やっぱり気になる?大安・仏滅って何よ
昭和十六年(1941年)5月31日、内務省が、大安・仏滅などの日の縁起や暦に附随する迷信などを偽暦=「迷信暦」として、発売を禁止して取締りました。
・・・・・・・・・
結婚式は大安の吉日が良い・・・とか
友引の日には葬式は避けよう・・・とか
っていうヤツですね。
コレって、今でもあちこちで見かけるような気がするんですが、一応、公共の機関では、「迷信暦」としてカレンダーなどには記載しないって事に、今もなってるのだそうです。
まぁ、現代人の私たちにとっては、それを「信じている」というよりは、「どうせするなら縁起の良い日にやったほうがいいかな?」程度の物だと思いますが・・・
・・・で、とにかく、このような吉日や厄日なんていうのは、ずいぶん昔からあって、あの万葉の頃には、旧暦の3月3日が「シガノ悪日」と呼ばれる「何をやっても悪い日」とされていて、その厄払いのために、皆で花見に出かけて英気を養ったのが、お花見の始まり・・・なんて事を以前書かせていただきました(3月30日【お花見の歴史は万葉から】参照>>)。
また、平安時代に流行った末法思想から、何か事があると儀式やお祓いをして難を逃れようとし、果ては、陰陽師の作った「占いカレンダー」に従って、毎日の生活を送る人までいて、「今日は外に出てはいけない日」とされると、仕事まで休んじゃった・・・なんて話もさせていただきました(2月2日【藤原頼通と平等院と末法】参照>>)。
さらに、戦国時代には、軍師と呼ばれる側近が、「今日は日が悪いので出陣はやめましょう」「今日は方角が良い西から攻めましょう」などと指導していた・・・なんて事もありました(5月23日【軍師のお仕事・出陣の儀式】参照>>)。
そう言えば江戸時代には、丙午(ひのえうま)の女性はうんぬん(12月28日【八百屋お七と丙午】参照>>)・・・なんてのもありましたが、こういうのも、縁起をかつぐ程度ならほほえましいですが、あまりにソレに縛られたり、丙午のように誰かの生まれた日のせいにしたりするのは、どうもいただけませんねぇ。
・・・そんなこんなで、江戸時代までの暦=カレンダーには、陰陽五行説や十干十二支(2007年11月9日参照>>)なんかに基づいた日時の吉凶やその日の運勢など暦注(れきちゅう)と呼ばれる注意書きが書かれていたわけですが、ご存知のように明治五年(1872年)、日本近代化への一環として、それまでの太陰太陽暦に代わって、西洋式の太陽暦=グレオリオ暦が採用される事になり(2006年11月9日参照>>)、それにともなう一般庶民のすみやかな移行のためにも・・・と、これまでの迷信的な暦注は、カレンダーには書いてはいけないという事になったわけです。
しかし、その時に、「六曜(ろくよう)」だけは、迷信の類ではないとされ、引き続きカレンダーに記載された事で、爆発的な人気を呼び、そのまま残ったために、今回の昭和十六年(1941年)5月31日の「迷信暦の発売禁止」となったのでしょうが、一方では、かの明治の太政官布告には「一切相成らず候」とある事から、「やはり、その時点で禁止されている」との見方もあります。
・・・で、今回の大安や仏滅などの六曜とは・・・
古代中国で生まれた当時は、六壬(るくじん)という時刻の吉凶を占うものでしたが、これが、日本に伝わる時に、日の吉凶を占う物へと変化し、江戸時代末期頃から暦に書かれるようになったのだとか・・・
それは、六つの星が
先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口
と順に巡ってくるのですが、旧暦では、月ごとにリセットされ、「毎月の朔日(ついたち)が何」という風に決まっていたのですが、現在では、月ごとのリセットはなくなり、この六つが順ぐりに巡ってくるようです。
では、一応、その意味を・・・
- 先勝(せんかちせんしょう):
「先んずれば勝ち」=つまり早いほうが良いという事で、何事も午前中に済ませるのが吉とされている日です。 - 友引(ともびき):
「悪い事に友達を引っ張りこんじゃう」という事でお葬式は避けるべき、また、勝負の決まらない日でもありますが、とりあえず、朝晩は吉で、正午は凶とされています。 - 先負(せんまけ・せんぷ):
「先んずれば負け」という事で、勝負事はなるべく避け、相手から仕掛けられてから・・・予想通り、午前は凶で午後からは吉となります。 - 仏滅(ぶつめつ):
「仏も滅ぶような最悪の日」という事で、決してお釈迦様の命日ではありません・・・この日は、葬式だけはお見逃しで、あとは何をやっても凶です。 - 大安(たいあん・だいあん):
もともとは「泰安=大いに安し」という事で、何をやってもうまくいくって事で、結婚や就職や建築や旅行、お店の開店なんかも、この日にすると良いとされます。 - 赤口(しゃっく・しゃっこう):
赤口と羅刹(らせつ)神という恐ろしい鬼の事で、その鬼が悩み事をまき散らす日なので何をやってもうまく行かないとされ、正午以外は凶・・・特に、祝い事は大凶だそうな・・・
んん???
・・・って事は、6分の1が仏も滅ぶ最悪の日で、さらに6分の1が鬼が暴れる日、そして、午前・午後それぞれダメな日が一日ずつあるので、これを足して一日とし、そこに大安以外の日は、どこかしらの時間帯がダメとなると・・・
なんと、2日に1日以上は、何もやってはいけない事になるではないのか?!
それでは、さすがに日々の生活が成り立たん・・・という事で、やっぱり、信じるのはほどほどに・・・
ちなみに、本日、2010年5月31日は先負・・・って事で、午前中は何をやってもダメな日ではありますが、この記事は、午前中にupしますww
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コメント
こんにちは。
「友引」に某宗の僧侶ゴルフコンペが
開催されているとか。
友引には葬儀の予約が入りませんから。
昔は火葬所も、友引が休業という所も
ありましたが。(現在は違います)
「宝くじ」も大安吉日だから、買って!
買って!とメガホンで、呼び込みしています。仏滅より当たる?
総理の引退表明も大安を選ぶ?
投稿: やぶひび | 2010年6月 4日 (金) 16時35分
「赤口の日は火事に気をつけよう」と言う話を聞いた事があります。
「大安」の日は投資家にとっては気をつける日かも。「おおやす」とも読めるので。実際に株価が大幅安になる事がよくあるので。
「友引」に通夜・葬儀をしてはいけないと、慣習になったのはいつからでしょうかね?
投稿: えびすこ | 2010年6月 4日 (金) 20時21分
やぶひびさん、こんばんは~
鳩さんの引退は、友引にやってもらって、ごっそりと道連れにしていただきたかったですね。
投稿: 茶々 | 2010年6月 4日 (金) 21時24分
えびすこさん、こんばんは~
六曜が重視されるようになるのは、やっぱり明治以降ではないでしょうか?
本文にも書かせていただいた通り、それまでは様々な暦注がありましたから、その中で六曜が特に重視されていたとは考え難いので・・・
投稿: 茶々 | 2010年6月 4日 (金) 21時27分
我が家はクリスチャンなのでこういう事に殆ど関係ないですが、友引の日は火葬ができないので父の火葬は一日遅れました。母方の祖父は無視して火葬をしましたら不思議なことに年寄りがその日に亡くなりました。
https://www.kaigaikakibito.com/blog/disliked-japanese-food/
これは食事に関してなので直接関係ないですが、この例を見ても日本はよくわからないと欧州の知り合いは皆言います。世界の常識は日本だけ非常識です。クリスチャンの私もよくわかりません。特に暦については全然です。
投稿: non | 2020年6月10日 (水) 10時31分
nonさん、こんばんは~
人は、200年も300年も生きられません。
年が寄れば、いつかは死にますから…
食べ物に関しては、お互い様だと思いますよ。
それぞれに、その国の常識がありますが、それが世界の常識では無いという事だと思います。
投稿: 茶々 | 2020年6月11日 (木) 01時34分