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2010年7月30日 (金)

真夏の夜の怪談話2~会津若松・新町化物屋敷

 

本日も「真夏の夜の怪談話」と参りましょう。

昨日は、有名な「播州皿屋敷」(昨日のページを見る>>)をご紹介させていただきましたので、本日は、少しマイナーはお話・・・だけど、好きなお話をご紹介させていただきたいと思います。

・‥…━━━☆

加藤嘉明(よしあき)が鶴ヶ城の城主だった慶長の時代・・・城の西方の新町という所に、あるお屋敷がありました。

その屋敷の主人は、歌が大好きで、同好の友を誘っては、自宅で連歌会を催しておりました。

ある時、その連歌会に出席した近くの寺の小僧が・・・

♪今宵の月は 空にこそあれ♪

と詠んだところ、周囲からはたいへんな酷評・・・

「月は今宵でなくとも空にあるだろうが!」
とか、
「お前、月が地べたにあるのを見た事あんのかよ!」
と、散々にからかわれてしまいます。

小僧は、恥ずかしさのあまり、その場から逃げるようにして寺と戻り、恥をかかされたという怒りをそのままに、首を吊って死んでしまったのです。

その夜からです。

新町のそのお屋敷には、どこからともなく、小僧の声が聞こえてくるのです。

♪今宵の月は 空にこそあれ~♪

と、句を詠んだかと思うと、一瞬の間をおいて、
「わ~~っ!」
という、泣き声とも叫び声とも聞こえる大きな声が響きわたる・・・

それが、一晩中、しかも、毎夜毎夜なのですから、主人はたまったもんじゃありません。

恐怖におののいた主人は、霊験あらたかな修験者を呼んで祈祷してもらいますが、それでも、不気味な声は止みません。

さらに、その夜、同席していた皆とともに、小僧のお墓参りにも行き、当日の大人気ない振る舞いを、心から詫びたりもしましたが、やっぱりダメ・・・。

結局、主人一家は、その家を手放し、どこへともなく引っ越して行ったのです。

空き屋になったその家は、いつしか「新町化物屋敷(しんまちばけものやしき)と呼ばれるようになります。

それから、どれくらいの年月が経ったでしょうか・・・

ある、ひとりの侍が、その家に入居する事になりました。

もちろん、その家のウワサを知っての事です。

いや、むしろ、その声だけの幽霊の出現を待っていた・・・そんな豪快な心の持ち主だったのです。

かくして、入居当日の夜・・・
庭に面した部屋に陣取り、その時を待つ侍・・・

夜半過ぎから小雨が降り、風もそよそよと・・・
庭の笹の葉が、その風に揺れてザワザワと・・・
絶好のシチュエーションとあいなりました。

・・・と、そこへ、庭のほうから、寂しげな声・・・

♪今宵の月は 空にこそあれ~♪

・・・と、侍は、その歌を聞いたが早いか、小僧が「わ~~」声を発するよりも早く、庭に面した障子戸を開け放つと・・・

すかさず、
♪影うつす 水は氷に とぢられて♪
と、下の句を詠んだのです。

月影を映すべき水面が、氷に閉ざされている冬なら、月は、ただただ空に掛かるしかない・・・と、見事に、アノ夜、愚作と言われた小僧の上の句を生かしてくれたのです。

もはや、小僧が「わ~~~」と叫ぶ事はありませんでした。

「新町化物屋敷」の幽霊は、新しいご主人のもと、成仏したのでした。

・‥…━━━☆

いいですね~。

見事、解決!

呪われた側が幽霊にとり殺されたり、あるいは、今回のような豪傑が登場しても、ただ、有無を言わさず化物を退治してしまう・・・

そんな感じの結末が多い怪談話の中で、これは、見事なまでにスッキリさせてくれます。

なんとなく、「怖い」というよりは「良かったね」と言いたくなるような、心和む感じの怪談でした。
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コメント

いい話ですね。亡くなった小僧さんも浮かばれることと思います。怪談は無念さが強調されがちですが、このように浮かばれる話だとホッとします。

投稿: 露草 | 2010年7月30日 (金) 13時15分

今日はこころ温まるエピソードでした
きっと成仏されたでしょう

投稿: みか | 2010年7月30日 (金) 19時37分

露草さん、こんばんは~
ホントです
ゾッとするより、ホッとするお話です(^O^)

投稿: 茶々 | 2010年7月30日 (金) 21時22分

みかさん、こんばんは~
小僧さん…きっと成仏されたと思いますね~良かったです

投稿: 茶々 | 2010年7月30日 (金) 21時25分

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