火の神・カマド神~ひょっとこと竜宮童子のお話
いよいよ明日から12月・・・
すでに寒いですが、師走に入ればもっと寒くなるんやろなぁ~・・・てな事を考えていたら、何やらあったか~い話がしたくなったので、本日は「火の神様=カマド神」のお話をしましょう!
・・・・・・・・・・・
カマドと言えば、「おクド(火処)さん」・・・関西では「へっつい(戸津火)さん」なんて呼ばれて、「三つべっつい」や「五つべっつい」と火口が複数あるカマドが一般的で、大きなお屋敷なんかは、その数の多さを誇った物ですが、関東では火口が一つで二つの鍋を乗せる「二つべっつい」が一般的だったそうです。
複数の火口がありますね~(奈良県今井町・米谷家のカマド)…今井町については2008年7月4日のページでどうぞ>>
とにもかくにも、このカマドは、今で言うところのコンロなわけですが、昔の人から見た感覚は、単なる調理をする場所というだけでなく、おいしい料理や、明るさ&温かさを与えてくれる火という物が大切で、その恩恵に預かれる事への感謝、また、毎日おいしい料理が食べられるとは限らない庶民にとっては、そこは神聖に扱わねばならない場所で、言わば、家そのものを表す象徴的な場所でもありました。
地方によっては、破産する事を「カマドを返す」と言ったり、分家する事を「カマドを分ける」と言ったりするそうですが、それこそ、カマドという物が家そのものを表していたからなのでしょう。
なので、当然、そんな神聖な場所には「火の神様」がいると考えられ、全国各地、様々な名前を持つ火の神が、カマド神として祀られる事になります。
近畿地方の古いお家では、「三宝さん」を神棚に祀っているお家も、多いんじゃないでしょうか?
かく言う私の実家も、母が毎日、神棚の三宝さんに水やご飯をお供えしておりましたが・・・
この三宝さんは、仏教や修験道とくっついて「三宝荒神」とも呼ばれ、ちょっと前までは、僧や山伏が各家を訪れて、清めのお祓いをするなんて事もありました。
荒神はその名の通り、荒ぶる神ですが、とても便利な火という物が、一つ取り扱いを間違えれば、火事になったりヤケドをしたりする・・・そんな火という物に対して、昔の人が、そこに荒ぶる神の存在を感じるのは、現代の我々でも納得ですね。
荒ぶる神は崇り神でもあり、そこに、神聖なる物への感謝の気持ちとともに、大切に扱わねば・・・という引き締まった気持ちが共存するのがよくわかります。
・・・と、近畿や西日本では三宝さんですが、東北や東日本のカマド神・火の神と言えば、あの「ひょっとこ」ですね。
火に空気を送る鞴(ふいご=金属製錬などで火力を強めるために用いる送風装置)を吹いている時の顔をした、ちょっとおどけたお面で有名な「ひょっとこ」ですが、もともとは火男で、火を守る火の神様だったと言われています。
どの地方に伝わるお話かという事は失念してしまいましたが、そのひょっとこの起源となる『竜宮童子』という昔話があります。
・‥…━━━☆
あるお爺さんが竜宮へ行き、そこで、柴をプレゼントしたお礼にと言って「ヒョットク」という名の小汚い童子をもらい受けます。
しかし、家に連れ帰っても、その童子は何をするという事もなく、ただ、自分のヘソをいじくり回すばかり・・・
あきれたお爺さんが、ちょっとしたイタズラ心で、ヒョイッと、その童子のヘソを火箸でつっついてみると、なんと、そこから、小粒の黄金がポロリとこぼれ落ちて来ました。
それから、毎日3度ずつ、チョイッとヘソ突いて、ちょびっとずつ黄金を取り出していたお爺さんでしたが、それを見た欲ばり婆さん・・・
お察しの通り、
「もっとつつけば、もっと沢山の黄金が出るに違いない!」
とばかりに、一気に突っつき、哀れ、童子は死んでしまいます。
やさしいお爺さんは、童子の死を悲しんで、それからしばらくは、涙々の日々を過ごしていましたが、ある夜、夢の中に童子が現われて、
「僕の顔に似たお面を造って、カマドのそばの柱に飾っといたら、自然に富が舞い込んで来るで~~」
と告げたのです。
早速、その通りにしたお爺さんは、やがて村1番の長者になったという事です。
・‥…━━━☆
長者話の定番と言えば定番ですが、やはり、ここでも、火の神様であるカマドの神様=火男は、その荒ぶる力で邪神を追い払い、家を守ってくれる神様だったのですね。
1年の終わりには、カマドにお礼をする「カマドジメ」なる行事を行う地方もあるそうです。
.
「 神様・仏様」カテゴリの記事
- 新年のごあいさつ&猪と摩利支天の話(2019.01.02)
- 京都の昔話~愛すべき貧乏神(2013.02.01)
- 火の神・カマド神~ひょっとこと竜宮童子のお話(2012.11.30)
- 釈迦の入滅~涅槃会と涅槃図の見どころ(2012.02.15)
- 初午の日と稲荷信仰(2011.02.08)
コメント
茶々さま 初めまして。
ひょっとこの起源に関する民話は、岩手県奥州市(旧江刺市)に、伝わっています。
内容もほぼ同じですね。
江刺は岩手県内陸部なので、竜宮という海と関係する民話があるのが少し不思議ですが、河の橋の下が竜宮に通じているという民話も多いので、そういうものなのでしょう(笑)
柳田國男の「遠野物語」は、協力した佐々木喜善が遠野出身だった命名されましたが、これに収録された民話も江刺地区のものも多く、ここも民話の里と思います。
投稿: 五反田猫 | 2012年12月 6日 (木) 10時49分
五反田猫さん、こんばんは~
岩手県奥州市ですか…
やはり、東北なのですね~
海が遠いからこそ憧れる一面もあったのかも知れませんね。
教えていただいて、ありがとうございました。
投稿: 茶々 | 2012年12月 6日 (木) 19時47分