秀吉の紀州征伐~太田城攻防戦
天正十三年(1585年)3月28日、紀州攻めに出陣した羽柴秀吉が、太田城の周囲を堤で囲みました。
(3月26日とも言われる出来事ですが、本日書かせていただきます)
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主君の織田信長(おだのぶなが)亡き後、仇となった明智光秀(あけちみつひで)を倒して(6月13日参照>>)織田家内での力を増幅させた羽柴秀吉(はしばひでよし=後の豊臣秀吉)は、家臣団の筆頭であった柴田勝家(しばたかついえ)を賤ヶ岳(しずがたけ)(4月21日参照>>)で破り、信長の三男・神戸信孝(かんべのぶたか)を自刃(5月2日参照>>)に追いやった後、天正十二年(1584年)、次男・織田信雄(のぶお・のぶかつ)が徳川家康と手を組んで起こした小牧長久手の戦いをも、その人たらし術を大いに発揮して、何とか治めました(11月16日参照>>)。
その小牧長久手の戦いの時、秀吉が東海へと遠征して留守となった畿内を、信雄&家康に呼応して脅かした(【小牧長久手~岸和田城・攻防戦】参照>>)のが、根来寺(ねごろでら)の雑兵を中心とする根来衆や雑賀(さいが・さいか)衆や太田党といった紀州を本拠とする者たちでした。
その後・・・小牧長久手が終わったとは言え、当然、彼らをそのままにしておけない秀吉は、天正十三年(1585年)3月21日、6万(10万とも)の大軍率いて紀州征伐を開始するのです。
まずは根来寺を焼き討ちして根来衆を追いやった後(紀州征伐の大まかな流れは3月21日参照>>)、一部の雑賀衆が寝返った事で、残った太田党に焦点を絞ります。
とは言え、大軍で囲むも、太田左近宗正(おおたさこんむねまさ)の守る太田城(和歌山県和歌山市)は、なかなかに堅固・・・容易に落とせそうに無いと判断した秀吉は、
「速やかに城を明け渡して退いてちょ」
と講和を持ちかけますが、左近らは
「今さら、大軍を恐れて降参せんこと勇士の義に非ず!」
と、左近は徹底交戦の姿勢を崩しません。
なおも説得を続ける秀吉側でしたが、城兵は弓を射かけて使者を攻撃してしまうほどヤル気満々・・・
これを見た秀吉は
「向こうは死に物狂いでかかってくるつもりやな…このまま、力づくで攻撃したら、こっちにも大きな損失が出る!ここは、水攻めや!」
とばかりに作戦変更・・・
かくして天正十三年(1585年)3月28日(25日・26日とも)、明石則実(のりざね)に命じて、城から三町ほど離れた周囲に堤を構築させたのです。
一説には、この時の人夫に469200人を要したのだとか・・・
おかげで堤はまもなく完成し、いよいよ4月1日、紀の川をせき止めて水を流し入れ始めますが、最初の1日~2日は静かな物でしたが、4月3日から大雨が降り続いた事から、城の周囲はまたたく間に泥の海と化しました。
その泥の海に、寄せ手の大将を命じられた中川秀政(なかがわひでまさ=中川清秀の息子)が舟を浮かべて、城壁の間近へと迫り、弓と鉄砲で攻撃を仕掛ければ、城兵も、「ここが防御の最前線!」とばかりに命がけで防ぐ一方で、泳ぎの上手い者を水に潜らせ、舟に穴を開けて水中に引きずり込みます。
もちろん、この間に城からも舟に向かって弓矢&鉄砲が雨のように降り注ぎますが、その中を尼崎吉兵衛なる武将が数百人の兵士を率いて城近くに上陸を試みます。
が・・・しかし、そこを上から鉄砲で狙い撃ちされて吉兵衛が倒れ込むと、寄せ手には「城兵強し!」の雰囲気が一気にたち込め、もはや、このあとに続く者もいませんでした。
とは言え、事は持久戦の水攻め・・・
力攻めはせずとも、すでに孤立した城内の士気は、日に日に衰えていくもの・・・しかも、雨は降り止まず、水かさはどんどん増えていきます。
ただ、その雨は、攻める秀吉側にも被害をもたらします。
9日には東側の堤が決壊し、宇喜多秀家(うきたひでいえ)の陣が水没・・・多くの溺死者を出してしまいました。
やがて、籠城戦も1ヶ月を過ぎた頃になると、寄せ手も攻めあぐね、城中も守り疲れ・・・
ここに来て秀吉は、蜂須賀正勝(はちすかまさかつ)を使者にたて、「城内の主要人物51人(53人とも)の首を差し出せば、残り全員の命を助ける」という条件を提示して、講和を打診・・・
この条件を呑んだ左近は、自ら51人の仲間とともに自刃し、4月22日(24日とも)、太田城は開城となりました。
この太田城攻防戦の勝利により、この地域はほぼ平定され、紀伊一国は、この戦いで副将を務めていた羽柴秀長(はしばひでなが=秀吉の弟)に与えられます。
ちなみに、その秀長が、この地に和歌山城を構築し、それまで「若山」と呼ばれていた場所は和歌山と呼ばれる事になります。
この後、秀吉は、いよいよ四国攻めへと取りかかる事になりますが、そのお話は2008年7月25日の【一宮城・攻防戦~長宗我部元親の降伏】でどうぞ>>
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