忍者の教科書『万川集海』~服部半蔵の命日に因んで
慶長元年(1596年)11月4日、徳川家康の配下で伊賀衆の棟梁となって活躍した服部半蔵正成が55歳の生涯を閉じました。
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ご存知、伊賀忍者の服部半蔵(はっとりはんぞう)ですが、実際には、この服部半蔵という名前は、服部家が代々受け継いでいく名前なので、複数の服部半蔵さんが存在するわけですが、一般的には、徳川家康とともに江戸入りして、その配下となって活躍した二代目・服部半蔵である正成(まさなり)の事を指します。
・・・てな事は、未だ書き足りない部分はあるものの、一応、すでに書かせていただいていますので・・・
- 服部半蔵さんについては2006年11月4日の
【服部半蔵に影はあったか?】で>> - 伊賀忍者と甲賀忍者については2008年12月2日の
【意外に仲良し?伊賀忍者と甲賀忍者】で>>
・・・で見ていただくとして、本日は12月2日のページにもチョコッと登場した忍術伝書『万川集海(ばんせんしゅうかい)』について書かせていただきます。
『万川集海』とは、「すべての川は海に集まる」という意味で、延宝四年(1676年)に、伊賀忍者の上忍・藤林長門守の子孫とされる藤林保武(ふじばやしやすたけ)という人が著した書物・・・
その序文に・・・
「伊賀・甲賀の11人の忍者の裏ワザや秘密アイテムの、悪いところは除き、良いところだけを厳選し、名将が編み出した秘策などをあますことなく集めて・・・」
と、あるように、まさに、流派を超えた忍者の教科書ともいえる物で、かの服部半蔵の言葉なども掲載されているのです。
残念ながら、原本はありませんが、複数の写本は今も残っているようです。
それぞれの内容は微妙に違うものの、おおむね7巻に分かれます。
- 「序文」「凡例」「目録」「問答」
- 「正心(しょうしん)」
- 「将知(しょうち)」
- 「陽忍(ようにん)」
- 「陰忍(いんにん)」
- 「天時(てんじ)」
- 「忍器」
忍者の心構えだけでなく、天文学のような科学的な知識、実際の行動方法、そして秘密道具などなど・・・
その中でも、「忍器」で紹介されてる鉄砲についての記述が興味深いです。
なんとなく、忍者と言えば、手裏剣や撒菱(まきびし)、鎖鎌(くさりがま)なんて武器を思い浮かべますが、意外と鉄砲っていうのも、忍者御用達なんですね。
そう言えば、織田信長が朝倉義景を攻めた金ヶ崎城の攻防戦からの撤退(4月27日参照>>)の途中で、まさに危機一髪の狙撃を受けますが、火縄銃で信長を撃ったその犯人は杉谷善住坊(すぎたにぜんじゅうぼう)・・・甲賀忍者だったと言われていますよね。
また、信長の鉄甲船完成のページ(9月30日参照>>)で、最新鋭の大砲を完成させた事をご紹介した近江・国友村の鍛冶職人・・・甲賀はもちろん、伊賀とも大変近い場所ですから、おそらく、他よりも、いち早く手にした事も想像できますね~。
また、東京・新宿区には鉄砲坂と呼ばれる坂がありますが、ここは、江戸時代に伊賀者の屋敷が建ち並んでいた場所で、その訓練場が近くにあったから、その名がついた・・・なんて話もあります。
ただ、『万川集海』では、その撃ち方の技術的な記述よりも、火薬の調合や弾の製造法に重きを置いているようです。
そりゃそうですね。
撃ち方なら、武将や鉄砲隊なども訓練するでしょうから、忍者たるもの、それ以上の+αを習得しておかなくてはいけませんからね~。
「皮袋に砂を固く詰めた物を玉状にして・・・」
なんて記述を見ると、もはや散弾銃ですよね。
それでは、最後に、『万川集海』から名言を一つ・・・
「およそ兵は国の大事 死生(ししょう)存亡の危機なり」
兵=軍事は、国の一大事で死ぬか生きるかだ~~
・・・て、これは孫子の「始計篇」(4月5日参照>>)のパクリでは?
なんて、硬い事を言うのは、やめときましょう・・・国を越えても、時代を超えても、名言は名言だという事で・・・。
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コメント
忍者っていったいどの位のことが出来たのかなぁ。海上を歩いたり、空を飛んだり、いきなり消えたり・・・これは全部マンガ、ドラマ、映画の中のお話で、実際は超運動神経の優れた、頭のいい人たちの集団だったのかな。
投稿: Hiromin | 2009年11月 4日 (水) 20時46分
Hirominさん、こんばんは~
今で言うところのマジックみたいなもんでしょうね。
一瞬不思議に思うけど、タネ明かしされると「な~んだ」って感じの・・・
でも、マジックだって、タネがわかったからと言って、すぐにできるものではなく、うまくダマすには、訓練が必要ですもんね。
投稿: 茶々 | 2009年11月 4日 (水) 23時14分
羽柴茶々さんお久しぶりです!
『万川集会』…なかなか読み応えありそうですね。興味深い。 大学受かったら探してみようかな。
私の考える忍者は独特の戦闘技術を駆使する暗殺・諜報なんでもありのハイスペック人間かつ最新鋭の技術を持ったハイテク人間てとこです(笑)
説明しにくいですが、身体の使い方が上手だったんでしょうね 古武術的な、あの感じの動きをよりシャープに、スムーズに、サイレントにできたのかな。派手じゃないけどかっこいいっていう感じ…ああ駄目だ 説明訳分からん(苦笑)
ダラダラ変なコメント書いて申し訳ないです(汗)
投稿: ryou | 2009年11月 9日 (月) 00時56分
ryouさん、こんにちは~
何となくわかります。
今で言うとこのSATとか、レンジャー部隊みたいな感じではないですか?
シティハンターもアリかな?
もちろん、海坊主でもOK!
投稿: 茶々 | 2009年11月 9日 (月) 08時15分
シティーハンター ・・・いい例えですね!海坊主だと外見が目立ちすぎてしゃーないと思いますけど(笑)何かモヤモヤしたものがすっきりしました。ありがとうございます!
投稿: ryou | 2009年11月 9日 (月) 17時35分
ryouさん、こんばんは~
私の中では・・
海坊主=三好清海入道とでキャラがかぶってます。
勝手な想像ですが・・・
投稿: 茶々 | 2009年11月 9日 (月) 18時46分