんの場合は・・・
祇園祭の宵宮や宵々宮あたりに開催される「屏風祭」という、各お宅が、自慢のお宝を披露するという習慣・・・この時に、格子を取っ払って代々受け継いでいる自慢の品を展示するのだとか・・・
先に書いたとおり、普段は公開していない無名舎さんですが、「その時は、玄関まで開けっぴろげになってるので、今度は、ぜひ、祇園祭の時にお越し下さい」との事でした。
ところで、今回の見ものは、何と言っても「夏のしつらえ」です。
夏のしつらえ=つまり、建具から調度品にいたるまでのすべてを夏バージョンに切り替えてあるのです。
京都は、夏は暑く冬は寒いという盆地独特の気候・・・エアコンなんてない頃に、この夏の暑さをしのぐために、様々な工夫がされている・・・今回は、それを目の当たりにできるわけです(それが見たくて行ったんですが・・・(*゚ー゚*))
まずは敷物・・・と言っても、まぁ、敷物の場合は、現在の一般のお家でも、夏はいぐさのセンターラグ、冬はホッカホッカカーペットと、季節によって変えるわけですが、無名舎さんを含む伝統的町屋の場合は、敷物だけでなく、建具も変わります。
冬場は、ガラス戸や障子だったのが、夏には、葦戸(よしど・葦製)や簾戸(すど・竹製)の戸に替わります。
これなら網戸のように風がスースー通り抜けるわけですね。
そして、今回、初耳で驚いたのは、中庭と奥の庭との関係・・・中庭は少し手狭で陽があまり当たらないのですが、奥の広い庭には、常に陽が当たっている・・・これは、考えたあげくに、わざとこうしてあるそうなのですが、夏の暑い日に打ち水をまきますよね。
実は、陽の当たる奥の庭の打ち水はすぐに蒸発し、陽の当たらない中庭の打ち水は徐々にゆっくりと蒸発する・・・この時間差攻撃によって、建物内に風が生まれるのだそうです。
究極のエコですね・・・
もちろん、玄関から裏まで、一直線に貫く通り庭にも風が駆け抜けます。
ここには、台所がありますから、火を使えばよけいに暑くなるので、暑い空気を上に逃がすよう天井も工夫されています。
また、この通り庭は、お店で仕入れた品が、住居ゾーンを通らず、直接、大八車などで、蔵へと運び込めるという利点も考えての造りで、昔の人の工夫にはホント頭が下がります。
・‥…━━━☆次に紫織庵
こちらは、大正15年に、モダンな洋間を加えて新築された町屋で、表に高い塀があって、家が直接表通りに面していない「大塀造り」と呼ばれる造りです。
茶室あり広間ありの純和風の部屋の隣には、まさに大正ロマンのサロンがあり、「ごきげんよう」と、風とともに去りぬバリな究極のお嬢様がピアノを弾いてそうな雰囲気です。
部屋と部屋の間にある戸は、無名舎と同様の夏仕様の簾戸なのですが、何と言っても、ここの見ものは、美しい庭に面した広い縁側にピッシリと入れられたガラス戸・・・
これは、「波打ちガラス」と呼ばれる、表面が波のように歪ませてあるガラスがはめてあり、これは建築当時そのままのもので、現在は復元が不可能なのだとか・・・
室町随一の豪商・井上利助氏の心意気がうかがえますね。
・‥…━━━☆
また、「第34回・京の夏の旅」は、まだまだ他にもたくさんのイベントが用意されています。
もちろん、もう9月なので、終ってしまったイベントも多いですが、まだまだ間に合う物もあります・・・この町屋の公開も9月30日までですからね。
皆様、ぜひとも、もう少しの間、行く夏を惜しんでください・・・
くわしいイベント内容は・・・
「京の夏の旅キャンペーン」のページへ>>
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コメント
今日は町屋ですか、いつもためになる記事ありがとうございます。
古の人の知恵や工夫には感嘆させられます!
よく言われるように、我々、現代人は便利さや快適さを得た代わりに、大事な物を少しずつ無くしているのかも分かりません。
それにしても、茶々さんの行動力には頭が下がります。
自分にもそれぐらいあれば・・・
またよろしくお願いいたします。
投稿: maabou | 2009年9月 8日 (火) 14時29分
maabouさん、こんにちは~
昔の人のいろいろな工夫を見て、感心しました。
行動力だけはあるので、今後も頑張ります。
投稿: 茶々 | 2009年9月 8日 (火) 16時07分
こんばんは
京町屋、一度は見てみたいのですが、遠いのでなかなか…。
ブログでの御紹介、ありがとうございます。
普段は中に入れない普通のお宅の特別公開ということで余計に興味をそそられますが、そういう情報は普段からホームページなどを入念にチェックしてゲットなさるのでしょうか?
めったにない機会を逃さず、優れた文化財に触れ、ますます見聞を広められている茶々さんが本当に羨ましいです。(笑)
見聞きなさったことを丁寧に解説して頂き、とてもありがたいです。
投稿: おみや | 2009年9月 8日 (火) 23時51分
おみやさん、こんばんは~
>そういう情報は普段からホームページなどを入念にチェックしてゲットなさるのでしょうか?
新聞の地方欄やテレビのニュース・情報番組のほうで知る事も多いですが、そこで得た断片的な情報でも、検索して目的の所にたどり着く事ができるのはネットの強味ですね。
遠くに行かなくても、おみやさんのお近くで、「名所旧跡名」+「特別公開」などのキーワードでの検索や、ご当地の観光協会のHPなどで、情報をゲットできると思いますよ。
投稿: 茶々 | 2009年9月 9日 (水) 00時56分