日清戦争…成歓の戦い
明治二十七年(1894年)7月29日、日清戦争において、日本側の戦死者・第1号を出した陸戦・成歓の戦いがありました。
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国内の混乱を抑えきれない朝鮮に、それぞれの思惑を以って介入する事から始まった日本と清国(中国)による日清戦争・・・
- 明治二十七年(1894年)6月2日
【日清戦争への足音】参照>> - 明治二十七年(1894年)6月9日
【いよいよ日清戦争へ…】参照>> - 明治二十七年(1894年)7月25日
【豊島沖海戦】>>
連合艦隊がデビュー戦の豊島(プンド)沖海戦に勝利を飾った同じ7月25日、朝鮮政府から大鳥圭介公使のもとに、すでに朝鮮南部の牙山(アサン)に集結している清国軍の撃退が要請されます。
翌日の26日に、その連絡を受けた混成旅団長・大島義昌(おおしまよしまさ)少将は、牙山に駐屯する清国軍の数が、これ以上増えないうちに叩くべく、歩兵+騎兵約3000名を率いて、牙山に向けて南下を開始しました。
ところが、日本軍約3000に対して、約4000名という数の上でも優位に立っていたにも関わらず、清国軍を率いる葉志超(ようしちょう)提督は、日本軍の接近を知ると、牙山を捨てて兵を分散・・・主力を、北東2kmの地点にある成歓(ソンファン)に移動させ、残りを南方の公州(コンジュ)へと振り分けました。
一方、7月28日・・・敵地を見下ろせる高台に到着した大島少将は、その後、徹底した情報収集を行います。
その結果、主力部隊が成歓に退いた事を確信した大島少将は、軍を成歓の方面に進める事を決意しますが、これがなかなか難しい・・・
なんせ、この高台を下りれば、見通しの良い全州(チョンジュ)街道・・・ここを行けば、敵からも丸見えですから・・・
そこで大島少将・・・隊を右翼と左翼の二手に分け、しかも夜に行軍して夜襲を仕掛ける作戦に出ます。
かくして明治二十七年(1894年)7月29日、午前0時に左翼隊が出発し、続いて午前2時右翼隊が出発します。
が、しかし・・・
地の利の無い場所での夜の行軍・・・ほとんど前が見えない暗闇の中で、そばに流れていた川に落ちる者や、水田にハマって身動きとれなくなる者が続出・・・
そんなこんなの午前3時20分・・・右翼隊のトップを進んでいた部隊が、突然、清国軍の猛射撃を受けてしまいます。
そこにいたのは、歩兵第21連隊第3大隊・・・第12中隊長の松崎直臣(なおおみ)大尉をはじめ、不意の攻撃を受けた日本軍は、日清戦争開戦以来初めての戦死者を出してしまいました。
ちなみに、この時、突撃ラッパを吹いている最中に被弾したのが木口小平(きぐちこへい)・・・彼が、絶命した後も、ラッパを口から離さなかった事が噂話となって日本に伝わり、やがて「シンデモ ラッパヲ クチカラ ハナシマセンデシタ」の美談として、小学校の教科書にも掲載されていた事は、ご存じの方も多いでしょう。
こうして、苦戦を強いられながらも、やがて、その先頭集団に砲兵部隊が合流するに至って勝機を取り戻した日本軍は、この日の午前8時、成歓を陥落させる事に成功したのです。
日本軍の戦死者が34名なのに対し清国軍の戦死者は約400名とも・・・生き残った清国の兵士たちは全州へと敗走しました。
その2日後の7月31日・・・日本は、各国の公使に『交戦通告書』を交付・・・国際法上、日清戦争が成立したのでした。
ただ、明治天皇はこの開戦にずっと反対の姿勢であったとか・・・
立憲君主としてやむなく詔(みことのり)を出されましたが、
「今回の戦争は不本意・・・大臣たちが戦争はやむおえないと言ったので裁可しただけです」
とおっしゃり、宮中の宣戦奉告の式典も欠席されたのだそうです。
こうして、明治天皇のお心とはうらはらに、日清戦争は更なる激戦へと進んでいく事になりますが、そのお話は、平壌が陥落した9月16日のページでどうぞ>>
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コメント
深い考察にいつも感心して拝見しております。
大島義昌「少将」でしょうか。
投稿: happy | 2011年7月30日 (土) 13時30分
happyさん、こんにちは~
おぁ、ご指摘ありがとうございます。
おっしゃる通り少将ですねww
間違ってはいけないと思いつつ間違っておりました。
また、発見された時はお知らせください。
ありがとうございました。
投稿: 茶々 | 2011年7月30日 (土) 16時45分