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2011年8月 8日 (月)

乱世と平時で髭のある無し…ヒゲの日に因んで

 

今日8月8日は、「ヒゲの日」という記念日だそうです。

理由は、「八」という漢字が、ヒゲの形に似ているからだそうで、あのカミソリでお馴染のシック=Schickが制定した記念日なのだそうです。

・・・・・・・・

そもそもは神代の昔から、ヒゲというものは権威の象徴のように扱われていました。

あの『古事記』の有名な天岩戸のくだり・・・

もともと、なぜに、太陽神であらせられる天照大神(オマテラスオオミカミ)が天岩戸にお隠れあそばす事になったかと言えば、弟の建速須佐之男(タケハヤスサノヲノミコト)が、田んぼの水を止めたり、神聖な御殿でウ●コしたり、屋根の上から皮を剥いだ馬を投げ込んだりという乱暴を働いた事に怒って、岩戸の奥深くにひきこもったわけです。

結局は、天宇受売命(アメノウズメノミコト)の裸踊りで注意を引き、何とか岩戸から引っ張り出して事無きを得たわけですが、その後、八百万の神々が集まって会議を開き、乱暴を働いたスサノヲの処分を決定・・・

それが、両手両足の爪を抜いて髭を切り、高天原から追放!というものでした。

現代だと「ヒゲくらい、なんぼでも切らしたるがな」って思いますが、神代の昔は、それが罰として成立するくらい、ヒゲを切る事が屈辱だったわけです。

とは言え、そんなヒゲにも、どうやら、その時代々々のブームという物があるようで・・・

そう、切る事があれだけ屈辱だったヒゲは、貴族の間には好まれず、平安時代の貴族たちの間では、むしろ、お歯黒をしてお化粧をして女物をはおる・・・といった風貌がステキとされたのです。

ところが、中世から戦国時代になると、これまた一転、ヒゲをはやすのが流行・・・いや、むしろ、ヒゲが無い事がカッコ悪いとまで言われるようになります。

あの豊臣秀吉がヒゲが薄かったため、「つけ髭」をしていたのは有名な話ですよね。

なのになのに・・・

江戸時代に入ると、またまた一転、ヒゲを剃るのが大流行するのです。

これには、一つオモシロイ逸話があるのですが・・・

Doitosikaru500 徳川家康秀忠家光と3代の将軍に仕えた土井利勝(どいとしかつ)・・・彼の父・水野信元は、家康の母・於大(おだい)の方の兄という事で、つまり、利勝と家康は従兄弟同士だったわけですが、その家康からの可愛がられ方、出世の仕方、風貌のそっくりさから、「利勝は、家康のご落胤(隠し子)ではないか?」との噂があったのです。

それが、晩年、すでに家康も亡くなった寛永(1624年~1643年)の初め頃、ますます、その風貌が家康そっくりになっていき、「まるで生き写しだ」とまで言われ、隠し子の噂がますます大きくなっていきます。

やがて、利勝本人も気になってきて、鏡なんぞ覗きこんでマジマジと見てみると、本人から見ても「似てるなぁ」と・・・

「どうしたもんやろか?」
と考えた結果・・・
そうや!このヒゲがあるからそっくりなんや・・・ヒゲなんか添ってしまえ!」
と、その立派なヒゲを、おしげもなく剃り落としてしまいました。

その心の内を知らない周囲は、突然の事にビックリ!

とは言え、今や幕府でトップの実力者である大老の利勝がヒゲを剃ったのですから、その理由など知らぬ配下の者も、とにかく皆、右へならえとばかりにヒゲを剃りはじめ、いつしか、おしゃれ番長=利勝の「ヒゲ無しスタイル」が大流行・・・

やがて、ヒゲは、未だ戦国の気質を持った者の証のように言われるようになり、ヒゲを生やしているだけで謀反の疑いをかけられるほどに・・・そして最終的には、「風紀を乱す」との理由で、幕府から禁止令まで出る事に・・・。

まぁ、本当に土井さんが率先したのかどうかはともかく、江戸時代には、顔に傷があるなどの理由がない限り、ヒゲを生やすお侍はいなかったのだとか・・・

ところがドッコイ、そんな江戸時代も終わり、明治に入った途端に、またまたヒゲが大流行・・・以前のお札の肖像でお馴染の伊藤博文板垣退助、そして大久保利通なんかも立派なヒゲをたくわえた写真が残っていますよね?

うぬぬぬ・・・これは?

以前のページで、日本の歴史上、大いなる平和を感じた時期が2回あり、それは平安時代と江戸時代であるという事を書かせていただきました。

そのページでは、平和な時の武装放棄について(12月31日参照>>)書かせていただいたんですが、この見事な一致・・・ひょっとして、人は平和になるとヒゲを剃りたくなる生き物なのかしら?

確かに、ヒゲという物は男性ホルモンによって発毛が促進されるもの・・・もちろん、男性ホルモンは男性だけにある物ではなく女性にも存在し、女性ホルモンも男性の中に存在しますが、その多い少ないによって「男らしさ」「女らしさ」という物が形成されると言いますので、男性ホルモンで促進されるヒゲは男性ホルモンが多い=男らしい事を、その目で感じる事のできるシロモノという事なのでしょう。

こんな話があります。

ある群れのボス猿の●タマを切り取ると(生物学的実験だそうなのでお許しを…)、そのボス猿は一気にボスの座から引きずり降ろされますが、その猿に男性ホルモンを注射すると、再び力を盛り返して、ボスの座に返り咲くのだとか・・・

つまり、男性ホルモンが多いほうが、より猛々しく、雄々しく、力も強く、支配欲も強い・・・

フムフム・・・だから、人は無意識の内に、戦乱の世にはヒゲをたくわえ、平和になるとヒゲを剃るという事なのかも知れません。

・・・で、今は???
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コメント

こんにちは。幕府はひげ禁止令を出してたんですか! じゃあ、時代劇でおなじみの「白いひげの水戸の田舎じじい」は…? 3代将軍の従弟が生やすわけにはいきませんよねぇ~(笑)

ひげと同じく男性ホルモンによって発毛が促進されるまゆげですが、消極的だった男性が前向きな気持ちになると、まゆ毛が濃くなるそうです。もちろん体質によってもともとの濃い・薄いはありますが、薄かった人が少し濃くなってきたら、その人は前向きにがんばっているので付き合ってみるとよい、みたいなことがビジネスコラムに書いてありました(ホンマかいな)。

投稿: おぺりん | 2011年8月 8日 (月) 17時31分

大相撲の行司もヒゲを生やしてはいけない決まりがあります。昭和時代に1人だけ例外の人がいましたが。
アメリカの有名な話で、リンカーンのあごヒゲは威厳を出すためと言う逸話があります。
今年の大河ドラマではヒゲのある男性が少ないですね。向井くんが「徳川ヒゲただ」になる日は来るかな?

投稿: えびすこ | 2011年8月 8日 (月) 18時19分

水戸のご隠居で思い出しましたが、彼の子孫の斉昭くんはもの凄い童顔で、だからナメられない為に髭を生やしていたとか。あの時代ではまだまだ髭は一般的じゃなかったから、大奥の女性方から野蛮人と嫌われていたとか(まあ、セクハラ親父だったらしいので、そっちの方が影響大きそうですが(笑))
現代はあごひげが流行ってますよね。個人的見解ですが、正直うさん臭く嫌らしい感じがするので、いい気はしないです。女性からはどうなんでしょうか?
自分の親父はボーボーじゃないけど適当に生やしてました。やはりかなり精力的で、仕事3つとスポーツ少年団の監督までやってました。

投稿: おみ | 2011年8月 8日 (月) 19時56分

明治天皇もそれまで京の都でうっすらと薄化粧をして、優雅に和歌を読んでれば良かったのを、いきなり東京に連れてこられ「強そうに見える」と髭を生やすことになっちゃって・・・最近は強そうな髭、よりもおしゃれな髭がはやってるようで、平和だか危機だかよくわからない今の時代らしいかな・・・

投稿: Hiromin | 2011年8月 8日 (月) 20時32分

おぺりんさん、こんばんは~

違反した時に罰則があるのかどうか?
くわしい事は知らないのですが、「武士は×」という禁止令を出していたようです。

黄門様は越後のちりめん問屋なので大丈夫なのでしょうか?
それとも隠居だから???

男性ホルモンが多くなるとヤル気満々になるのですから、眉毛が濃くなると、やはり意欲が湧いているという事なのではないでしょうか?

投稿: 茶々 | 2011年8月 8日 (月) 22時16分

えびすこさん、こんばんは~

リンカーンの話は聞いた事がありますね~

土井さんの逸話からすると家康もヒゲがあったって事ですが、北大路さんにはありましたっけ??
来週、確認…

投稿: 茶々 | 2011年8月 8日 (月) 22時19分

おみさん、こんばんは~

やっぱり、ヒゲを生やすと、意欲満々になるって事ではないでしょうか?

今は、ボーボーの人は少ないですね。

投稿: 茶々 | 2011年8月 8日 (月) 22時20分

Hirominさん、こんばんは~

今の首脳の体たらくを改善するためには、ヒゲボーボーの人が増えた方が良いって事なのでしょうか?

個人的な好みは別にして…

投稿: 茶々 | 2011年8月 8日 (月) 22時22分

おはようございます。国によって髭をはやす事が必須だとか。外交官も髭づら。元外交官で作家の佐藤優さんの話。☆8/8は〈しらたまの日〉。白玉粉を使って白玉は簡単に出来るとか〜

投稿: やぶひび | 2011年8月 9日 (火) 06時50分

やぶひびさん、おはようございます。

そうですね…特に中東あたりの方々は、髭を生やしておられる方が多いようです。
国によって様々ですね。

ぜんざいに入っている白玉が好きです(*゚ー゚*)

投稿: 茶々 | 2011年8月 9日 (火) 08時59分

今年の大河ドラマの北大路さんはヒゲがあります。1998年の「徳川慶喜」では菅原文太さんの斉昭はヒゲがなかったですね。そういえば、石坂浩二さん時代の水戸黄門(10年前)では、「ひげがないのは変だ」と言う意見がありましたね。
「へうげもの」の豊臣秀吉はつけヒゲです。
時代劇では浪人でヒゲのある人がいますが、あれはまちがいですか?
イスラム教(特に中近東・アジア西部の国)では、ヒゲを生やす事が戒律で決められているらしいです。

投稿: えびすこ | 2011年8月 9日 (火) 09時34分

えびすこさん、こんばんは~

禁止令の厳しさのほどはわかりませんが、時代劇の浪人さんも、「どこかに仕官する」とか、「仕事が決まりそう」って時はこぎれいに剃ってますので、やはり正式な場所ではヒゲヅラのままでは印象が悪かったんじゃないでしょうか?

今でも、新卒の面接の時は、ほとんど剃ってるような気がします。

投稿: 茶々 | 2011年8月 9日 (火) 23時29分

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