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2010年6月 1日 (火)

天正十年6月1日~本能寺・前夜

 

上京の内裏前に、長さ八町(約110m)の馬場を設置し、時の正親町(おおぎまち)天皇の前で、ド派手な一大軍事パレード・御馬揃えから1年2ヶ月・・・織田信長にとっては、久しぶりの入京でした。

今回の信長は、いつも護衛する馬廻衆(うままわりしゅう)も伴わず、わずかの小姓と側近だけを連れて、宿舎の本能寺におりましたが、すでに本拠を置く安土では、配下の羽柴(豊臣)秀吉が攻める中国地方を支援するための軍備が整えられつつあり、4日には、その大軍を率いて西国へと出陣する予定でした。

前日の雨もあがった天正十年(1582年)6月1日・・・博多から訪れていた豪商・島井宗室(そうしつ)を招いて、信長は名物茶器の披露を兼ねた茶会を催します。

以前、【本能寺の変と堺の関係】のページ(1月9日参照>>)で、この時の信長が、すでに西国への出陣準備が安土にて、ほぼ整っているにも関わらず、単身で本能寺に入った理由として、この宗室の博多への帰郷が翌日の6月2日であったからではないか?と書かせていただきました。

当時、天下の三大名器と呼ばれた初花(はつはな)新田(にった)楢柴(ならしば)という三つの茶入れ・・・このうち初花と新田は、すでに信長が所有しておりましたが、残る楢柴を持っていたのが宗室です。

Odanobunaga400a 信長は、宗室が帰ってしまう前に、どうしてもコンタクトと取りたいと思い、大軍を安土に置いたまま、京へと入り茶会を開いたのではないか?という事です。

もちろん、今もこの可能性は充分あるわけですが、ここ何年かで、新たな発見があり、もう一つの理由も囁かれるようになりました。

それは、東京国立博物館に所蔵されている『日々記』という公家の日記・・・この日記の存在自体は、ずっと以前から確認されていたのですが、長い間、これが誰の日記かわからなかったために、あまり注目されていなかったのです。

ところが、近年の研究によって、これが勧修寺晴豊(がしゅうじはるとよ)という公家の日記の一部である事が判明し、そこに重大な事実が書かれている事がわかったわけです。

それは、天正十年当時の朝廷の動き・・・3月に甲斐(山梨県)の武田を滅ぼした(3月11日参照>>)信長に対して、「何かの官につけなければ・・・」という話が朝廷内で持ち上がり、その意向を打診するために、晴豊自身が安土へと赴き、この5月6日には直接対面して「征夷大将軍か?太政大臣か?」の答えを得ようとしていたというのです。

ただ、その時の信長からは、どちらとの返事は受け取れなかった・・・つまり、信長は、4日に出陣する前に、その返答を朝廷にしなければならなかったわけで、それが単身入京の理由の一つではないか?という事です。

そこで、にわかに明智光秀の謀反の理由も、一つ浮かび上がってきます。

すでに、何らかの形で、信長の心の内を「征夷大将軍を希望する」と確信していた光秀・・・源氏の流れを汲む土岐氏の出身である光秀にとって、当時、平姓を名乗っていた信長の征夷大将軍はなんとしてでも阻止したかったのでは?・・・

まぁ、これも仮説の一つ・・・以前からチョコチョコ書かせていただいている通り、個人的には、この光秀の謀反には、あまり計画性を感じないので、私としては、やはり衝動的だったような気がします。

そんな光秀の心を知ってか知らずか、信長の催した茶会は、夕刻から長男の織田信忠一行も加わり、酒宴と化して盛り上がります。

やがて、夜も更けていき、信忠が宿舎の妙覚寺に戻る頃には、酒宴もおひらきとなります。

Goban1cc 人もまばらとなり、静かな夜を迎えた本能寺の一角で、信長は、囲碁に興じていた本因坊算砂(ほんいんぼうさんさ)鹿塩利賢(かしおりけん)対局を眺めます。

算砂は、京都寂光寺本因坊の僧で、碁の初代名人として有名な人物・・・『ヒカルの碁』でも有名ですが・・・)

ある時、信長は算砂に五目置いて(弱いほうが、あらかじめいくつかの石を置いてから打ち始める事)打ちはじめますが、まったく勝負にならず、軽くかわされたため、その後は、算砂の事を「名人」「名人」と読んで、囲碁の師と仰いでいたのだとか・・・

以来、本因坊は世襲となり、第21代本因坊秀哉まで続きますが、昭和十四年(1939年)の秀哉の引退後は、世襲を廃止し、実力による選抜制となり、本因坊は優勝者に与えられるタイトルとなりました。

・・・で、この夜の算砂と利賢の大局・・・三勃(さんごう)という、いつまでたっても勝負がつかない局面が現われます

お互い「不思議な事もあるものだ・・・」と思いつつ、結局、その夜は「勝負なし」という事になって、ふたりとも帰宅し、信長も眠りにつきました。

その頃、前日の雨によるぬかるみをひた走る軍団・・・旧暦の1日ゆえ月はなく、漆黒の暗闇の中、3隊に分かれた軍団は、山城国への国境を越え、一路、本能寺へと向かいます。
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●ルートは4月7日【明智越・体験記】を参照してね>>

●これまで登場している本能寺の変・関連のページ
 ・本能寺の変~『信長公記』より
 ・八上城攻防戦は光秀の謀反のきっかけとなったか?
 ・愛宕山での連歌会の句は本能寺の意思表明か?
 ・数時間のタイム・ラグを埋める物は?
 ・本能寺の変・秀吉黒幕説
 ・堺にいた徳川家康黒幕説
 ・家康暗殺計画(431年目の真実)説
 ・本能寺から逃亡で「人でなし」~織田長益の歩く道
 ・信長の首は静岡に?
 ・明智光秀と斉藤利三と長宗我部元親と…
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戦国・安土~信長の時代」カテゴリの記事

コメント

┗(^o^)┛パーン アクセス200万件達成おめでとうございます(祝)。
天下統一目前で本能寺で茶会をしたほどの、余裕ぶりだったんでしょうね。
NHK大河ドラマでは取り上げないですね。
今で言えば海外遠征前の壮行会パーティーですかな。そういえばW杯目前ですが、あまり期待できません。

投稿: えびすこ | 2010年6月 1日 (火) 15時47分

こんばんは。
タイムリーなのは当たり前なのですが、なんだかドキドキしますね。
私が起きる頃には光秀が攻めてきているかもしれません(笑)
あすも楽しみにしています♪

投稿: 花曜 | 2010年6月 1日 (火) 23時29分

えびすこさん、祝詞、ありがとうございます。

>NHK大河ドラマでは・・・

炎に中で敦盛を舞ってるところは、よく見ますが、茶会のシーンは、あまりないですね。
あと、本来ならとても重要な信忠も、ほとんど出てきませんねぇ。
信長が死んだだけでは天下は動かないので、来年は、信忠についても、しっかりフォローしていただきたいと願っております。

投稿: 茶々 | 2010年6月 2日 (水) 03時02分

花曜さん、こんばんは~

>私が起きる頃には・・・

窓の外に水色桔梗が見えたらヤバイですよ(笑)
いつも、コメントありがとうございます。

投稿: 茶々 | 2010年6月 2日 (水) 03時05分

こんにちわ~、茶々様。

(祝)アクセス200万件 突破ヽ(*≧ε≦*)φ
毎日 店に行きPCを立ち上げ このブログを拝見するのが楽しみです。これからも健康に気を付けて続けてください!

>平姓を名乗っていた信長
えっ、平性を名乗っていたんですか?
なぜに?

投稿: DAI | 2010年6月 2日 (水) 11時13分

DAIさん、こんばんは~
お祝詞ありがとうございます。

>平性を名乗っていたんですか?

そうなんです。

まぁ、戦国大名もあまたいるので、中には武田信玄のように由緒正しき鎌倉時代からの守護大名もいますが、多くは主家を倒してのしあがってきた人たちで、その血筋というのがはっきりしないわけで、結局、徳川家康のように「新田(源氏)の流れを汲む」とかって本人の主張がまかり通ってしまってるのが現状です。

そんな中で、信長は、はじめ「藤原」を名乗ってましたが、途中から「平」に変わってます(笑)

確か・・・
2007年12月19日の【秀吉が豊臣の姓を賜る】>>のページでチョコッと書かせていただいているので、また、見ていただくとありがたいです。

投稿: 茶々 | 2010年6月 2日 (水) 23時26分

こんにちわ、茶々様。
2007年12月19日の【秀吉が豊臣の姓を賜る】の記事 見てきました。

こ、こんな面白い記事を見落としていた私は・・・(*´v゚*)ゞ

また新しい発見に茶々様に感謝です。

投稿: DAI | 2010年6月 3日 (木) 13時49分

DAIさん、こんにちは~

見ていただいたんですか?
ありがとうございます。

もう、2年半も前のページですからね~

私も・・・「どこかで書いたけど、どこで書いたっけ???」
と、ちょっと探してしまいました(*´v゚*)ゞ

投稿: 茶々 | 2010年6月 3日 (木) 15時08分

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