初午の日と稲荷信仰
今日は初午(はつうま)ですね。
初午とは、毎年2月の初めての午の日に行われる稲荷神社の祭礼・・・この日に稲荷神社に参拝する事を初午詣と言い、場所によってはお稲荷さんに小豆粥を供えて食べる習慣もあります。
ところで、なぜ、この初午の日にお稲荷さんなのか???
全国に分布する稲荷神社の本源は、ご存じ、京都は伏見区の稲荷山に鎮座する伏見稲荷大社なわけですが、その信仰はあまりにも古く、祭神に関しても、古来から諸説あります。
ただ、現在の祭神は、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ・倉稲魂命)で、稲の精霊とされる神様・・・この神様が稲荷山の三ヶ峯に降臨したのが元明天皇の和銅四年(711年)の2月の初めての午の日(和銅四年では7日)と伝えられ、現在も、この日が祭礼というわけです。
『山城風土記』では、秦(はた)氏の祖先である伊呂具秦公(いろぐのはたのきみ)が稲で富を成したにも関わらず、調子に乗って、その稲で作った餅を的としたところ、餅が白鳥になって空高く飛び、山の峯に舞い降りて伊禰奈利(いねなり)という神が生まれたという逸話があり、それ以来、代々の秦氏一族が禰宜(ねぎ・神官)などとして祭祀に奉仕する・・・つまり秦氏の氏神であったとされています。
こうして稲の神様として祀られる事になった伊奈利(いなり)なので、この神様の姿は、稲の束を天秤で担いだおじいさんとして描かれ、稲を担ぐ→稲荷という文字が当てられたと言われています。
しかし、一方で、『稲荷大明神縁起』には、ずっと昔から、この山には竜頭太(りゅうとうた)という山の神が住んでいて、昼は稲を刈り、夜は薪を取った事から、「荷田(かだ)」と称し、代々、雄略天皇の末裔とされる荷田氏が、その神を守って来たというお話もあります。
こちらの神様は、巫女のような姿をした美しい女性として描かれます。
つまり、もともと、あの伏見の稲荷山には、秦氏の伊奈利と、荷田氏の稲荷の2柱の神様が祀られていたのですね。
なので、神像も2種類あり、稲荷山の参道も2本ありました。
現在では、頂上でつながり、グルッと一回り・・・稲荷山を回るようにある表参道と裏参道の2本の参道は、もともと、別の神様にお参りする別の参道だったらしいのです。
(伏見稲荷の稲荷山散策については、本家ホームページの「歴史散歩・伏見稲荷」>>でご紹介しています)
しかし、やがて平安遷都のあと、秦氏の財力を政治力によって隆盛を極める事になった稲荷信仰は、同じく登り調子の空海=弘法大師と手を結び、空海の建立した東寺の鎮守神となる事で更なる全盛期を迎える事になります。
そして、一方で、農業の神様である稲荷は、五穀豊穣を願う農民たちの信仰の対象となり、津々浦々・・・日本全国に、その信仰が広がっていったのです。
おいそれと稲荷山に詣でる事にできない各地方の農民たちは、地元に稲荷社を建てて、この初午の日には、ワラで作った入れ物に稲荷の好物の油揚げや寿司などを、祠や神棚にお供えして、笛や太鼓ではやしたてながら舞い踊ったと言います。
こうして、江戸時代頃には、庶民の最も親しみを覚える身近な神様となった稲荷・・・
ところで、このお稲荷様の使いとして有名なのがキツネです。
これには、
春に山から下りてきて田の神様となり、秋の収穫を終えて山にお帰りになるという古代の稲作の神様のイメージと、やはり冬に山に籠って姿を見せなくなるキツネの習性が結びついた物と言われていますが、あの『今昔物語』にも、
真言密教では「ダ(口へんに乇です)吉尼天(だきにてん)の別号を白晨狐菩薩(びゃくしんこぼさつ)とも称し、稲荷の神体…」
とある事から、やはり空海とのコラボのあたりから、すでに定着していたようですね。
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コメント
何回も済みません。当県にも三大稲荷といわれる最上稲荷があります。どういうわけかこちらは神社でなく?日蓮宗系の寺院です。知人の最上稲荷の方(非僧侶)に聞くと、明治の廃仏毀釈を上手く免れて、神仏一体の体制を残すことが出来たそうです。
投稿: syunchan | 2011年2月 8日 (火) 19時42分
syunchanさん、こんばんは~
愛知県の豊川稲荷も神社ではなく、妙厳寺というお寺ですね。
こちらのご本尊は千手観音の姿をした「ダ吉尼天」で、信仰の対象が稲荷神そのものではなく、このダ吉尼天という事になってます。
やはり、生き残るための知恵だったのかも知れませんね。
投稿: 茶々 | 2011年2月 8日 (火) 23時41分
うちの父は、若いころ、さみしい夜道で白いきつねが目の前を横切ったといって、あれはお稲荷さんだといっているのですが・・・
どうしようかな。。。今年、伏見稲荷大社へ行くのっ
投稿: やませみ | 2011年2月11日 (金) 22時53分
やませみさん、こんばんは~
友人のお兄さんに狐がついて、「お祓いをしてもらった」と言ってました。
今でも、そんな話があるのか?!
と驚きましたが、やっぱりあるのかも知れません。
投稿: 茶々 | 2011年2月12日 (土) 02時25分