遊郭通いで隠居?伊達綱宗の汚名を晴らしたい
正徳元年(1711年)6月4日、仙台藩の第3代藩主で、後の伊達騒動の原因を作ったとも言われる伊達綱宗が72歳の生涯を閉じました。
・・・・・・・・
伊達綱宗(だてつなむね)は、あの伊達政宗の孫・・・
お兄さんが亡くなった事から、6男でありながら嫡子となり、万治元年(1658年)、第2代藩主だった父=伊達忠宗(ただむね)の死を受けて家督を継ぎ、20歳そこそこで第3代仙台藩主となりました。
熱血漢でハリキリボーイだった綱宗は、若いミソラで大きな藩を任された事でますます燃え、就任当初はヤル気も満々だったようですが、いかんせん、お酒を飲むと、少々乱暴になるクセがある・・・
そんなこんなの万治三年(1560年)5月・・・仙台藩は幕府から、江戸小石川掘の普請を命じられます。
例の天下普請というヤツですね・・・(天下普請については2010年5月25日の【宝暦治水事件】の冒頭部分を参照>>)
その工事自体は、ソツなくこなす綱宗でしたが、ある日の夕刻・・・1日の作業も終えてホッと一息つき、わずかの供を連れて、気晴らしにと新吉原へと繰り出します。
しかし、これがいけなかった・・・
吉原の遊郭=三浦屋で見かけた当代きっての人気花魁=高尾太夫に一目ぼれ・・・
と、以前、榊原政岑(さかきばらまさみね)に身請けされた高尾太夫のお話(2月19日参照>>)の時にも書きましたが、この高尾という名前は、代々の人気の花魁が継ぐ名前なので、高尾太夫は何人もいます。
綱宗さんが見染めた高尾は2代めだったと言われ、区別するために万治高尾とか仙台高尾とか呼ばれます。
とにもかくにも、この高尾にメロメロの綱宗は、天下普請に某大な費用がかかる事もおかまいなく、毎夜のように高尾のもとに通いつめ、飲めや歌えの大騒ぎ・・・
当然の事ながら、最終的には身請けという話なるのですが、これが、どうにもこうにも高尾本人が首をたてに振らない・・・
破格の身請け金を提示して、晴れて大名家に受け入れるという最高の優遇をして、何とか身請けした綱宗でしたが、その後も高尾自身が心を開く事はありません。
結局、いつまで経っても、心底、自分の物にならない高尾の態度に怒った綱宗は、隅田川の船上で、高尾を縛り上げて斬殺したのだとか・・・
すぐに、この酒池肉林の横暴三昧は幕府の知るところとなり、綱宗は、未だ21歳の若さで隠居させられ、わずか2歳の嫡男=綱村(つなむら)が第4代藩主となるわけですが・・・
当然の事ながら、2歳の藩主に政治ができるわけもなく、その周囲の実力者の思うままとなり、そうなると、それに反発する者が現われ・・・って事で、有名な伊達騒動(3月27日参照>>) となるわけです。
そのため、お芝居やドラマなどでは、この綱宗さんは、大抵、バカ殿扱いされています。
が、しかし・・・
お察しの通り、この話には裏がありそうです。
そもそも、一大事件となった高尾太夫の一件にしても、綱宗がゾッコンとなった相手は、京町高島屋のかほるという女性だったとか、湯女(ゆな=風呂で体を洗ってくれる女性)の勝山という女性だったとか言われてはっきりせず・・・斬殺の話は創作であろうというのが一般的な見方です。
ただ、斬殺は無いにしろ、酒池肉林の遊郭三昧は本当だったと言われていますが、これも、実は、綱宗さんがハメられた感じ???
そう、実は、この綱宗さん・・・お母さんの貝姫は藤原(櫛笥=くしげ)隆致というお公家さんの娘で、そのお姉さんは、後水尾(ごみずのお)天皇の妃の逢春門院隆子(ほうしゅんもんいんたかこ)。
このお姉さんが生んだ皇子が、以前ご紹介した第111代後西(ごさい)天皇(2月22日参照>>)・・・。
つまり、綱宗さんと後西天皇はいとこ同士になるわけですね。
なので、一説には、この天皇家との密接な関係を、幕府から警戒されないように、自ら、バカ殿のフリをしていた・・・なんて話もあります。
そこを、権力を握りたい家臣につけ込まれ、あるいは、幕府の差し金で、その豪遊三昧の行状を幕府に訴えて隠居に追い込むという謀りごと・・・てな、事ですね。
なんせ、隠居後は、一転して風流三昧に生き、多くの作品を残している綱宗さんなのですが、聞くところによれば、その作品が、どれもこれも見事な物なのだそうです。
書画にはじまり、和歌や蒔絵など・・・どれもこれも、本当にバカ殿だったら、そんなにすばらしい作品を残せるはずもないわけで・・・
おそらくは、優秀で自ら手腕を発揮する殿様であったからこそ、逆に幕府からは警戒され、藩内を牛耳りたい家臣にハメられた・・・という事なのでしょう。
正徳元年(1711年)6月4日・・・引退後に起こった伊達騒動も含め、その罪を一身にかぶったまま、この世を去った綱宗さん・・・
近年行われた学術調査で、その死因は喉頭癌(こうとうがん)であった事が判明しています。
いつか放蕩(ほうとう)大名の冠が外れる事を祈って・・・
.
「 江戸時代」カテゴリの記事
- 元禄曽我兄弟~石井兄弟の伊勢亀山の仇討(2024.05.09)
- 無人島長平のサバイバル生き残り~鳥島の野村長平(2024.01.30)
- 逆風の中で信仰を貫いた戦国の女~松東院メンシア(2023.11.25)
- 徳川家康の血脈を紀州と水戸につないだ側室・養珠院お万の方(2023.08.22)
- 徳川家康の寵愛を受けて松平忠輝を産んだ側室~茶阿局(2023.06.12)
コメント
大河ドラマ「樅の木は残った」です。陰謀だとしても、かなりお金かかっていますね。藩の財政は?
投稿: やぶひび | 2012年6月 5日 (火) 06時59分
やぶひびさん、こんにちは~
そうです。
バカ殿に描かれるドラマというのは「樅の木は残った」ですね。
藩の財政を破たんさせるのも、幕府のテだったのかも…
投稿: 茶々 | 2012年6月 5日 (火) 14時52分