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2013年3月21日 (木)

春の陽気に浮気がバレた??…「今昔物語」より

 

今日は、ちょうど今の季節に似合った『今昔物語集』のお話を、一つ、ご紹介しましょう。

Konzyakumonogatari600 『今昔物語集』は平安末期に成立したとおぼしき、全31巻からなる説話集で、因果応報を説く仏教説話が多いのですが、基本、大人の読み物ですので、シッポリ系の恋の話もたくさん・・・

特に21巻からあとの本朝=日本の世俗の部分には、恋に悩んだり、不倫発覚にアタフタしたり・・・今と変わらぬ人々の生活が垣間見え、とてもオモシロイです。

てな事で、本日は28巻第12にある『或る殿上人の家に忍びて名僧の通ひし語』をご紹介させていただきます。

・・・・・・・

ある殿上人が、3月20日を過ぎたある日、いつものように内裏へと出勤・・・いつもと変わりない1日が始まります。

しかし、実は、この夫の知らないところで、ちょと前から、奥さんは浮気をしていたのです。

とは言え、以前、結婚の歴史(1月27日参照>>)でチョコッと書かせていただいたように、この頃の結婚は通い婚なので、旦那も浮気相手も、女性の家に通って来てる状態ですから、現代人の感覚で言えば、「どっちが浮気なんだ?」て悩んだりもしますが・・・

一応、周囲からも夫婦と認められている旦那のほうは、ほどんど女性の家に入り浸ってて、自分の服や生活用具なんかも、そこに置いてあるわけで・・・・現代感覚で言えば、そんな中で、奥さんは、その旦那の留守中に浮気相手を引っ張り込んでるって感じですかね?

とにかく、こうして、いつもと変わらぬ1日が始まると同時に、彼女の密かな行動も始まるわけで・・・

しかも、その浮気相手は、けっこう名の知れた高僧・・・

いつものように、彼女の家にやって来ては、まるで自分ちのようにくつろいで法衣を脱ぎ、リラックスモードに突入・・・

彼女は、いそいそとカレシの法衣を受け取って、夫の衣類をしまってあるウォークインクローゼットの中に、シワが寄らないようにハンガー掛け・・・

と、しばらくすると、夫からのメール・・・否・使者がやって来て、彼女に伝えます。

「今日、仕事終りで、蹴鞠(けまり)に行く事になってん。
家に帰らんと、会社から直接行く事になったよって、略服の狩衣
(かりぎぬ)と烏帽子(えぼし)を使者に持たしてくれへんか」
と・・・

彼女は、再び、クローゼットに行って、烏帽子と狩衣を取りだし、袋に入れて使者に持たせます。

「ヤッター!!
これで、いつもよりゆっくり出来るやんヽ(´▽`)/」

と、ちょっぴりほくそ笑む彼女・・・

果たして、蹴鞠会場に到着した使者が、主人の前で、渡された袋を開けてみると・・・

烏帽子はあるけど狩衣が無い・・・

烏帽子の横にあるのは、キレイに畳んである黒い法衣・・・

「なんや?コレ・・・?」

そう、この頃は、電気なんてものはありませんから、当然ですが、ウォークインクローゼットの中は、昼間と言えど薄暗い・・・

はっきり言って、彼女は、その布の手触りで、着物を識別していたわけですが、その手触りが夫が希望した狩衣と、浮気相手の法衣とが、メッチャ似ていたのです。

薄暗い中で衣類を探した彼女は、スッカリ勘違いして、そのまま畳んで袋に入れちゃったわけ・・・

最初は驚いて、その後、しばし考え込む夫ですが・・・やはり、そこはピ~~ンとキターー

「アイツ…坊さんと浮気しとるな!!(-_-X)」
と・・・

ムカムカ!!っとしながら、ふと、周囲を見ると、同僚たちが、その様子をチラチラ・・・思いっきり、皆にバレてます。

恥ずかしさと腹立たしさに爆発しそうになりながらも、同僚の手前、ここでアタフタしたり、怒りをあらわにするのもカッコ悪い・・・

冷静を装いながら、その法衣を袋へと戻し、使者に再び、家に届けるように言い渡すのですが、そこに、1通の手紙を添えました。

♪時はいかに 今日は四月(しつき)の一日(ひとひ)かは
 まだ来
(き)もしつる 衣更(ろこもが)へかな ♪
「え~~と、今日って何日やったっけ??
まだ4月1日ちゃうよな?
せやのに、もう、衣替えしはったんでっか?」

そう、この頃の衣替えは旧暦の4月1日と10月1日に行うのが普通・・・

古くに宮中から始まって、通常は民間レベルでも、この日に行われており、衣類に限らず、調度品なども冬物から夏物へと交換する習わしとなっていたのです。

よく、クイズ番組などで登場する難読苗字の『四月一日さん』・・・「四月一日」と書いて「わたぬき」と読むのは、1説には、その4月1日に、着物や布団などを、綿入りの物から綿を抜いた春夏物に変えるからなんて言われてますね。
(綿の収穫時期に由来する説もあり)

しかし、冒頭に書いた通り、この日は、まだ3月の20日過ぎ・・・

もちろん、この後、この夫が彼女のもとへ通う事は、2度とありませんでした。

それを知った彼女は気も狂わんばかりに絶叫したと言いますが、もはや、後の祭り・・・

・‥…━━━☆

旦那さんの、怒りを抑えたイヤミたっぷりな言い回しがイイわぁヽ(´▽`)/

・・・って、その高僧は、その後どうしたんだろ?
気になるなぁ・・・

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写真は平安神宮…『今昔物語』のイメージで…
 .

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コメント

ああ面白かった!

『今昔物語』…やっぱり面白いですね。
また読んでみたくなっちゃった。
もちろん,現代語訳されたものを…。

歌で,返すところがいいですね。
これ,今やっても,“かっこいい”と思います。

投稿: 鹿児島のタク | 2013年3月21日 (木) 18時48分

坊さん何やっとんの~!!
しかし、教養が有る人は怒り方も雅ですねぇ・・・
坊さんはあの後どうなったんですかね・・・露見すれば破門でしょうし、相手が立場ある人だから、人知れず・・・されたり・・・されたんでしょうか・・・

投稿: キスケ | 2013年3月21日 (木) 22時44分

この旦那のように「優雅」にやってくれないかなあ~
急に窓から帰ってきたりしないで…
おかげでパンツ一枚で、はだしで逃げ出した…(30ん年前)
しっかり、車の鍵だけ持って…

コンなんじゃ、家にも帰れんわい…
パンツ一枚で帰って、女房に何と言うんじゃ…?

嗚呼ぁ~ 変な事、思い出しちゃった…
↑ 女房には、しっかりバレてた…

投稿: 夏原の爺い | 2013年3月21日 (木) 23時04分

鹿児島のタクさん、こんばんは~

おっしゃる通り、
直球ではなく、変化球で返すところがカッコイイですよね~

投稿: 茶々 | 2013年3月22日 (金) 02時49分

キスケさん、こんばんは~

私も、お坊さんのその後が気になります~
相手は殿上人だからなぁ…
どうなんでしょ?

投稿: 茶々 | 2013年3月22日 (金) 02時50分

夏原の爺いさん、こんばんは~

そんなドラマのような事が??!!(゚ロ゚屮)屮

投稿: 茶々 | 2013年3月22日 (金) 02時52分

おもしろいな。うまいな。

茶々さんはいっぱい古書の原典を読んでいるの?
美しいねー、日本のことばと文化。

投稿: いとちん | 2013年3月22日 (金) 07時53分

いとちんさん、こんにちは~

私は、小説はまったく読まないので、本と言えばこーゆー系ですね。
できれば原文に出会って読みこなしたいですが、素人には手に入れるのも読み解くのも、なかなか難しいです。

投稿: 茶々 | 2013年3月22日 (金) 14時33分

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