ナユタとフカシギ
『ナユタとフカシギ』・・・
これは、すでにご存知でしょうが、大橋卓弥さん&常田真太郎さんという男性二人で構成される音楽ユニット・スキマスイッチが、11月4日に発売した4作目のオリジナルアルバムのタイトルです。
『ナユタ』『フカシギ』・・・
久々に、この言葉というか単語を耳にしました。
初めてこれを習ったのは、ずいぶんと前の事で、その習った時に、「おそらく、この先、一生この単語を使う事も耳にする事もあるまい」と思いました。
そして、月日が経って、その習った事すら忘れていた自分・・・
久々に、この単語を聞いて、習った時に「なんじゃ?こりゃ!」というツッコミを入れながら味わった衝撃と、それだけの衝撃を受けたにも関わらず、すっかり忘れていた自分自身が、なんだかオモシロくて、今回は、この『ナユタ』&『フカシギ』の言葉の意味について書かせていただきます。
・‥…━━━☆
これは、寛永四年(1627年)に吉田光由(みつよし)という和算家が執筆した『塵劫記(じんこうき)』という文献の中に登場するもの・・・
この書物は、数の桁の名称や単位、掛け算や九九などの計算の仕方や、面積の出し方など、いわゆる算術の解説書です。
この一冊で、ほぼ、日常生活に必要な、様々な計算が網羅されているうえ、一般人にもわかりやすく書かれている事から大ベストセラーとなり、さらに、江戸時代を通じて、この本以上の物が登場しなかった事で大ロングセラーにもなり、明治になるまで、何度も出版しなおされた本なのです。
もちろん、江戸時代の多くの学者にも影響を与え・・・いや、今なお、私たちも、これを基本として使っているのです。
一・十・百・千・万・億・兆・京・・・よく使うのは、このあたりまでですね。
そうです・・・この十の位(くらい)、百の位、という数字の桁の名称・・・これが、『塵劫記』の中で紹介されているのです。
もちろん、この桁の名称は、別に吉田さんが創作したわけではなく、中国から伝わっ後、日本でも古くから使われていたわけですが、現在もこの桁の名称が使用されているのは、やっぱり江戸時代に『塵劫記』が大ヒットして、一般庶民にまで数学が浸透した事が基本となっているのでしょう。
・・・で、かの『ナユタ』と『フカシギ』は、兆・京・垓・・・と続く、ず~っと先の大きい桁の名称なのです。
もちろん、スキマスイッチのお二人も、これをご存知で、「無限の可能性へと向かう二人の気持ち」を表現するために、この無限にも近い数字の桁の名称をタイトルに使用されたようです(小耳に挟んだ情報ですが・・・)。
では、ここで、私が「一生使うか!」と思った物も含めて、ご紹介させていただきます。
名称 | 読み | 換算量 |
一(壱) | いち | 1 |
十(拾) | じゅう | 10 |
百 | ひゃく | 10の2乗 |
千 | せん | 10の3乗 |
万(萬) | まん | 10の4乗 |
億 | おく | 10の8乗 |
兆 | ちょう | 10の12乗 |
京 | けい | 10の16乗 |
垓 | がい | 10の20乗 |
禾予(*1) | じょ | 10の24乗 |
穣 | じょう | 10の28乗 |
溝 | こう | 10の32乗 |
澗 | かん | 10の36乗 |
正 | せい | 10の40乗 |
載 | さい | 10の44乗 |
極 | きょく | 10の48乗 |
恒河沙 | ごうがしゃ | 10の52乗 |
阿僧祗 | あそうぎ | 10の56乗 |
那由他 | なゆた | 10の60乗 |
不可思議 | ふかしぎ | 10の64乗 |
無量大数 | むりょうたいすう | 10の68乗 |
「(*1)=のぎへんに予(文字が出ません(。>0<。))」
小学生の皆さんのために説明しますと・・・
10の2乗=百はゼロが二つ着いて100
10の3乗=千はゼロが三つついて1000という事です。
・・・ね!
「なんじゃ?こりゃ!」ってなりますよね。
ついでに、私が同時に習って、さらに「ひぇ~」となった小さい桁もご紹介!
名称 | 読み | 換算量 |
分 | ぶ | 10の-1乗 |
厘 | りん | 10の-2乗 |
毛 | もう | 10の-3乗 |
糸(絲) | し | 10の-4乗 |
忽 | こつ | 10の-5乗 |
微 | び | 10の-6乗 |
繊 | せん | 10の-7乗 |
沙 | しゃ | 10の-8乗 |
塵 | じん | 10の-9乗 |
挨 | あい | 10の-10乗 |
渺 | びょう | 10の-11乗 |
莫 | ばく | 10の-12乗 |
模糊 | もこ | 10の-13乗 |
逡巡 | しゅんじゅん | 10の-14乗 |
須臾 | しゅゆ | 10の-15乗 |
瞬息 | しゅんそく | 10の-16乗 |
弾指 | だんし | 10の-17乗 |
刹那 | せつな | 10の-18乗 |
六徳 | りっとく | 10の-19乗 |
空虚 | くうきょ | 10の-20乗 |
清浄 | せいじょう | 10の-21乗 |
10の-1乗=1分は0.1
10の-2乗=1厘は0.01
ギガもテラも、ナノもピコもメじゃないね!
日本の算術も大したモンです。
「大根を1ゴウガシャ下さいな」
「ローンの金利が1モコになったぜ」
・・・・
言~ってみてぇ~!
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コメント
茶々さま、おはようございます。
これだけ桁の読み方が決まっていれば、超特大インフレが来ても物の値段をちゃんと数えられますね~( ̄Д ̄;;
教育テレビの「にほんごであそぼ」で、一より小さい数を歌にしてました。覚えやすくて面白いですよ。そちらだと、この先更にアラヤ・アマラ(漢字を忘れました)・涅槃寂静と続いてました。
「瞬息」「刹那」等は短い時間をあらわすのにも使いますね。
ところで、お名前のところのイラストは巴御前でしょうか。とてもかっこよくてステキです!
投稿: おきよ | 2009年11月 9日 (月) 08時41分
おきよさん、こんにちは~
たぶん「阿頼耶」「阿摩羅」という字だったと思います。
資料によって、それを含んだり含まなかったり・・・まちまちなので迷いましたが、一応『塵劫記』では入ってないようなのと、学校で習わなかったので入れませんでした(=゜ω゜)ノ
刹那なんて、なんとなく単語をきくだけで切なく(シャレではないです)なる感じがします~
>イラストは巴御前でしょうか
はい、そうです。
お月様より絵柄が少ないぶん、イラストを入れてみました~
投稿: 茶々 | 2009年11月 9日 (月) 09時58分
一番気になったところ。
ナゼ大根?
投稿: ことかね | 2009年11月 9日 (月) 12時15分
「小数点以下の単位の一覧表」を見たのは初めてです。「大きい単位」は知っています。
今日からデザインを変えたんですね。
明るい感じでなかなかいいですよ。
さて、「天地人」も残りあと2回となりました。いよいよ大詰めとなりました。
最終回の後(23日ごろ)に、「天地人」の感想を書く予定です。
投稿: | 2009年11月 9日 (月) 14時50分
すいません。名前を書き忘れました。
P.S.
朝日新聞では今日から夕刊で、「黄門は旅行く」と言う連載コラムが始まりました。
TBSの水戸黄門に関する内容みたいです。
投稿: えびすこ | 2009年11月 9日 (月) 15時02分
ことかねさん、こんばんは~
>ナゼ大根?
スルドイところに喰いつかれてしまいました(@Д@;
とりあえず、ごく普通の買い物風景を想像して→「そう言やぁ、鍋の季節だな」と思い→大根と白菜のどちらかで迷い→大根にした次第です。
投稿: 茶々 | 2009年11月 9日 (月) 18時31分
えびすこさん、こんばんは~
お月見の後の楽しみは紅葉という事で、もみじのデザインにしてみました~
天地人も、いよいよ大阪の陣・・・残り回数から考えて、冬と夏を一度だ済まされてしまいそうですが、とにかく、楽しみですね。
投稿: 茶々 | 2009年11月 9日 (月) 18時39分
こんばんは
昔習ったけどすっかり忘れてました。
こんなんだったんですねぇ。
桁が大きくまたは小さくなるにつれて仏教感を感じます。
空虚、清浄なんて昇天しそうな勢いですね( ´艸`)
投稿: 花曜 | 2009年11月 9日 (月) 22時07分
花曜さん、こんばんは~
花曜さんも、やっぱり忘れておられましたかww
今回の私は・・・
習った時には、あんなに衝撃的だったのに、それをすっかり忘れていた自分に衝撃を受けました┐(´-`)┌
投稿: 茶々 | 2009年11月10日 (火) 00時42分
実生活の中で、庶民が使う単位なんて、せいぜい億ぐらいでしょう。国家予算とか世界的な組織の予算などで何十兆て数字を耳にするけど、正直なトコロ…額が大き過ぎてピンときません。金銭的な数値に限らず、モノの大きさや距離を表す場合でも、何万メートルとか何億光年と使うぐらいで、ナユタだのフカシギだのなんて単位は使いませんね。それこそフカシギなんて単位は不可思議な超常現象を表現するときにしか使えそうもない単位の様な気さえします。
投稿: マー君 | 2009年11月10日 (火) 03時24分
マー君さん、お早うございます
私は、億とも無縁です。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
投稿: 茶々 | 2009年11月10日 (火) 10時53分
茶々さま、こんにちは。
一つ訂正おねがいします。「無料大数」→「無量大数」です。
数学の成績は悪かったくせに『学研の図鑑 数学』などを結構読んでいたので、大河ドラマで信西さんが床に棒を並べてあやしい儀式をしてても「計算をしているのだな」と分かりました。
「分」と「割」の使い分け、算術の世界では「分」、日常では「割」なのだと思いますが、確信はもてません。ちなみに度量衡の「寸」の十分の一も「分」ですね。
ちなみに江戸時代の「一倍」は×1ではなく×2。
投稿: りくにす | 2012年6月27日 (水) 17時25分
りくにすさん、ありがとうございます。
訂正しときました。
りくにすさんは、やっぱりお若い方なのかな?
我ら昭和世代も「一倍」を言葉にした場合は「×1」ではなく「×2」だったような??
まぁ、言い回しの場合は地方によっても違うと思いますが…
投稿: 茶々 | 2012年6月27日 (水) 17時59分
不可思議という言葉が単位のことだったとは、驚きです。
小学校の頃に見た算数のドリルには、じょ から無量大数にとんでいたような。
初めて見た単位にテンションが上がったのを覚えています。
漢字から見ると、大きい桁の方はどんな意味があるのか良くわかりませんが、小さい方は空虚や弾指など雰囲気がある字ですね。
BUMP OF CHICKENのStage of the groundという曲の中にも那由他が登場するんですが、ずっと意味を知らずに聞いてました。
てっきり宇宙空間みたいなものかとばかり……。
投稿: ティッキー | 2012年6月29日 (金) 18時36分
ティッキーさん、こんばんは~
ホント、数字の不可思議ですよね~
私は「しゅんそく」と聞いたら、あの、小学生に大人気の靴しか思い出せません。
投稿: 茶々 | 2012年6月29日 (金) 20時09分
茶々さん、こんにちは。
私の場合は世代と言うよりたぶん育ちの問題です。
父がエンジニアで、「シクラメンに香りなんてあるか?」という詩情のない家でしたから。
「一倍」が×2になるのは「人一倍」のときだけ。
あ、もひとつ訂正がありました。
「須」→「須臾」です。私なら「朱臾」(植物名)と書いてしまいそうです。
ところでこの項で『聖闘士星矢』の黄金聖闘士編を思い出したのは私だけではありませんよね。
投稿: りくにす | 2012年6月30日 (土) 10時40分
りくにすさん、こんにちは~
「一倍」が×2だと感じてしまうのは、単に「倍」と行った時には×2の事だからですかね??
その場合、略しているのは「2」ではなく「1」ですからね~
言葉の妙です。
訂正ありがとうございました。
投稿: 茶々 | 2012年6月30日 (土) 13時48分
茶々様
お久しぶりです。
でも、いつもブログは読んでいますよ^^。
きょう、子供が学校で数字の単位を習ったと「もしもしかめよ」の唄にあわせて「♪一十百千~♪」と歌っていました。
大きい方も小さい方も唄って覚えるようです。
このネタ、先日仕事中に使わせていただきました。
ギガとかテラとか言うよりも口に優しい言葉で日本語って言いなぁと改めて思いました^^
また遊びに来ますね^^
投稿: さとな。 | 2013年1月24日 (木) 15時47分
さとな。さん、こんばんは~
へぇ~歌で覚えるんですか…
なるほど…
でも、ついこの間まで、HDDがメガバイトじゃ何じゃと言ってたのに、いつの間にやらテラバイトが普通になっちゃいましたね。
おっしゃる通り、日本の言い回しだと、優しい気がしますね。
投稿: 茶々 | 2013年1月24日 (木) 20時32分