浦島太郎の変貌~開けてびっくり玉手箱
今日、8月5日には、「8=ハ」「5=コ」の語呂合わせで『ハコ(箱)の日』という記念日なのだそうです。
って事で、箱にまつわる昔話・・・と言えば、やっぱ超有名なアレ・・・
「浦島太郎」ですよね~
とは言え、この浦島太郎・・・皆さんもご存じの通り、まるで宇宙旅行を思わせるようなSFチックなストーリー展開・・・
これが、けっこう最近に作られたものなら「さもありなん」ってとこですが、もはや、その成立年代もわからないほどの古代より語り継がれて来たかと思うと、ワクワクドキドキです。
ところで、皆さんがよくご存じの浦島太郎のストーリーと言えば・・・
- 浜辺で子供にいじめられている亀を助ける
- 「お礼に」と海の底の竜宮城へご招待
- 竜宮城の乙姫のもてなしを受け、タイやヒラメの舞い踊り~
- 3年経って実家の事が気になり「帰りたい」と告白
- 「だったらコレを持って帰って」と玉手箱をもらう
「でも、開けちゃダメよ」と釘を刺される - 故郷についたら両親も家もなく、自分がいなくなってから300年が経ってる事が判明
- 途方に暮れた太郎が玉手箱を開けると白い煙が出て来てお爺さんに…
てな感じですよね。
ただ、実を言うと、このストーリーは明治時代に国定教科書に載せるために書きかえられたストーリー・・・と言ってもご安心を・・・
最初のいじめられている亀を助ける部分を付け加えて、「良い事をすると、良い思いができる」という事を教えようとしたのと、竜宮城での乙姫とのラブラブ描写が子供にふさわしくないのでカットした程度で、あらすじはほとんど昔の物と変わっていません。
もちろん、明治の時だけではなく、太古の昔より語り継がれて来た浦島太郎は、その時代々々で様々なバージョンアップをくりかえして今日に至っているのです。
現存する文献で最古なのは『日本書紀』(養老四年・720年に成立)・・・
そこの「雄略22年(478年前後?)」の条に、「丹後(京都府北部)に住む水江浦島子(みずのえのうらのしまこ)が亀を釣り、蓬莱(ほうらい)山へ行った」という事が、たった1行ちょっとだけ書かれています。
次に『万葉集』(天保宝字三年(759年)頃に成立)・・・
ここに、高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)という人物が作った長歌「詠水江浦嶋子一首」として納められています。
長いと言っても歌なので、物語のあらすじのような展開ですが
「水江之浦嶋子が生業としている釣りを終えて帰ろうとすると、海神の娘だという亀姫なる女性と出会い、語り合ってるうちに結婚する事になり、常世の国にある彼女の宮殿へ・・・
3年経って、「結婚の事を両親に知らせたい」と言ったところ、「絶対に開くな」と言って奩(くしげ・化粧箱)を渡されて戻って来る。
しかし例のごとく家も知る人もなく・・・ふたを開けるともとに戻るのではないか?と考えて奩のふたを開けると、中から白い煙が立ち上り、叫びながら大暴れし、心を失った彼は、黒かった頭髪が真っ白になり息絶えた」
とあります。
そして『丹後国風土記』・・・
この風土記というのは、ご存じのように古事記や日本書紀と同時期の元明天皇の時代・和同六年(713年)5月2日に全国に編さんの命令が出された物で、その地方に伝わる伝説や名産品などを紹介する地元ガイドブックのような物(5月2日参照>>)・・・ただし、丹後国風土記そのものは現存せず逸文(いつぶん・かつては存在していたが、現在では伝わらない文章)のみなので、鎌倉時代に成立した釈日本紀(しゃくにほんぎ)などの複数の書物に登場する「丹後国風土記に書かれていた話」を参考に、その内容を見て行くしかないのですが・・・
実は、今現在も丹後地方に「水の江の島子」という昔話が口伝えで残っており、逸文の内容も、これに非常によく似ています。
おそらく、これが、一番原型に近いのではないかと想像するのですが・・・
「昔、丹後は水の江という村に住む島子という漁師・・・その日はサッパリ魚が採れずにため息をついていたところに、赤・青・黄・黒・白の5色に光る亀を見つけます。
とりあえず船べりに置いておいて、うつらうつらしながら釣りを続けていると、いつの間にやら、メッチャ美人が、島子の横に・・・
「私は、わたつみの国の亀姫・・・あんたはんが親孝行なええ息子やと聞いて迎えに来ました。
大切にするさかい、船を東の方向へ向けなはれ~~~」
波をズイズイついてふわりと着いた所には立派な宮殿が・・・そこで、例のごとくもてなしを受けて有頂天になる島子ですが、やはり、しばらくして故郷が恋しくなる・・・
すると亀姫は、
「ひきとめる事なんてできひんけど、いっぺんわたつみの国を出ると、2度と戻って来られへんのどす。
ほやから、この玉くしげを私やと思うて持って行って」
と例の箱・・・
村に戻って、例のごとく・・・寂しくなった島子が、玉くしげのふたを開けると、ぽくぽくと煙があがり、その煙が島子の体を包んだかと思うを、スィ~ッと大空に呑み込まれてしまいました」
この伝承の昔話と丹後国風土記と違うところは、
「宮殿に入ると、7人の童子(すばる星=プレアデス星団)と8人の童子(あめふりぼし=ヒアデス星団)に迎えられた」という描写と、
「開けると、ここへは戻れなくなる」と言われて渡された玉匣(たまくしげ)を開けると「風雲舞い飛び、悲しくなった島子が歌を詠むと、玉匣に亀姫が声を飛ばしての反歌が返って来た」
という描写が加わるところです。
これら水江浦嶋子が略されて浦島子となり、やがて平安時代に『浦島子伝』『続浦島子伝』などの文献が登場するのですが、この時代に重視されていたのが、島子と亀姫の愛の生活・・・原文は漢文で書かれているので、恥ずかしながら、未だ読んだ事ないのですが、聞くところによれば、かなりきわどい描写もあるのだとか・・・(だから明治にカットしたのねん(*゚ー゚*))
と言っても、平安の人々が快楽のためにいわゆる「エロ本」として読んだのか?というとそうではなく、その愛し合い方が不老不死をもたらす神仙思想に通じる秘術であるという事でもてはやされたようです。
その後、中世になると浦島太郎・玉手箱という名称が登場し、室町時代の『御伽草子(おとぎぞうし)』によって、そのストーリーも固定化され、全国ネットの有名な話となります。
御伽草子の内容も、ほぼ同じですが、最後に玉手箱を開けた浦島太郎は、鶴になって空に飛んで行った事になってます。
こうして時代によって様々なバージョン変化を繰り返す浦島伝説ですが、そてにしても、一貫して変わらないのが、竜宮城で過ごした何日間が、この世の地上では何百年にも相当するという最もSFチックな部分であり、そして、一番不思議で魅力的な部分でもあるここ・・・
もし、浦島太郎の物語がすべて作り話だったとしても、もはや時代も特定できないような古代に、時間の流れ方の違いという物を考えた人がいたという事になりますからね~
アインシュタインの相対性理論によれば、運動をしている物体の時間経過は、静止している物体の時間経過より遅くなり、それは光速に近づけば近づくほど、その差が大きくなるとされています。
つまり、高速で移動する乗り物に乗っている人は、地上にいる人よりも時間が遅く流れるという事です。
この現象は、正式な物理用語ではないものの「ウラシマ効果」と呼ばれ、実際に、高速で移動する航空機に搭載された原子時計に遅れが生じる事で確認されているとの事・・・
浦島太郎は光速で移動したのかい???
そんな事を考えていると、ますます浦島太郎のミステリアスな魅力にとりつかれてしまいそうですが、とりあえずは、音速ジェット機で世界を旅し続けたら、いつまでも若々しくいられるのか?というアンチ・エイジングについて知りたい茶々でおます。
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コメント
どもども
茶々様の昔話シリーズ大好き!!
(福助さんもおもろかった!!)
次は、桃太郎?かぐや姫?かごめかごめ?
どれにしますのん…??(笑)
投稿: azuking | 2011年8月 6日 (土) 00時52分
azukingさん、こんばんは~
福助さんのお話はほのぼのしていて私も大好きです!
桃太郎…というよりは、そのもととなった吉備津彦命を書いてます。
かぐや姫も、物語というよりは解説みたいな感じですが…
神様・仏様&昔話・伝説集>>のページから色々見ていただけるとうれしいです。
「かごめかごめ」…なにか怖いウラ話がありそうですね~
「はないちもんめ」も、実は人身売買の歌なんですよ。
また機会があれば書きたいと思います。
投稿: 茶々 | 2011年8月 6日 (土) 02時38分
「桃太郎」も原作本はきわどい描写がありますね。桃を食べたおじいさん・おばあさんが若返り、若夫婦に戻って桃太郎をもうけた内容です。これは「トリビアの泉」で触れてました。
投稿: えびすこ | 2011年8月 6日 (土) 12時05分
えびすこさん、こんにちは~
「御伽草子」は本来大人が楽しむ物語だからか、きわどいのが多いですね~
後醍醐天皇の不思議な夜の営みの話と言い、室町時代は、愛し合い方で不老不死を願うという考えが強かったのかも知れませんね。
投稿: 茶々 | 2011年8月 6日 (土) 14時00分
>赤・青・黄・黒・白の5色に光る亀
五行思想の影響でしょうか?
>アンチ・エイジング
“相対的”なので無理です。(笑)
移動している人の時間で“普通に”老けます。
浦島太郎も3年分老けているはず。
投稿: ことかね | 2011年8月 7日 (日) 14時43分
ことかねさん、こんにちは~
>アンチ・エイジング
いやいや、ちょっとは老けるスピードが遅くなるかと…
投稿: 茶々 | 2011年8月 7日 (日) 17時06分
>浦島太郎は光速で移動したのかい???
「コズミック・フロント」のタイムマシンの回に、地球を一周するレールをぐるりと敷いて、そこに光速で走る列車を走らせる話があります。光速で走る列車の中で一年過ごすと百年後の世界に到着…だったと思います。
過去へ行く話はいまのところ、不可能とのことでした。
相対論ネタでも、竜宮城がブラックホールだっていう話は聞きませんね。帰ってこられないからでしょうか。
ところで亀を助ける話は明治以降付け加えられた話とのことですが、子供とかに浦島太郎が亀は助けるのに魚は殺すのはなぜ?(だって漁師でしょ)と聞かれたらどうやって説明したらいいのでしょう。私は自信ありません。
投稿: りくにす | 2012年8月12日 (日) 19時56分
りくにすさん、こんばんは~
私が、今、このコメントを書き終えて、光より早いスピードで月へ行き、特大の望遠鏡で地球を見ると、まだ、コメントを書いてる途中の私が見える…
そこで、またまた、光より早いスピードで地球に戻ると…ひょっとして、コメントを書く前の私に出会ったりして( ̄ー ̄)ニヤリ
投稿: 茶々 | 2012年8月13日 (月) 02時43分