真夏の夜の怪談話~播州皿屋敷
昨日の大阪は、少々曇り気味のおかげで、あのカンカンした日差しは無かったものの、相変わらずの暑さ・・・
毎日、寝苦しい夜が続いております・・・って事で、
寝苦しい夜のお供と言えば、背筋も凍る怪談話・・・
お盆にはちょっぴり早いですが・・・お馴染みの「播州皿屋敷」と参りましょう!
・‥…━━━☆
頃は永正元年(1504年)頃・・・播州(ばんしゅう・兵庫県西部=播磨)姫路城の城主が未だ18歳の小寺則職(こでらのりもと)の時代、家老の青山鉄山(あおやまてつざん)が謀反をくわだてます。
もちろん、謀反なので、その行動は水面下で行なわれていたわけですが、それを嗅ぎつけたのが、青山家の女中・お菊・・・
慌てて、恋人の衣笠元信(きぬがさもとのぶ)に知らせます。
この元信は、誰もが知る播州きっての忠臣・・・早速、藩主・則職を密かに脱出させ、事なきを得ました。
しかし、この時点では、まだ、謀反が表面化したわけではありませんから、その後の鉄山の動向を探るためにも、お菊はそのまま青山家に戻り、再び、何食わぬ顔で女中としての毎日を送っていました。
しかし、ついにお菊の一連の行動が、町坪弾四郎(ちょうのつぼだんしろう)という人物にバレてしまいます。
前々から、お菊の美しさに魅了されていた弾四郎は、そのスパイ行為をネタに、お菊に結婚を迫ります。
もちろん、はなから元信という恋人がいるお菊が、そんな結婚を承諾するわけがありません。
腹を立てた弾四郎は、お菊が管理している青山家の家宝の皿・・・10枚セットのうちの1枚を隠してしまいます。
驚いたのは、お菊です。
大事な家宝の皿・・・最近は触った事もないはずなのに、いつの間にやら、1枚足りない・・・
「こんな事、ご主人様に知られたら、お手打ちになってもしかたがないワ、どうしょましょう」
そこへ弾四郎・・・
「俺の言う事、聞くんやったら、皿を見つけたるで~」
「ハハ~ン」
そんなもん、誰だって気づきます。
しかし、そうなると、意地でも言う通りになんてなるもんか!と思うものです。
言う事を聞かないお菊に、怒り狂った弾四郎は、彼女に襲いかかり、引きずり出して城内の松の木に吊るし、拷問の末に殺害・・・遺体を、近くの井戸に投げ捨てました。
それからというもの・・・
姫路城内のとある井戸から、毎夜毎夜、悲しげな女の声が聞こえるようになったのです。
「1枚、2枚、3枚・・・・」
9枚まで数えると、その声はピシャリととまり、ガシャーンと、皿らしき物が割れる音が城内に響きわたります。
そしてまた、
「1枚、2枚、3枚・・・・」
と、くりかえされますが、何度くりかえしても、その数が10枚になる事はありませんでした。
さらに、毎年、お菊が殺された梅雨の頃になると、彼女が吊るされたあの松が、枯れたような茶色い色に変色し、人々は「梅雨松(ばいうのまつ)」と呼んで恐れたと言います。
そして、寛政七年(1795年)には、後ろ手に縛られたように見える「お菊虫」が、姫路城下で大量発生したのだとか・・・
・‥…━━━☆
・・・と、伝説はここまでですが・・・
そんな伝説が、更なる伝説を呼んで、いつしか、このお菊の物語は、「番町皿屋敷」と題したお芝居となり、江戸の人々の涙を誘うと同時に、興行としても大成功・・・全国ネットの人気怪談話となるのです。
現在の姫路城にも、「お菊井戸」と呼ばれる井戸がありますが、全国的にも、この皿屋敷伝説の残る井戸は48箇所もあります。
また、「お菊虫」と呼ばれた虫も、ジャコウアゲハのサナギであろうという事・・・
さらに、この「お菊井戸」と呼ばれる井戸は、実は、城主の住居である備前丸から通じる、まさかの時のための抜け穴の出口であり、その秘密を守るため、人が近づかないように、恐ろしい噂を流した・・・なんていう、別の伝説も存在します。
・・・とは言え、多くの人が、この恐怖の伝説を信じ、哀れなお菊に成仏してもらおうと「於菊大明神」として、現在もいくつかの神社の境内に祀られています。
まぁ、私個人的には、上方落語にある、このお話をモチーフにした「オモシロイ皿屋敷」のお話が大好きで、「播州皿屋敷」も「番町皿屋敷」も、あまり怖いとは思わない怪談なんですが・・・
そもそも伝説という物は、それが真実かどうかという事よりも、今なお語り継がれている事にこそ意義があり、これからも、語り継いでいきたい歴史の1ページではあります。
*「オモシロイ皿屋敷」のくわしい内容は、上方落語のHP=「世紀末亭」さんの【皿屋敷・春団治】で>>(別窓で開きます)
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コメント
今日の関東は気温が下がったものの、台風並みの悪天候です。(;´д`)トホホ…
お菊さんの話は500年も前なんですね。
歌舞伎でも有名なお岩さんが江戸時代。
お盆は稲川さんの季節ですが、千葉マリンスタジアムで特別怪談ばなしをやるそうです。
雰囲気を出すため照明を消すんでしょうか?
でも、ひところより「怪談映画」が減りましたね。1990年代後半は夏場に毎年あった記憶があります。今は深夜ドラマで怪談を放送しているようです。
投稿: えびすこ | 2010年7月29日 (木) 15時43分
えびすこさん、こんばんは~
ホントですね~
以前は、夏になると時代劇の怪談シリーズがありましたが、最近はやりませんね~
やっぱり都市伝説のほうが、身近なウワサのような感じで人気があるんでしょうかね。
真夜中にカランコロンと下駄の音が近づいてくる「牡丹灯籠」なんか…好きでしたね~
投稿: 茶々 | 2010年7月29日 (木) 22時22分
お菊が割った皿が気になります・・・
鍋島焼の皿だったんでしょうか・・・?
投稿: 兎家 | 2010年7月30日 (金) 19時39分
兎家さん、こんばんは~
やっぱり、怪談と言えば化け猫も気になりますね~
投稿: 茶々 | 2010年7月30日 (金) 21時17分