吉崎の鬼面伝説…「嫁威し肉附きの面」
本日は、昨日の吉崎御坊つながりで思い出した「吉崎の鬼面伝説」=嫁威(おど)し肉附(にくづき)の面のお話を・・・
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文明年間(1469年~87年)、蓮如(れんにょ)上人が吉崎の道場にいた頃(昨日・8月21日参照>>)、近くの十楽(じゅうらく)という村に与三次という農民がおりました。
もとは、日山城主・山治部右衛門の家臣で吉田源之進と名乗っていましたが、日山城の没落後、十楽村に留まって百姓となって、清という妻との間に二人の男の子をもうけて静かに暮らしておりました。
ところが、ある時、息子ともども流行り病にかかり、3人ともが亡くなってしまいます。
悲しみに暮れる残された妻・・・しかし、もはや亡くなってしまった人は戻りません。
こうなったら、先だった者への救いを願い、遠い将来、美しい浄土にて、ともに楽しく暮らす事を祈ろうと、清は決意します。
「幸いな事に、あの蓮如さまが吉崎におられる」
とばかりに、夫の命日に吉崎にまいり、上人の話に聞き入るうちにしだいに引き込まれ、いつしか無二の信者となっていきます。
しかし、この嫁の態度が気に入らないのが姑・・・なんせ、この姑は無類の邪険な人で、息子や孫が亡くなってもなお、「将来の事なんかクソ喰らえ!」てな考えの持ち主・・・
その姑の気持ちを察してか、清は、昼は姑のご機嫌をとりながら百姓としての田んぼや畑仕事に精一杯働き、夜にだけ吉崎詣りに・・・という生活を続けていきます。
しかし、どうしても、清の毎夜の吉崎詣りを止めさせたい姑・・・
「ひとつ、脅かしてやろう」
とばかりに、ある夜、先祖伝来の秘蔵の鬼の面を持ち出して、白髪の髪をふりみだした自身の顔につけ、身には白い帷子(かたびら・単衣)をまとって、草木の茂る小谷にて待ち伏せしました。
そうとは知らない嫁の清は、いつものようにいつもの道を、念仏を唱えながら吉崎へ・・・
やがて、爽やかな風が吹き通る小谷に差し掛かった時、突然、目の前に現われた白髪の鬼!!!
「キャー!」
と身の毛もよだつ恐ろしさではありましたが、
「食(は)まば食め、喰わば喰え金剛の、他力の信はよもやまじ…南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
と、一心に念仏を唱えながら、そのかたわらを抜けて吉崎へと向かいました。
「とりあえず、脅かしてやったわ」
と、満足した姑は、嫁が戻る前に家に戻って、何食わぬ顔で迎えてやろうと、急いで帰宅・・・
ところが、家に戻って、お面をはずそうとすると、どうした事か、お面が顔にくっついて離れません。
無理やり取ろうと力を入れると、顔の皮がはがれるように痛み、何ともできません。
「ここに嫁が帰って来たら、どないな言い訳をしよ…メッチャかっこ悪いやん。
こうなったら自殺しよか」
と、自害まで考えた姑でしたが、その頃には手足もしびれて思うようにう動かず、死ぬ事すらできませんでした。
やがて、吉崎より戻って来た清・・・すると、自宅には、あの小谷で会った鬼が!!!
すぐに気がついて
「お母さん、どないしはったんですか?」
と・・・
「あぁ、はずかしい」
と泣き崩れる姑・・・
さすがの姑も降参して
「小谷の鬼は、私で…」
と、すべての事を包み隠さず、ありのままに清に話しました。
「お母様・・・上人様がおっしゃるには、どんな者でも熱心に念仏を唱えれば、阿弥陀様は聞いてくださるとおっしゃっています。
さぁ、唱えましょう!」
と清・・・
生まれて初めて味わう恥ずかしさとともに感じた嫁のやさしさ・・・
姑は、やっと
「南無阿弥陀仏」
と、声に出しました。
すると、不思議な事に、その途端にお面はパタリと下に落ち、手足のしびれもなくなり、まるで夢から覚めたような心地よさ・・・
心入れ変えた姑は、以後、嫁とともに吉崎へ通うようになり、やがては彼女も無二の信者となりました。
・‥…━━━☆
現在、吉崎にある願慶寺は、蓮如の愛弟子・祐念坊(ゆうねんぼう)が開いたとされるお寺で、ここに、その問題の鬼面が残されています。
清と姑が「かくかくしかじか…」と、このお面を蓮如に差し出したところ、
「末代までのみせしめにせよ」と祐念坊に授けたのだそうで、そのお面は「嫁威肉附面(よめおどしにくづきのめん)」と呼ばれています。
私ごとですが・・・
小学校の頃、たまたま訪れた旅行先の吉崎で、この話を聞いた時は、それはそれは夢に出てくるほど怖かったですが、
今では、話が納められている『願慶寺縁起』の、
「だから、日頃から、何事も悔い改めて念仏を唱える事が大事なのよ」
と締めくくるあたりを読んで
「見事な、PRコピーですな」
と感心してしまうという邪心あふれる大人になってしまいました。
ゴメンナサイ(*_ _)人…反省
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