大河ドラマ『麒麟がくる』第27回「宗久の約束」の感想
今日は、ちょっと辛口でゴメンナサイな大河ドラマ『麒麟がくる』第27回「宗久の約束」の感想です。
のっけから、
将軍らしくない滝藤義昭の事を
「6歳で寺に預けられて僧侶としてお暮しになったので…」
て・・・
いやいや、
跡取り以外の武家の子息が、幼い頃に寺に預けられる事は、当たり前とまでは言わないものの、戦国ではよくある話です。
当主候補が複数いる中では、幼いうちに「跡取りではない」事を明確にしておかないと、のちのち後継者争いでモメたりしますからね。
しかし、一方で、
世は戦国ですから、その当主候補が先々も万全である保証はないわけで・・・
その時に、寺に入っていた子息が即座に還俗(げんぞく=出家していた人が一般に戻る事)して後を継ぐのです。
思うに、幼き頃に寺に預けられた彼ら(一般的に次男や三男等)は、イザという時のピンチヒッターとして寺に入ってるだけなんじゃないのかな?
なんせ、寺に入って出家してる=俗世間とは縁切ってる状態なので、寺にいる間は後継者候補とはみなされないぶん、ライバルから命狙われる確率も少ないわけで・・・(もちろん例外的に命狙われる場合もあるでしょうけど)
実際、第6代将軍の足利義教も寺にいたし(6月24日参照>>)、
なかなか子供ができなかった8代将軍の足利義政は早く後を継がせいがため弟の義視(1月7日参照>>)をわざわざ還俗させましたし(義尚が生まれたためにややこしくなりましたが…)、
龍造寺隆信なんかは、少弐(しょうに)氏に一家斬殺された中で(寺に預けられてたおかげ?)の生き残りですし(1月11日参照>>)、
なんなら、このドラマにも登場した今川愛之助義元さんも4歳で寺に預けられながら(6月10日参照>>)も、桶狭間(おけはざま)の頃は東海一の弓取りになってますが、初登場の頃から、そんな描写(寺で育ったから武将としての自覚がない感じ)は無かったですよね?
むしろ、これまでのおじゃる感を払拭するような名将に描かれてました。
なのに、なんで、この滝藤義昭だけ、寺で育ったせいで名刀見てビビるような人に描かれているんでしょう?
一つのドラマ内で、2種類のポリシーがあるのは、ちょっといただけない気がします。
(将軍を演じておられるのが滝藤さんなので、どこかでキャラが豹変する設定なのかも知れませんが…)
そんな中、染谷信長が、
「三好勢の戦力と、朝廷の意向(現在の義栄を見限り義昭を推挙してくれるかどうか)を探ってくれぬか?」
と長谷川光秀に問い、
「やってみましょう!」
と光秀が颯爽と答える場面には、
「よっしゃ~!やっと光秀か活躍する~」
と、惚れ惚れしましたが・・・
(信長が浅井長政に会いに行く話をしてくれたワ…6月28日の前半部分参照>>)
残念ながら、何の事はない、結局、駒ちゃんと伊呂波大夫からの情報頼みでした。
そんな駒ちゃんの紹介で陣内宗久と面会する長谷川光秀・・・
ここでの陣内さんのセリフが長ければ、駒ちゃんのセリフも長い・・・ほんで、その後に光秀登場しますが、駒ちゃんの主役感がハンパない。
これまで、ずっと思ってました。
長谷川光秀が主役で、主役の特権フルに使って、何もしてないのにアゲアゲされまくってるにも関わらず、なぜか主役に見えない・・・と、
脚本家さんのインタビューを見て、ようやくわかりました。
どうやら、今回の大河は、これまでにはない「市井の人たちの目線」での戦国を描きたいのだと・・・
よくある「戦国武将の国盗りの物語」や「群雄割拠の覇権争い」ではなく、
戦いに巻き込まれ、家を焼かれ、
「もう、誰でも良いから とにかく、戦いの無い世にして~」
って思ってる市井の人々。
なので、架空の人物である駒ちゃんに、あんな重要な事を長々と話させ、政治にも関与させるんですよね?
なるほど…これまでの大河にない新しい描き方である事は確かです。
それなら、番組開始前の「今年の大河は明智光秀が主役」とのフレコミはいらなかった?気がしないでもないですが、この描き方が成功か否かは、最終回まで待たないと何とも言えませんね。
ただ、市井の歴史好きとしては、
滝藤義昭&染谷信長の上洛した際の
「すでに三好勢は京にいなかった」
というナレーションで、あたかも、その時点で事が完結したかに思えたのが気になりました。
(↑これは個人の感想…そう思ってない方もおられるでしょう)
そもそも畿内というのは、京の周辺にある山城(やましろ=京都府南部)・大和(やまと=奈良県)・河内(かわち=大阪府東部)・和泉(いずみ=大阪府南部)・摂津(せっつ=大阪府北部と兵庫県南東部)の5つで京の都そのものは含まれません。
確かに畿内を牛耳ってる三好(三人衆)勢なので、その真ん中にある京も、事実上掌握してたと思いますが、本拠ではないし、そもそも担いでる将軍=義栄も、1度も京都には入ってません。
この時期に三好勢が本拠としていたのは、
京都府内では勝竜寺城(しょうりゅうじじょう=京都府長岡京市)と淀城(よどじょう=京都府京都市伏見区・淀古城)、
あとは大阪方面の芥川山城(あくたがわやまじょう・芥川城とも=大阪府高槻市)や高屋城(たかやじょう=大阪府羽曳野市)か飯盛山城(いいもりやまじょう=大阪府大東市)くらい??
(上記の勝竜寺城や淀城は「京の都」ではないです)
もうチョイあったかも(何か忘れてる気がするww)ですが、とにかく、京の都に、屋敷はあったとしても、城的な物持ってるのは将軍くらいです(寺が武装してる感はあります)。
今では、京都というと京都府全体か、あるいは、いわゆる京都観光する京都市とその周辺も含まれたりしますが、
この時代の京の都は、上洛という言葉でもお察しの通り洛内の狭い部分だけですから、細川勝元が応仁の乱のために構築した船岡山城(ふなおかやまじょう=京都市北区)がギリなものの、洛内に城的な物を将軍以外が建てるのは豊臣秀吉の天下統一の時代(将軍じゃないけど関白なんで)まで無かったように思います。
何が言いたいかと言いますと、いずれにしても、遠征での戦いではなく、敵を迎え撃つ戦いなら本拠の城に籠るか、勝手知ったる場所を選ぶのが得策だと思えるので、信長が来た時点で洛中にはいないのは当然なんじゃないか?と・・・つまり、京の都争奪の戦いは、ここからであって、「信長が京都に来て、三好が京都を去った」では終わったわけではないという事です。
ちなみに史実での、上洛後の信長は、10月2日~13日までの11日間、芥川山城に滞在していて、その時に、今井宗久やら松永久秀やら三好義継(←義栄が14代将軍になった時点で三好三人衆とは袂を分かってます)といった多くの人たちが列をなして信長に面会しに来てますが(9月7日参照>>)、
私個人的には、この「芥川山城に滞在」して「そこに皆が列をなして…」というのが、とても重要な事のように考えてます。
というのは、この芥川山城が、かの三好長慶が戦国初の天下人として畿内を掌握していた場所(5月9日参照>>)だからです。
前政権の本拠地をぶん取って、そこから内外に自分が牛耳った事を示すのが重要だったのではないか?と。。。
ま、そこらあたりは翌週から、しっかり描いてくださる物と期待しておしますが・・・
★たぶん来週、もしくは、これから起きる出来事は…
●【第15代室町幕府将軍・足利義昭 就任】>>
●【本圀寺の変と桂川の戦い】>>
●【本圀寺の変からの二条御所の築造】>>
★時間がないので、たぶんスルーやけど
上洛してから2か月間に起こった事
●【信玄が駿河に進攻~薩埵峠の戦い】>>
●【今川館の攻防戦~信玄が駿河を攻略】>>
●【家康の遠江侵攻】>>
●【家康が引馬城攻略】>>
●【今川氏滅亡~掛川城の攻防戦】>>
追記:
言い忘れました~
最後に、
「ワシの家臣になるか、将軍の配下になるか、すぐに選べ」
っていう染谷信長の問いに
「将軍様です」
って、あんなにハッキリ答えたら、今度、信長の家臣になる時、メッチャ気まずいですが、大丈夫なんやろか?
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コメント
前回に続いてコメントさせていただきますm(_ _)m
あのシーン思わず「将軍かよ〜」ってなっちゃいましたw
散々思わせぶりな行動(桶狭間の帰り道の待ち伏せや、大きな国を作る夢を語り合う等々)してたのに...
(そこだけは一貫してますね。ある意味期待を裏切られませんでした)
あと、完全に駒ちゃんに主役取られてましたね。
染谷信長がまともに見える分、今回の大河の明智光秀の描かれ方がなんだか可哀想になってきました。
滝藤義昭については、映画『関ヶ原』の豊臣秀吉のような感じになることを期待しています(今のところ無理そうですが...)
あの得体のしれない恐ろしさを出して欲しい!
投稿: 三枝 | 2020年10月12日 (月) 10時08分
三枝さん、こんにちは~
おっしゃる通り、
私も、あのシーン…
返答にタメがあったのでと固唾をのんじゃいました~
個人的には信長と親しくなる前に、将軍の臣になっててほしかったですが、今回の大河は帰蝶ちゃんが嫁に行く前に出会っちゃってますからね~
滝藤義昭に関しては、以前も、あまりにイメージが違うので、どこかで豹変するんじゃないか?と書かせていただいてましたが、今回、それ書き忘れてましたね。
(遅ればせながら追記させていただきました(^o^;))
演じられているのが滝藤さんだし、何かウラがあって、ボンクラ演技をされているのかも知れません…てか、そっちを期待してます。
投稿: 茶々 | 2020年10月12日 (月) 14時45分
茶々さんこんばんは。
この回はちょっと気の抜けた回だった気がしますね。
ご指摘の内容はごもっともですねw
今までにない義昭、ではありますが、このままただのボンクラで終わったら滝藤さんの持ち腐れですねw
怪演に期待してしまいます。
投稿: 鷲谷 壮介 | 2020年11月20日 (金) 22時08分
鷲谷 壮介さん、こんばんは~
私としては、そもそも、ドラマ内の光秀が誰かに会うのに、紹介者や仲介人が、それも一般人の仲介人が必要な事が不思議でたまりません。
本文に書いた通り、信長が三好勢を一蹴して芥川山城に入った時点で、その力にあやかろうという人が続々来ます(宗久もその一人)。
浪人だった頃ならともかく、幕臣になった光秀なら、ちゃんと名乗れば大抵の人(朝廷以外)には会える気がするんですが、なぜに、いつまでも駒ちゃん(薬売って顔が広いという設定)に頼るのかが、よくわかりません。
投稿: 茶々 | 2020年11月21日 (土) 03時02分