滋賀県・湖北の昔話~「腰折雀」と「舌切り雀」
近畿地方も桜が咲いて、本日はポカポカ陽気でした(゚ー゚)
・・・で、今日は、滋賀県の湖北地方に伝わる、こんな春のポカポカした日に、恩返しに来たスズメの昔話「雀の瓢箪」をご紹介しましょう。
・‥…━━━☆
昔々、ある山奥に、一人のお婆さんが住んでおりました。
ある時、そのお婆さんの家に、雀が巣を作りはじめます。
しかし、それに気づいた近所の悪ガキたちが、オモシロがって棒で巣を突き壊して、下へ落としてしまいます。
イタズラで腰の骨を折られた雀は、痛そうに「チュンチュクチュン…」
可哀そうに思ったお婆さんは、その雀を籠に入れて飼う事にし、毎日、やさしく手当てをしてやりました。
その甲斐あって、やがて元気になった雀は、籠を飛びだして、どこへともなく飛んでいきました。
それからしばらく経った、春のポカポカ陽気の日、お婆さんが、気分良く日なたぼっこをしていると、どこからか、あの雀がやって来て、ぽ~いっと、口にくわえてした種をを一つ、庭に落として、また、帰っていったのです。
「ありゃ?
何や…これは、ひょうたんの種やないかい?
けど、せっかく、あの雀が落として行ったんや…どうせなら、植えてみよ!」
と、庭に、その種を植えてみます。
すると、どうでしょう。。。
またたく間に芽が吹いたと思ったら、あれよあれよと言う間にグングン背丈が伸びて行き、ツルを伸ばし、見る間に大きな花を咲かせました。
やがて、そこにぶら~~んと、大きなひょうたんがなります。
その大きなひょうたんは、風が吹くとゆさゆさと揺れ、その揺れとともに、カラカラと不思議な音をたけます。
「こりゃ、おかしなひょうたんやな??」
と、不思議に思いながらも、ころあいを見計って、その大きなひょうたんを収穫・・・
しかし、これが、とてつもなく重いのなんのって・・・
「ひょうたんっちゅーもんは、中が無いよって、軽いもんやねんげどなぁ??
ま、とりあえず、ひょうたんはひょうたんやねんさかい、乾かして、酒でも入れて使おかいな」
と、その重いひょうたんを、必死のパッチで、家の中に入れて乾かして・・・さて、いざお酒を入れようとすると、これが、まったく入れる事が出来ず、注いだしりから、ドボドボとこぼれ出てしまいます。
「ありゃま、なんぎなひょうたんやなぁ」
と、グチをこぼしながら・・・
なんせ、「物が入れられない」となると使い道に困るひょうたん・・・とりあえず、お婆さんは割ってみる事に・・・
ポ~~ン!!と大きな音をたてて、そのひょうたんを割ってみると、アラ不思議・・・中からは真っ白なお米がザクザク・・・
それも、出るのなんのって・・・朝から晩まで、ザックザクのドックドク
ずっと出続けて、いつしかお婆さんの家が、お米で埋まってしまうほどでしたとさ。。。
ほんで、しまい
・‥…━━━☆
と、実は、これとほぼ同じお話が、13世紀頃成立の『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』に「雀報恩の事(腰折雀=こしおれすずめ)」として登場します。
宇治拾遺物語のほうは、この後に、意地悪婆さんが登場して、自ら石を投げてケガさせた雀を相手に、同様の事をやりますが、予想通り、出来上がったひょうたんからは毒虫やら何やらが出てきて、それらに襲われ、意地悪婆さんが死んでしまう・・・という、勧善懲悪なストーリーとなってますが、上記の通り、地方に伝わる昔話は、のほほんとした感じで終わります。
ところで、スズメの登場するおとぎ話と言えば「舌切り雀」が有名ですが、実は、「舌切り雀」も、この湖北地方に伝えられている昔話・・・
全国ネットの「舌切り雀」は、ご承知のように、明治の頃に、「子供に話して聞かせるにはふさわしく無い場面をカット」して、おとぎ話として全国に広がった物ですが、湖北地方に伝わる昔話では、やはり、ちょっと表現し難い場面も、残っています。
(ご存じだと思うので全国ネットの筋書きは省きますm(_ _)m)
糊をなめた事で、お婆さんに舌を切られた雀のいる「雀のお宿」を、お爺さんが探しに行く場面では、その場所のヒントを教えてもらう代わりに、竹を噛まされたり、肥(こえ)を飲まされたり・・・
また、「雀のお宿」のおみやげに小さい箱を貰って帰って来たお爺さんに不満を持って、自らお宿を訪ねて、大きい箱を貰ってきたお婆さんが、途中で箱を開けて、中から出て来た妖怪に食べられてしまうところまでは同じですが、昔話では、その後に・・・
帰って来ないお婆さんを探しに行って、妖怪に食べられた後のお婆さんの遺体を見つけたお爺さんが、そのお婆さんのドクロを持って、とぼとぼと一人で帰路につきますが、途中で日暮れに・・・
やむなく、「どこか泊めてくれる所は無いか?」と探しますが、「ドクロと二人じゃ泊められない」と断わられる・・・
なので、仕方無く、「一人です」と嘘をついて、ようやく1軒の家に泊めてもらう・・・ところで、お話が終了という、それこそ、口伝えの昔話ならではの、ちょっと心残りな終わり方となっています。
こうしてみると・・・
おおもとの一つのお話から、口から口へと伝わる昔話、ちょっと大人向けの説話集、子供向けのおとぎ話・・・と、様々に枝分かれする過程で変化する様が、とても興味深いですね。
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コメント
昔話、面白いですね~
小さい頃、『漫画日本昔話』の観過ぎで、裏山の畑道で遭遇したおばあさんが本物の山ん婆のように思われて肝を冷やしたものでした。
浦島太郎も助けた亀に恩返しを受けたわけですが、村へもどった後の顛末、そして玉手箱という最後の処方箋、意味深長で味わい深いですね。
何処の伝説なんでしょうね?
ではでは
投稿: 達田ニャン | 2013年4月 5日 (金) 21時54分
達田ニャンさん、こんばんは~
「浦島太郎」については【箱の日】>>に書かせていただきました。
私としては、『丹後国風土記』の内容と、丹後地方に伝わる民話が、最も原型に近いのではないか?と考えており、個人的には丹後地方が発祥だと考えております。
投稿: 茶々 | 2013年4月 6日 (土) 02時54分