夏も近づく八十八夜♪雑節のお話
今日は八十八夜・・・
という事で、本日は、八十八夜と雑節について書かせていただきたいと思います。
・・・・・・・・・
八十八夜とは、立春から数えて88日目の夜という意味なんですね・・・なので、毎年5月1日か5月2日。
閏年の関係もあって、1日早くなったり遅くなったりします。
また、立春自体が変動する物なので、たまに5月3日になる事もあります。
一般的に、この頃になると霜が降りて作物を枯らす事もなくなり、屋外で植物を育てても心配なく育てる事が出来るようになるので、種まきをするのに最適な季節とされ、「八十八夜の別れ霜」なんて事も言われます。
また、この日に摘んだ茶葉が極上とされるところから5月2日は「緑茶の日」という日本茶業中央会の記念日でもあります。
♪夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る ♪
という文部省唱歌「茶摘み」の歌でもお馴染ですね。
(写真→は、京都の茶どころ=宇治にある興聖寺の「茶筅塚」…八十八夜に摘まれたお茶の封が切られる秋に「献茶祭」や「供養祭」が行われます)
お茶だけでなく、養蚕でも蚕を育て始める時期であり、一般農業でも植物の苗を植えかえる時期でもあり、八十八夜は、農家にとって、とても忙しい時期なんですね~
そう実は、八十八夜は、雑節(ざっせつ)という特別な暦日の一つなのですが、この雑節というのが、昔の人が農業をやりやすくするために考え出した、目安の日という事なのです。
暦という物は、かなり昔から綿密に計算されていて、日本では月の運行により、すでに飛鳥時代には、何年何月何日どころか、時間まで計測する術も持っていた(4月25日参照>>) わけですが、それらの正確なカレンダーの計算という物は、あくまで陰陽師のような専門知識を持っている人のみが理解しているだけで、多くの一般人は「なんとなくわかる」程度の物・・・
しかし、実際に農業をやってるのは多くの一般市民なわけで、1年の農業の計画をたてて、それに従って作業するには、その季節を知らせてくれる何かしらの目安が欲しいわけで・・・
そこで、古代の中国で生まれたのが、干支(えと)であり、二十四節季であったのです。
干支は、現在の日本では、一般には年を現す事に使用されますが、もともとは、1年を12個に分けて植物の成長ぶりを観察し、その姿形からイメージする動物をあてはめた物です(11月9日参照>>)。
二十四節季は、それを倍の24個に分けた物(10月8日参照>>)。
・・・で、それでもカバーできない農業の節目の日として作られたのが雑節という目安の日というわけです。
ただ、雑節というのは、ちょっと曖昧なところがあって、八十八夜のように、全国的に知られた物もあれば、マイナーな物もあります。
以前、雑節の一つとしてご紹介した「庚申(こうしん)待ち」(3月6日参照>>) なんていうのは、もはや知ってる人のほうが少ない雑節ですが、おそらくは、正確なカレンダーが一般の人々にも普及するようになった江戸時代頃から、一部を除いて、徐々に忘れられていったのではないかな?と思います。
そんな中で、今回の八十八夜以外で一般的によく知られているのは・・・
- 節分:これは、もう皆さんご存じ・・・立春の次の日です。 (2月3日参照>>)
- 初午(はつうま):2月で初めての午の日に稲荷神社にお参りしたり小豆粥を食べたりします。
(2月8日参照>>) - 彼岸:春分・秋分の日を中日とし、その前後7日間の事・・・仏教的行事が始まるのは平安時代ですが、お彼岸という暦日はもっと昔から…(9月23日参照>>)
- 社日:産土神(うぶすながみ)という生まれた土地の神様(地神)をお祭りする日で、春分または秋分に1番近い戊(つちのえ)の日に行われます。
- 入梅:これは「梅雨入り宣言」ではなくて、二十四節季の一つの芒種(ぼうしゅ・6月6日頃)から5日目の日の事・・・これより約30日が梅雨期とされます。
- 半夏生(はんげしょう):二十四節季をさらに分けた七十二侯のうちの一つで夏至から数えて11日目=7月2日頃・・・半夏(はんげ)という中国産の毒草がよく生える日という意味で、昔は、この日は天から毒が降って来ると考えられていて、すべての野菜を食べないとか、井戸の蓋をしっかり閉める習慣があったそうです。
- 土用:これは、立春・立夏・立秋・立冬の前18日間の事で1年に4回ありますが、例の「ウナギを食べようキャンペーン」で夏が一番有名ですね。
(7月30日参照>>) - 三元(さんげん):今は、「夏の元気な贈り物」だけが有名ですが、もともとは1月15日の「上元」と7月15日の「中元」と10月15日の「下元」の年3回あった節目の日・・(7月11日参照>>)
- 盂蘭盆(うらぼん):お盆です・・・東は7月15日、西は8月15日が一般的ですね。
(8月13日参照>>) - 二百十日&二百二十日:それぞれ、立春から数えて210日目&220日目=9月2日と9月12日頃という事ですが、江戸中期の暦学者・渋川春海(はるみ)が、漁師から「立春後の210日と220日めは暴風雨になる事が多い」と聞き、その後の実体験を踏まえて、幕府に「厄日」として進言した事から一般的に広まったとされます。
稲作では、ちょうど稲の開花時期となるので、この日を無事に過ごせたら豊作になるとの目安の日とされました。 - 己巳(つちのとみ):庚申と同じく十干十二支の組み合わせの一つで、福神である弁財天を祭る日・・・「巳待ち」とも言い、弁財天の使いが蛇(巳)である事から、幸運を祈願したり厄除けのお参りをしたりします。
- 大祓(おおはらえ):半年に1度の厄払いの日・・・夏と冬があります。
(7月31日参照>>)
と、本日は八十八夜にちなんで、雑節のイロイロをご紹介しましたが、中には、その成り立ちやなんやかやが曖昧な物もあり、地方によっても違っていたりしますので、あくまでご参考の一つとお考えいただければありがたいです。
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コメント
一昨日5月1日の朝刊に「八十八夜」と載っていました。
本文にも記載されている「二十四節季」ですが、最近名称が気候(気温)にそぐわないと言う指摘があって名称変更案もあります。カレンダーによっては記載がない物がありますね。
ところで八十八夜は新暦でカウントするんですね。旧暦の場合は「八十八夜」に該当する日が年によって違うので。
投稿: えびすこ | 2012年5月 3日 (木) 15時46分
江戸時代は略暦を使うとか。潤月もあったり、時間も季節によって、違うし。
新茶のセシューム検査が心配です。去年、神奈川の足柄茶は出荷停止になりました。
投稿: やぶひび | 2012年5月 3日 (木) 15時59分
えびすこさん、こんばんは~
個人的には、やはり二十四節季の名称は変えていただきたく無いですね~
やはり、伝統のある物ですし…
投稿: 茶々 | 2012年5月 4日 (金) 03時38分
やぶひびさん、こんばんは~
そうですね~
昨年は出荷停止になってましたね。
今年は、何とか良い方向に向かって行ってほしいと思います。
投稿: 茶々 | 2012年5月 4日 (金) 03時40分